○原薬GMPのガイドラインについて
(平成13年11月2日)
(各都道府県知事あて厚生労働省医薬局長通知)
原薬の品質確保については、医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理規則(平成11年厚生省令
第16号。以下「GMP規則」という。)、医薬品及び医薬部外品の輸入販売管理及び品質管理規則(平成11年厚生省令第62号)及び薬局等構造設備規則
(昭和36年厚生省令第2号)が定められているところであるが、今般、日米EU医薬品規制調和国際会議における合意に基づき、別添のとおり、「原薬GMP
のガイドライン」(以下「本ガイドライン」という。)をとりまとめたので通知する。下記事項に御留意の上、本ガイドラインを業務の参考とするとともに、貴
管下関係業者への周知指導方御配慮願いたい。
なお、今後、本ガイドラインを踏まえ、GMP規則等について所要の改正を検討する予定である。
おって、本通知の写しを関係業界団体あてに発出していることを申し添える。
記
1 本ガイドラインの取扱い
本ガイドラインは、原薬に関する製造管理及び品質管理の実施について、その標準的なあり方を示したものである。なお、本ガイドラインと異なる手法であっても、GMP規則等に適合し、原薬の品質が十分に保証されている場合には差し支えない。
2 留意事項
製造所からの製品の出荷可否の決定は、本ガイドラインにおいては品質部門が行うこととされているが、GMP規則第3条第1項の規定に基づき、製造管理者が行うこと。
原薬GMPのガイドライン
目次
1 序文
1.1 目的
1.2 法規制の適用
1.3 適用範囲
2 品質マネージメント
2.1 原則
2.2 品質部門の責任
2.3 製造部門の責任
2.4 内部監査(自己点検)
2.5 製品品質の照査
3 従業員
3.1 従業員の適格性
3.2 従業員の衛生
3.3 コンサルタント
4 構造及び設備
4.1 設計及び建設
4.2 ユーティリティ
4.3 水
4.4 封じ込め
4.5 照明
4.6 排水及び廃棄物
4.7 衛生及び保守
5 工程装置
5.1 設計及び組立
5.2 装置の保守及び清掃
5.3 校正
5.4 コンピュータ化システム
6 文書化及び記録
6.1 文書管理システム及び規格
6.2 装置の清掃及び使用記録
6.3 原料・中間体・原薬用の表示材料・包装材料の記録
6.4 製造指図書原本
6.5 ロット製造指図・記録
6.6 試験室管理記録
6.7 ロット製造指図・記録の照査
7 原材料等の管理
7.1 一般的管理
7.2 受入及び区分保管
7.3 新たに入荷した製造原材料等の検体採取及び試験
7.4 保管
7.5 再評価
8 製造及び工程内管理
8.1 製造作業
8.2 時間制限
8.3 工程内検体採取及び管理
8.4 中間体・原薬のロット混合
8.5 汚染管理
9 原薬・中間体の包装及び識別表示
9.1 一般事項
9.2 包装材料
9.3 ラベルの発行及び管理
9.4 包装作業及び表示作業
10 保管及び出荷
10.1 保管作業
10.2 出荷作業
11 試験室管理
11.1 一般的管理
11.2 中間体・原薬の試験
11.3 分析法のバリデーション
11.4 試験成績書
11.5 原薬の安定性モニタリング
11.6 使用期限及びリテスト日
11.7 参考品・保管品
12 バリデーション
12.1 バリデーション方針
12.2 バリデーションの文書化
12.3 適格性評価
12.4 プロセスバリデーションの手法
12.5 プロセスバリデーションの計画
12.6 検証したシステムの定期的照査
12.7 洗浄のバリデーション
12.8 分析法のバリデーション
13 変更管理
14 中間体、原薬等の不合格及び再使用
14.1 不合格
14.2 再加工
14.3 再処理
14.4 中間体、原薬等及び溶媒の回収
14.5 返品
15 苦情及び回収
16 受託製造業者(試験機関を含む。)
17 代理店、仲介業者、貿易業者、流通業者、再包装業者及び再表示業者
17.1 適用範囲
17.2 出荷された原薬・中間体のトレーサビリティ
17.3 品質マネージメント
17.4 原薬・中間体の再包装、再表示及び保管
17.5 安定性
17.6 情報の伝達
17.7 苦情及び回収の処理
17.8 返品の処理
18 細胞培養・発酵により生産する原薬のガイドライン
18.1 一般事項
18.2 細胞バンクの保守及び記録の保管
18.3 細胞培養・発酵
18.4 ハーベスト、分離及び精製
18.5 ウイルス除去・不活化
19 臨床試験に使用する原薬
19.1 一般事項
19.2 品質
19.3 装置及び設備
19.4 原料の管理
19.5 製造
19.6 バリデーション
19.7 変更
19.8 試験室の管理
19.9 文書化
20 用語集
1 序文
1.1 目的
本ガイドラインは、医薬品の有効成分(原薬:API)に係る「医薬品の製造管理及び品質管理に関す
る基準」(以下「GMP規則」という。)において求められる、適切な品質マネージメント体制のもとでの原薬生産について、その標準的なあり方を示すことに
より、原薬が品質及び純度の要件に適合することを保証する一助となることを目的としたものである。
本ガイドラインで「生産」とは、原薬の原材料等の受入、製造、包装、再包装、表示、再表示、品質管
理、出荷、保管・流通及びその他関連する管理に係る作業の全てを含むものと定義する。本ガイドラインで「すること」とは、本ガイドラインの適用が不可能で
ある場合、又は少なくとも同等レベルの品質を保証できると実証された代替手法が存在する場合でない限り、本ガイドラインの適用を期待する勧告であることを
意味する。
本ガイドラインは、生産従事者の安全面及び環境保護の面については対象としていない。これらの管理は、本来、各業者の責任であり、また、関連する他の法律で律せられるものである。
本ガイドラインは、各国法令に基づく承認申請事項を定義したり、各国の薬局方の要求事項を変更した
りするものではない。また、本ガイドラインは、原薬の承認申請に係る要求事項を設定する規制当局の権限に影響を与えるものではない。製造・輸入の承認・許
可要件、承認書、許可書等に定められた事項等各国法令に基づき別に定められる各規定は全て満たされる必要がある。
1.2 法規制の適用
ある物質を製造したり、医薬品製剤に使用したりする場合であって、各国法令において、当該物質が原薬として分類される場合には、本ガイドラインに従って生産すること。
1.3 適用範囲
本ガイドラインは、ヒト用医薬品に使用する原薬に適用する。ただし、無菌原薬の生産については、滅
菌工程の直前までの工程を対象とする。なお、無菌原薬の滅菌工程及び無菌工程については、本ガイドラインの対象としないが、別途、GMP規則等関連する規
定に基づき、実施すること。
本ガイドラインは、化学的合成、抽出、細胞培養・発酵、天然資源からの回収又はこれらの組み合わせにより生産される原薬を対象とする。細胞培養・発酵によって生産される原薬に特有の規定については、第18章に記述する。
本ガイドラインでは、全てのワクチン、全細胞、全血及び血漿、血液及び血漿から誘導される原薬(血
漿分画物)並びに遺伝子治療用原薬は適用を除外する。ただし、血液及び血漿を原料として製造される原薬は本ガイドラインの対象である。細胞基材(哺乳動
物、植物、昆虫又は微生物の細胞、組織もしくはトランスジェニック動物を含む動物由来物)及び初期段階の工程は、GMPの対象とはなり得るが、本ガイドラ
インの対象ではないことに留意されたい。さらに、本ガイドラインは医療用ガス及びバルク包装製剤並びに放射性医薬品に特有な製造・管理には適用しない。
第19章には、治験薬に使用される原薬の生産のみに適用するガイドラインを示す。
「原薬出発物質」とは、原薬の製造に使用され、かつ、原薬の構造中の重要な構成部分として組込まれ
る原料、中間体又は原薬であり、市販品の場合、委託又は販売契約の下で供給者から購入する場合又は自社で製造する場合がある。原薬出発物質は、通常、化学
的性質及び構造が明確にされている。
企業は原薬製造の開始時点の根拠を規定し、文書化すること。化学的合成においては、その開始時点
は、「原薬出発物質」を工程に導入する段階である。その他の生産形態(例えば、発酵、抽出、精製等)については、その根拠はケースバイケースで決定するこ
と。一般的な開始時点について、表1にガイドラインを示す。
上述の開始時点から、中間体・原薬の生産に対して、本ガイドラインで規定された適切なGMPを適用
すること。GMPには、原薬の品質に影響すると判断される重要工程のバリデーションが含まれる。ただし、企業がある工程に対しバリデーションを実施して
も、必ずしも当該工程が重要工程であると定義されるものではないことに留意すること。
本ガイドラインは、一般的には、表1の灰色で示す工程に適用される。なお、これは、表1に示された
工程全ての実施が必要であることを意味するものではない。原薬の生産に関するGMPは、初期の製造段階から最終段階、精製及び包装に向け工程が進行するに
従って、より厳密に実施すること。造粒、コーティング等の物理的処理又は粒径の物理的な細分化(例えば、粉砕、微粉化)は、少なくとも、本ガイドラインの
基準に従い、実施すること。
本GMPガイドラインは、規定された「原薬出発物質」の導入より前の段階には適用されない。
表1:原薬生産に対する本ガイドラインの適用
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2 品質マネージメント
2.1 原則
2.10 品質は原薬の生産に関係する全ての人々の責任であること。
2.11 製造業者は、効果的な品質マネージメント体制を確立し、それを文書化し、実施すること。なお、この品質マネージメント体制は、経営者及び製造に従事する者が積極的に関与すべきものであること。
2.12 品質マネージメント体制には、組織構成、手順、工程、資源の他、原薬が目的とする規格に適合する信頼性を保証するために必要な活動が含まれていること。品質に係る全ての活動を明確に示し、文書化すること。
2.13 品質部門は製造部門から独立し、品質保証(QA)及び品質管理(QC)の責任を果たすこと。なお、品質部門は、組織の規模及び構成により、別々のQA部門及びQC部門の形態をとる場合があり、また、個人又はグループの形態をとる場合がある。
2.14 中間体・原薬の出荷判定者を特定すること。
2.15 品質に係る全ての活動は、それを実施した時点で記録すること。
2.16 設定手順からの逸脱は、いかなるものも記録し、その内容を明らかにすること。重大な逸脱については、原因を調査し、その調査内容及び結論を記録すること。
2.17 原材料、中間体、原薬等(以下「原材料等」という。)は、品質部門の評価が十分に完了する
まで、出荷・使用を行わないこと。ただし、第10.20章に示された区分保管中の中間体・原薬の出荷、もしくは評価が未完了の原材料・中間体の使用を許可
する適切なシステムが存在する場合はこの限りではない。
2.18 規制当局の査察、重大なGMPの逸脱、製品欠陥及びこれらに関連する措置(例えば、品質に係る苦情、回収、規制への対応等)について、適切な時期に責任ある経営者又は管理者に報告する手順書を用意すること。
2.2 品質部門の責任
2.20 品質部門は、品質に係る全ての事項に関与すること。
2.21 品質部門は、品質に係る全ての文書を適切に照査し、承認すること。
2.22 独立した品質部門の主要な責任は委任しないこと。その責任は文書化され、かつ、以下の事項を含むこと。
1 全ての原薬の出荷判定。また、中間体を製造した企業の管理体制の範囲外で当該中間体が使用される場合において、当該中間体の出荷判定。
2 原料、中間体、包装材料及び表示材料について、合否判定体制を確立すること。
3 原薬を出荷配送する前に、該当するロットの重要工程に係る全ての製造指図・記録及び試験室管理記録を照査すること。
4 重大な逸脱が、調査し、解決されていることを確認すること。
5 全ての規格及び製造指図書原本を承認すること。
6 中間体・原薬の品質に影響する全ての手順を承認すること。
7 内部監査(自己点検)が実施されていることを確認すること。
8 中間体・原薬の受託製造業者を承認すること。
9 中間体・原薬の品質に影響する可能性のある変更内容を承認すること。
10 バリデーション実施計画書及び報告書を照査し、承認すること。
11 品質に係る苦情について、調査され、解決されていることを確認すること。
12 重要な装置の保守・校正のために効果的なシステムが用いられていることを確認すること。
13 原材料等に対して、適切に試験が行われ、その結果が報告されていることを確認すること。
14 適切な場合には、中間体・原薬のリテスト日又は使用期限及び保管条件を裏付ける安定性データが存在することを確認すること。
15 製品の品質の照査を実施すること(第2.5章で規定)。
2.3 製造部門の責任
製造部門の責任は、文書化され、かつ、以下の事項を含むこと。
1 文書化された手順に従って、中間体・原薬の製造指図を発行し、照査し、承認し、配布すること。
2 予め承認を受けた製造指図に従って、中間体・原薬を製造すること。
3 全てのロットの製造指図・記録を照査し、当該製造指図・記録が完結し、署名されていることを確認すること。
4 製造時の全ての逸脱が報告され、評価され、重大な逸脱が調査され、その結論が記録されていることを確認すること。
5 製造設備が清浄であり、また、必要な場合には消毒されていることを確認すること。
6 必要な校正が実施され、その記録が保管されていることを確認すること。
7 設備及び装置が保守され、その記録が保管されていることを確認すること。
8 バリデーション計画及び報告書が照査され、承認を受けていることを確認すること。
9 製品、工程又は装置について変更しようとする内容を評価すること。
10 設備及び装置が新規である場合、及び改修した場合であって、必要と認められる場合には、当該設備及び装置の適格性を確認すること。
2.4 内部監査(自己点検)
2.40 原薬に係るGMPを遵守していることを確認するために、承認を受けた日程に従って定期的な内部監査を実施すること。
2.41 内部監査結果及び是正措置を記録し、当該企業の責任のある経営者の注意を喚起すること。合意された是正措置は、適切な時機に、かつ、有効な方法で完了すること。
2.5 製品品質の照査
2.50 工程の恒常性の確認を目的として、定期的に原薬の品質照査を実施すること。品質照査は、通常、年一回実施し、記録すること。この品質照査には、少なくとも、以下の事項が含まれること。
―重要な工程内管理及び原薬の重要な試験結果の照査
―設定した規格に適合しない全てのロットの照査
―全ての重大な逸脱又は不適合及び関連する調査内容の照査
―工程又は分析法について実施した全ての変更の照査
―安定性モニタリングの結果の照査
―品質に関連する全ての返品、苦情及び回収の照査
―是正処置の妥当性の照査
2.51 製品品質の照査の結果を評価し、是正措置又は再バリデーションの必要性を検討すること。これら是正措置の理由を記録すること。合意された是正措置は適切な時機に、かつ、有効な方法で完了すること。
3 従業員
3.1 従業員の適格性
3.10 中間体・原薬の生産を実施し監督するために、適切な教育訓練を受け、又は経験を有する適任者を適切な人数配置すること。
3.11 中間体・原薬の生産に従事する全従業員の責任を文書で規定すること。
3.12 適任者による教育訓練を定期的に実施すること。なお、それぞれ従業員の教育訓練は、少なくとも、当該従業員が行う作業及び職務に係るGMPの訓練を含むこと。また、教育訓練の記録を保管し、定期的に評価すること。
3.2 従業員の衛生
3.20 従業員は、適切な衛生管理と健康管理を実施すること。
3.21 従業員は、従事する生産作業に適した清潔な衣服を着用し、必要な場合には、交換すること。また、中間体・原薬の汚染を防止するため、必要に応じて、頭、顔、手及び腕にカバーその他の保護具を着用すること。
3.22 従業員は、中間体・原薬への直接の接触を避けること。
3.23 喫煙、飲食、ガムを噛むこと及び食品の貯蔵は、作業区域から隔離した指定された区域に限定すること。
3.24 従業員が原薬の品質の信頼性を低下させるおそれのある健康状態(感染性の疾患に罹患してい
る場合又は露出した体表面に裂傷がある場合)にある場合は、作業に従事しないこと。また、診療又は監督者の観察により、明らかな疾患又は裂傷を有すること
が認められた者には、当該疾患又は裂傷が原薬の品質に悪影響を与えるおそれがある場合には、その状態が回復するか、あるいは認定を受けた医療責任者が、作
業に従事しても原薬の安全性又は品質を損なわないことを判定するまで、作業に従事させないこと。
3.3 コンサルタント
3.30 中間体・原薬の製造及び管理について助言を行うコンサルタントは、関与する問題について助言を与えるための十分な教育、訓練及び経験を積んでいること。
3.31 コンサルタントの氏名、住所及び資格並びにコンサルタントが提供するサービスの内容の記録を保管すること。
4 構造及び設備
4.1 設計及び建設
4.10 中間体・原薬の製造に使用する構造及び設備は、製造の形態及び段階に適し、清掃、保守及び
作業を容易とするように配置し、設計し、建設すること。また、設備については、汚染のおそれを最小にするように設計すること。中間体・原薬について微生物
学的な規格を設定した場合には、設備は特定の微生物による汚染のおそれを適切に制限するように設計すること。
4.11 構造及び設備は、混同及び汚染を防止するため、装置及び原材料等を整然と配置するのに適した面積を有すること。
4.12 装置自体(例えば、閉鎖系又は囲い込み方式)で原材料等を適切に保護できる場合は、当該装置は屋外に配置することがある。
4.13 構造又は設備内の原材料等及び従業員の動線は、混同又は汚染を防止するように設計すること。
4.14 次の事項については、特定の作業区域又はその他の管理体制を設けること:
―入荷原材料等の受入、確認、検体採取及び区分保管並びに合否判定待ち;
―中間体・原薬の合否判定前の区分保管;
―中間体・原薬の検体採取;
―不合格原材料等の処分(例えば、返品、再加工又は廃棄)前の保管;
―合格原材料等の保管;
―製造作業
―包装及び表示作業;及び
―試験作業
4.15 適切で清潔な手洗い設備及びトイレット設備を従業員に用意すること。これらの手洗い設備に
は、必要な場合には、水又は温水を備えること。また、石鹸又は洗剤並びにエアドライヤー又は使い捨てタオルを備えること。手洗い設備及びトイレット設備は
作業区域から分離し、かつ、容易に利用できるように配置すること。必要な場合は、シャワーや更衣のための適切な設備を設置すること。
4.16 試験区域・試験作業は、通常、製造区域から分離すること。ただし、特に工程内管理に使用す
る試験区域については、製造工程の作業が試験測定の精度に悪影響を与えず、また、試験室及びその作業が、製造工程、中間体・原薬に悪影響を与えなければ、
製造区域に配置する場合がある。
4.2 ユーティリティ
4.20 製品の品質に影響を与えるおそれのある全てのユーティリティ(例えば、蒸気、ガス、圧縮空
気及び加熱・換気空調システム:HVAC)は管理規格に適合するとともに、適切にモニターされること。また、限界値を超えた場合には、必要な措置を講じる
こと。これらのユーティリティシステムの図面は利用できるようにしておくこと。
4.21 必要な場合には、適切な換気・空気ろ過・排気システムを設置すること。これらのシステム
は、汚染及び交叉汚染のおそれを最小にするように設計し、設置し、また、製造の段階に即した、空気圧、微生物(適切であれば)、塵埃、湿度及び温度の管理
装置を備えること。原薬が環境に暴露される区域では、特に注意を払うこと。
4.22 空気を製造区域に再循環させる場合には、汚染及び交叉汚染のおそれを最小限にするように適切な対策を取ること。
4.23 恒久的に設置される配管は、適切な手法(例えば、各ラインへの表示、文書化、コンピュータ管理システム又はこれに代わる手法)により、識別されていること。配管は中間体・原薬の汚染のおそれを回避するように配置すること。
4.24 ドレイン配管は十分な大きさを有し、必要な場合には、逆流を防止するための空気遮断装置又は適当な装置を備えていること。
4.3 水
4.30 原薬の生産に使用する水については、使用目的に適していることを実証すること。
4.31 正当な理由がない限り、工程用の水は、少なくとも、水道法に基づく水質基準又は世界保健機構(WHO)の飲用水質ガイドラインに適合すること。
4.32 飲用水が原薬の品質を保証するのに不十分であり、より厳しい化学的・微生物学的水質規格が求められる場合には、物理的・化学的特性、生菌数、特定微生物及びエンドトキシンのうち必要な事項について適切な規格を設定すること。
4.33 製造業者が、工程で使用する水に対して、水質を確保するために処理を行う場合には、その処理工程を検証し、適切な管理値によりモニターを行うこと。
4.34 非無菌原薬を、更なる処理を経て、無菌医薬品製剤の製造に使用しようとする場合には、当該非無菌原薬としての最終の分離及び精製工程において使用する水は、生菌数、特定微生物及びエンドトキシンについてモニターし、管理すること。
4.4 封じ込め
4.40 例えばペニシリン類やセファロスポリン類のように強い感作性を有する物質を製造する場合には、設備、空気処理装置及び工程装置を含め、専用の製造区域を用いること。
4.41 例えばある種のステロイド類や細胞毒性のある抗がん剤のように感染性、強い薬理作用又は毒性を有する物質が関与する場合には、検証された不活化工程及び清掃手順又はそのいずれかを確立し、保守しない限り、専用の製造区域の使用を考慮すること。
4.42 ある専用区域から別の専用区域へ移動する従業員、原材料等による交叉汚染を防止するため、適切な対策を確立し、実施すること。
4.43 除草剤、殺虫剤等の強い毒性を有する非医薬品の製造に係る作業(秤量、粉砕及び包装を含む)は、原薬の製造に使用する構造及び装置を使用して行ってはならない。これらの強い毒性を有する非医薬品の取扱い及び保管は原薬から分離すること。
4.5 照明
4.50 清掃、保守及び適切な作業を容易にするために十分な照明を全ての区域に備えること。
4.6 排水及び廃棄物
4.60 建物内及び隣接する周囲の区域からの排水、塵芥及びその他の廃棄物(例えば、製造からの固形物、液体又は気体状の副生成物)を、安全で、適時に、かつ、衛生的な方法で廃棄すること。廃棄物の容器及びパイプ類は明確に識別すること。
4.7 衛生及び保守
4.70 中間体・原薬の製造に使用する構造は適切に保守し、補修し、清潔な状態に維持すること。
4.71 衛生に関する責任を割り当て、清掃の計画、方法、装置並びに構造・建物及び設備の清掃に使用する用具・薬剤等を記述した文書による手順を確立すること。
4.72 必要な場合、装置、原料、包装材料・表示材料、中間体・原薬の汚染を防止するための適切な殺鼠剤、殺虫剤、防かび剤、燻蒸剤及び清掃消毒剤の使用に関する文書による手順を設定すること。
5 工程装置
5.1 設計及び組立
5.10 中間体・原薬の生産に使用する装置は、その用途、清掃、消毒(必要に応じて)及び保守を考慮して、適切に設計し、適切な規模のものを適切に配置すること。
5.11 原料、中間体・原薬が装置の表面と接触することにより、中間体・原薬の品質が公定規格又は他の設定規格を超えて変質することのないように、装置を組み立てること。
5.12 製造装置は許容された運転範囲内のみで使用すること。
5.13 中間体・原薬の製造に使用する主要な装置(例えば、反応装置、保管容器)及び恒久的に設置した工程ラインは適切に識別されていること。
5.14 潤滑剤、熱媒体、冷却剤等の物質は、中間体・原薬の品質が公定規格又は他の設定規格を超え
て変質しないよう、中間体・原薬との接触をさせないこと。この規定から逸脱した場合には、当該物質について、その用途からみた適合性に悪影響がないことを
保証するための評価を行うこと。なお、可能な場合には、食品グレードの潤滑剤及び油類を使用すること。
5.15 必要な場合には、閉鎖系装置又は囲い込み装置を使用すること。開放系装置を使用する場合、又は装置が開放されている場合には、汚染のおそれを最小限にするための適切な予防措置を講じること。
5.16 装置及び重要な付帯設備(例えば、計装機器及びユーティリティシステム)については、現状図面一式を保管すること。
5.2 装置の保守及び清掃
5.20 装置の予防的な保守のため、責任の割り当てを含め必要な事項について、計画及び手順書を設定すること。
5.21 中間体・原薬の生産に使用する装置の清掃及び当該装置の次回製造での使用許可について、文
書による手順を設定すること。清掃手順には、作業員が、再現性のある、かつ、有効な方法で各種の装置を清掃できるよう十分に詳細な内容が含められているこ
と。これらの手順には、次の事項が含まれること:
―装置清掃に係る責任の割り当て;
―清掃計画、及び、必要な場合には消毒計画;
―装置の清掃方法(洗浄剤の希釈方法を含む)及び使用する用具、薬剤等の十分な説明;
―必要な場合には、適切な清掃を保証するために行う装置各部品の分解及び組立に係る指図;
―先行ロットの表示の除去又は抹消に関する指図;
―使用までの間における清浄な装置の汚染防止のための指図;
―実施可能な場合には、使用直前の清浄度に係る装置の検査;
―必要な場合には、工程作業の完了から装置清掃までの間の許容最長時間の設定。
5.22 中間体・原薬の品質を公定規格又は他の設定規格を超えて変質させる物質の汚染又はキャリーオーバーを防止するため、装置及び器具類は清掃し、保管し、必要な場合には消毒又は殺菌すること。
5.23 ある装置を用いて、同じ中間体・原薬の連続するロットを継続生産又は期間生産(キャンペーン生産)する場合には、汚染物質(例えば、分解物、一定レベルの微生物)の生成及びキャリーオーバーを防止するため、当該装置を適切な間隔で清掃すること。
5.24 専用ではない装置については、交叉汚染を防止するため、異なる原薬等の製造の間に清掃すること。
5.25 残留物の判定基準並びに清掃手順及び洗浄剤の選択について規定し、その根拠を示すこと。
5.26 装置については、その内容及び清浄の程度について適切な方法で識別すること。
5.3 校正
5.30 中間体・原薬の品質を保証するために重要な制御、秤量、測定、モニタリング及び試験の各装置については、文書による手順及び計画に従って校正を行うこと。
5.31 装置の校正にあたっては、証明された標準器とのトレーサビリティが確保できる標準器が存在する場合には、これを用いて実施すること。
5.32 上述の校正の記録は保管すること。
5.33 重要な装置については、校正に係る現状を認識し、証明できる状態にしておくこと。
5.34 校正基準に適合しない計測器は使用しないこと。
5.35 重要な計測器について承認された校正の標準値から逸脱した場合には、これらの逸脱が前回の校正以降において当該計測器を用いて生産した中間体・原薬の品質に影響を与えたか否かを判定するために、調査を行うこと。
5.4 コンピュータ化システム
5.40 GMPに関連するコンピュータ化システムについては、バリデーションを実施すること。なお、バリデーションの程度及び適用範囲は、コンピュータ化されたアプリケーションの多様性、複雑性及び重要性によるものである。
5.41 コンピュータのハードウエア及びソフトウエアについては、適切な据付時適格性評価及び運転時適格性評価により、課せられた業務の実行に適合していることを実証すること。
5.42 既に適格性が確認されている市販のソフトウエアについては、同じレベルの検査は必要でな
い。なお、既存のシステムについて、据付時にバリデーションが実施されていない場合には、適切な文書化された記録が入手できるならば、回顧的バリデーショ
ンにより検証する場合がある。
5.43 コンピュータ化システムについては、データに対する承認されていないアクセス又は変更を防
止するために十分な管理を行うこと。また、データの脱落(例えば、システムの切断及びデータの不捕捉)を防止するための管理を行うこと。なお、データの変
更については、全てのデータ変更、変更前のデータ、変更者、変更時期を記録すること。
5.44 コンピュータ化システムの運転及び保守については、文書化した手順が用意されていること。
5.45 重要なデータを手動で入力した場合は、さらに入力の正確性の確認を行うこと。これは別の作業者又はシステム自体により行われる場合がある。
5.46 中間体・原薬の品質もしくは記録又は試験結果の信頼性に影響を与えるおそれのあるコンピュータ化システムに係る事故については、記録し、調査すること。
5.47 コンピュータ化システムに対する変更は、変更手順に従って行い、また、正式に承認し、文書
化し、検査すること。システムのハードウエア、ソフトウエア及びその他全ての重要な構成について行った修正及び拡張を含む変更に係る記録を保管すること。
これらの記録は最終システムが検証された状態に保守されていることを実証するものであること。
5.48 システムの破損又は故障が記録の永久的な消失を招く場合には、バックアップシステムを準備すること。また、データの保護を保証する対策を、全てのコンピュータ化システムについて設定すること。
5.49 データはコンピュータシステムに加え、別方法により記録される場合がある。
6 文書化及び記録
6.1 文書管理システム及び規格
6.10 中間体・原薬の生産に係る全ての文書については、文書化された手順に従い、作成し、照査し、承認し、配布すること。これらの文書は、書面又は電子媒体を用いる場合がある。
6.11 全ての文書の発行、改訂、廃止及び回収は、改訂に係る履歴を保存することにより管理すること。
6.12 全ての適切な文書を保存するために、手順を設定すること。該当する文書としては、例えば、
開発経緯に係る記録、スケールアップに係る報告書、技術移転に係る報告書、プロセスバリデーションに係る報告書、教育訓練記録、製造記録、試験記録、出納
記録等がある。これらの文書の保管期間は規定されていること。
6.13 全ての製造記録、試験記録、出納記録を、該当するロットの使用期限が過ぎた後少なくとも1年以上保存すること。リテスト日を設定している原薬については、これらの記録を、該当するロットの出荷が完全に終了した後少なくとも3年以上保存すること。
6.14 記録事項を記入する場合には、操作実施直後に、定められた欄に、消去できない方法で記入し、記入者名を明記すること。記入事項の修正の場合は、日付を入れ、署名し、また、修正前の記載事項も読めるようにしておくこと。
6.15 記録又はそのコピーは、その保管期間中には、記載された事項が実施された施設において容易に取りだせること。なお、当該施設以外の保存場所から電子的又はその他の手段によってすぐに当該施設に取り寄せることができる場合には、これによることも差し支えない。
6.16 規格、指図、手順及び記録については、原本として保管する場合又は原本コピー(例えば、
フォトコピー、マイクロフィルム、マイクロフィッシュその他原本の記録の正確な複写物)を保存する場合がある。マイクロフィルムあるいは電子記録のような
縮小技術を使用する場合、必要な情報の取り出し及びハードコピーが容易にできること。
6.17 原料、中間体(必要な場合)、原薬、表示材料及び包装材料に係る規格を設定し、文書化する
こと。さらに、助剤、ガスケット、中間体・原薬の製造に使用されるその他の資材で品質に重大な影響を及ぼすおそれがあり、規格が必要である場合には、当該
資材について規格を設定すること。また、工程内管理のため、その判定基準を設定し、文書化すること。
6.18 文書に電子署名を用いる場合には、当該電子署名が認証され、保証されていること。
6.2 装置の清掃及び使用記録
6.20 主要な装置の使用、清掃、消毒・滅菌及び保守に係る記録には、日付、時間(必要な場合)、製品名、当該装置で製造した各ロットの番号及び清掃・保守点検を行った担当者名を記載する。
6.21 もし製造装置が1種類の中間体・原薬を製造する専用装置であり、かつ、当該中間体・原薬の
ロット番号が追跡可能な連続した番号である場合、装置に係る個々の記録を作成する必要はない。なお、専用装置を用いる場合、清掃、保守及び使用に係る記録
は、ロット記録の一部とする場合又はロット記録とは別に保存する場合がある。
6.3 原料・中間体・原薬用の表示材料・包装材料の記録
6.30 記録は次の内容により保存・管理すること。
―原料・中間体・原薬用表示材料・包装材料のロットごと、かつ、入荷ごとの製造業者の名前、識別及び数量;供給者の名称;(もし既知であれば)供給者の管理番号、又はその他の識別番号;受入時の管理番号;受入日。
―実施された試験又は検査の結果及びその判定。
―使用・出納の記録。
―原薬用表示材料・包装材料が規定された規格に適合していることを試験し、照査した文書。
―不合格と判定した原料・中間体・原薬用表示材料・包装材料についての最終措置。
6.31 承認されたマスターラベルは、発行ラベルとの比較のために保存・管理すること。
6.4 製造指図書原本
6.40 ロット間の同一性を保証するため、各原薬・中間体に関して製造指図書原本を作成すること。なお、当該製造指図書原本には、1名が日付及び署名をするとともに、品質部門の者が独自に内容を確認し、その日付及び署名をすること。
6.41 製造指図書原本には次の内容を含めること。
―製造する原薬・中間体の名称。文書管理番号が定められている場合には、当該文書管理番号。
―特別な品質特性を明確にするため、特定された名前又はコードで指定された原材料又は中間体に関する全てのリスト。
―当該の工程で用いられる各原材料又は中間体の量又は比率に関する正確な記述(計量単位を含む)。量が定められていない場合、各ロットサイズ又は製造時に用いる比率の計算を含むこと。量のばらつきの範囲について正当化されている場合には、これを含むこと。
―製造場所及び主要な製造装置
―製造指図書原本の詳細としては、次の事項を含む:
―作業順序。
―使用されるプロセス・パラメーターの幅。
―必要な場合、検体採取指図及び工程内試験の判定基準。
―必要な場合、個々の工程又は工程全体の完了時間の制限。
―工程の適切な段階又は時間での期待収量の幅。
―必要な場合には、特別な注意事項又は予防注意若しくはそれらの参照事項。
―使用の適合を保証するための中間体・原薬を保管するための指図。これには、表示材料・包装材料、必要な場合には、期限を定めた特別な保管条件が含まれる。
6.5 ロット製造指図・記録
6.50 各中間体・原薬のためのロット製造指図・記録を作成すること。指図には、ロットごとの製造
及び管理に関する全ての情報があること。ロット製造指図・記録はそれが正しいものであり、かつ、適切な製造指図書原本に則り明確に再製されたものであるこ
とを保証するため、それが発行される前に確認すること。もしロット製造指図・記録が別の原本から複写されたものである場合には、それらの資料には現在使用
している製造指図書原本を参照したことの記載があること。
6.51 上述の指図には、発行の際に、日付、署名、固有のロット番号又は識別番号を付すこと。連続製造では、最終番号が付されるまでの間、日付及び時間とともに製造コード番号が固有識別として役に立つ。
6.52 ロット製造指図・記録のうち、主要な工程に係る記録には次のような事項を含むこと:
―日付、及び必要な場合には、時間。
―使用された主要な装置(例えば反応釜、乾燥機、粉砕機等)。
―質量、測定値、そして製造工程において使用された原材料、中間体、あるいは再加工品のロット番号等からなるロットごとの固有識別。
―重要な工程パラメーターの結果。
―実施された検体採取についての記載。
―作業において各重要工程の作業者及び直接に監督又はチェックした担当者の署名。
―工程内試験及び試験室試験の結果。
―特定の段階又は時点における実収量。
―中間体・原薬の包装及びラベルに関する記載。
―もし市販品を使用するのであれば、その中間体・原薬の代表ラベル。
―確認された逸脱及びその評価。必要な場合には、実施された調査。また、当該結果が別に保管されている場合は、当該調査結果の参照先。
―出荷判定の結果。
6.53 重大な逸脱又は中間体・原薬が規格に不適合の場合の調査手順を作成し、従うこと。この調査はあるロットの不適合又は逸脱が関係している可能性のある他のロットまで広げること。
6.6 試験室管理記録
6.60 試験室管理記録は、設定した規格及び基準に適合していることを確認するために実施される各種の検査や試験を含む全試験の完全なデータを含むこと。求められる内容は次のとおりである:
―試験用として入手した検体について、原材料等の名前又は製造元、ロット番号又はその他の識別コード番号、検体採取日、必要であれば試験用として検体を入手した日付及び量の記述。
―使用した各試験方法に関するコメント又は参照事項。
―試験方法に基づいて各試験に使用されたサンプルの量又は測定値の記述。標準品、試薬、標準溶液の調製及び試験に係るデータ又は参照事項。
―各試験の全ての生データの完全な記録、分析機器から得られたグラフ、チャート及びスペクトル。なお、これらの記録については、被試験品とそのロットが明らかとなるよう適切に識別すること。
―計量単位、変換因子、等価係数等を含む試験中において行われた全ての計算式の記録。
―試験結果の判定及び判定基準との比較に関する陳述。
―各試験を実施した各試験担当者の署名及び試験日
―オリジナルの記録の正当性、完全性及び設定した規格に対する適合性について照査したことを示す別の担当者の署名及び日付。
6.61 下記の事項について、完全な記録が保存されていること。
―設定した分析方法に対する変更。
―試験室の機器、装置、ゲージ及び記録装置の定期的校正。
―原薬について行われた全ての安定性試験。
―規格外試験結果に関する原因調査。
6.7 ロット製造指図・記録の照査
6.70 中間体・原薬について、ロットの使用又は出荷の前に、当該中間体・原薬が規格の基準を満たしていることを確認するため、当該ロットの包装及び表示を含む、製造指図・記録及び試験室管理記録の照査及び承認について、文書化した手順を作成し、それに従うこと。
6.71 重要工程についてのロットの製造指図・記録及び試験室管理記録は、当該ロットの使用又は出
荷の前に品質部門により照査し、承認されていること。なお、重要でない工程の製造指図・記録及び試験室管理記録については、品質部門により承認された手順
に従い、資格のある製造部門の者又はそれ以外の部署の者により照査する場合がある。
6.72 全ての逸脱、原因調査及び規格外試験結果報告書については、ロットが出荷される前に、ロット記録の一部として照査すること。
6.73 自社の管理外に出荷される場合を除き、品質部門は中間体の使用に係る責任及び権限を製造部門に委譲することが出来る。
7 原材料等の管理
7.1 一般的管理
7.10 原材料等の受領、確認、区分保管、保管、取扱い、検体採取、試験、合否手順に関する文書を作成すること。
7.11 中間体・原薬の製造業者は、重要な原材料等の供給業者について評価する体制を有すること。
7.12 原材料等は、合意した規格に基づき、品質部門によって承認された供給業者から購入すること。
7.13 重要な原材料等の供給業者が当該原材料等を製造していない場合、中間体・原薬の製造業者は、当該原材料等の製造業者の名前及び住所を把握しておくこと。
7.14 重要な原材料の供給業者を変更する場合は、第13章「変更管理」の規定に従って処理すること。
7.2 受入及び区分保管
7.20 原材料等を受入れし、使用が許可される前に、原材料等の各容器又は一群の容器のラベル表示
(供給者が使用する名前と社内において使用する名前が異なる場合には、両者の関係に関する記載も含む。)、容器の破損、封緘の破損、無断書き換え、汚染等
について外観を目視検査すること。原材料等は、検体を採取し、必要な試験検査を行い、使用が許可されるまでの間は、区分保管すること。
7.21 新たに入荷した原材料等を在庫品(例えば、サイロ内の溶媒や保管物)と混合する場合には、
当該原材料等が正しいものと識別され、また、必要な場合には試験を行った上で、使用すること。新たな入荷原材料等と在庫品との不適切な混同を防止するた
め、必要な手順を設けること。
7.22 バルクが専用ではないタンクにより輸送される場合、タンクからの交叉汚染が発生しないことを保証すること。その保証の手段としては、次の方法があり得る。
―洗浄済証明書
―微量不純物の試験
―供給業者の査察
7.23 大容量の貯蔵容器、付属配管類、充填、取り出し配管等は適切に識別されていること。
7.24 原材料等を入れた個々の容器又は一群の容器(ロット)には、識別コード、ロット番号及び受領番号を付して確認できるようにすること。各ロットの移動の際には、この番号を使用すること。各ロットの状態を確認する体制を有すること。
7.3 新たに入荷した製造原材料等の検体採取及び試験
7.30 第7.32章に示される場合を除き、原材料等の各ロットの確認のために、少なくとも一つの試験を行うこと。製造業者が供給業者を評価するシステムを有する場合には、供給業者の試験成績書を他の試験項目の実施に代える場合がある。
7.31 供給業者の承認を行う場合には、製造業者が規格に適合する原材料等を継続的に供給できる十
分な根拠(例えば、過去の品質履歴)があることを評価すること。自社による受入検査の項目を減らす前に、少なくとも3ロットについて、全項目試験を行うこ
と。それとは別に、最低限として、全項目の試験を適切な間隔で行い、供給業者の試験成績書と比較すること。試験成績書の信頼性について、一定の間隔で確認
を行うこと。
7.32 助剤、危険な又は毒性の強い原料、その他の特殊な原材料等又は当該会社の管理範囲内の別部
門から輸送される原材料等に関しては、これらが規格に適合するものであることを示す製造業者の試験成績書が得られる場合には、試験を行う必要はない。容
器、ラベル、ロット番号の記録等の外観を目視点検することもこれらの原材料等を特定する上で役立つ。これらの原材料等の受入試験をしない場合には、その理
由を正当化し、それを文書化すること。
7.33 検体はそのロットを代表するものであること。検体採取方法では、採取の対象容器の数、対象
容器中の採取部位、各容器からの検体採取量を決めておくこと。採取対象の容器の数と検体採取量は、原材料等の重要度、原材料等の品質のばらつき、供給業者
の過去の品質履歴、試験に必要な量等を考慮した検体採取計画に従うこと。
7.34 検体採取は、定められた場所で、検体採取した原材料等の汚染及び他の原材料等の汚染を防止するような手順で行うこと。
7.35 検体採取の対象となった容器を開封する際には、注意して開け、すぐに閉めること。また、当該容器には、検体を採取したことを明記すること。
7.4 保管
7.40 原材料等は、分解、汚染及び交叉汚染を防止するよう、取り扱い、保管すること。
7.41 原材料等が保管されているファイバードラム、バッグ又は箱は、直接床の上に置かないこと。清掃や検査を行うため、必要な場合には、適切な間隔をあけて置くこと。
7.42 原材料等は、品質が確保される条件・期間で保管し、最も古いものから順次使用されるように、適切に管理すること。
7.43 容器の識別ラベルが変質せず、また、開封して使用する前に容器を適切に洗浄する場合には、適正な容器に入った特定の原材料等を屋外で保管する場合がある。
7.44 不合格と判定された原材料等については、製造工程に許可なく使用されることのないよう、区分保管システムにより、識別し、管理すること。
7.5 再評価
7.50 原材料等が、例えば、長期に保存された場合又は熱や湿気に曝された場合には、使用に適しているかどうかを確認するため、再評価を実施すること。
8 製造及び工程内管理
8.1 製造作業
8.10 中間体・原薬の生産に用いる原料は、使用への適合性に影響を与えない適切な条件下で秤量又は計量を行うこと。秤量装置及び計量装置はその使用目的に応じて適切な精度のものであること。
8.11 後の製造作業での使用のために原材料等を小分けする場合は、適切な小分け容器を用い、また、以下の内容がわかるように当該容器に表示すること:
―原材料等の名称・コード;
―小分け番号又は管理番号;
―当該容器中の原材料等の質量又は容量;
―必要であれば、再評価又はリテストの日付。
8.12 重要な秤量、計量又は小分け作業については、作業者以外の者の立会いのもとで行うか又はそれと同等の管理を行うこと。製造担当者は原材料等の使用前に、当該原材料等が目的とする中間体・原薬の製造指図に指示されたものであることを確認すること。
8.13 その他の重要な作業については、作業者以外の者の立会いのもとで行うか又はそれと同等の管理を行うこと。
8.14 実収量については、製造工程の指定された段階で、期待収量と比較すること。期待収量につい
ては、実験室データ、パイロットスケールデータ又は製造データに基づいて、適切な範囲を設定すること。重要工程に係る収量の逸脱については、そのロットの
品質への影響又は影響のおそれについて調査・確認を行うこと。
8.15 全ての逸脱について、記録し、明らかにすること。また、全ての重要な逸脱について、原因の調査を行うこと。
8.16 設備の主要部分の運転状態は、各装置に表示するか、もしくは、適切な文書、コンピュータ管理システム又はそれらに代わり得る方法のいずれかにより示すこと。
8.17 再加工又は再処理をする中間体、原薬等は、間違って使用されることのないよう適切に管理すること。
8.2 時間制限
8.20 工程完了に係る時間制限が製造指図書原本に示されている場合(第6.41章参照)、当該時
間制限は中間体・原薬の品質保証に適うものであること。時間制限が逸脱した場合には、それを記録し、評価すること。なお、例えば、pH調整、水素添加、設
定規格値までの乾燥等、工程が一定の目標値をもって進められる場合、反応・工程段階の終了時点は、工程内での検体採取及び試験により定められるため、時間
制限を規格として設定することは不適当である。
8.21 さらに処理を行う中間体は、使用への適合性を保証する適切な条件下で保管すること。
8.3 工程内検体採取及び管理
8.30 中間体・原薬の品質特性に影響を及ぼす工程の進捗状況をモニターし、工程の状況を管理するための手順書を確立すること。なお、工程内管理及びそれらの判定基準は、開発段階で得た情報又は実績データに基づいて設定すること。
8.31 試験の判定基準、種類及びその範囲は、製造する中間体・原薬の特性、反応・工程及び当該工
程が製品の品質に及ぼす変動の程度による。初期工程での工程内管理はあまり厳しくなくてもよいが、後の工程(例えば、分離及び精製段階)になるほど、より
厳重な管理が必要である。
8.32 重要な工程内管理(及び重要工程のモニタリング)に係る事項については、管理事項及び管理方法を含め、文書化し、品質部門による承認を受けること。
8.33 工程内管理として、製造部門の従業員が、品質部門の事前承認なしで工程の調整を行う場合がある。ただし、その場合は、当該調整は品質部門により事前に定められ、承認された限度内であること。全ての試験及びその結果は、ロット記録の一部として全て記録すること。
8.34 工程内の原材料等に関する検体採取方法に係る手順書を作ること。検体採取計画及び検体採取手順は、科学的に妥当な方法に基づいていること。
8.35 工程内での検体採取は、採取した検体と他の中間体・原薬との汚染を防止するように設計した手順を用いて実施すること。手順は、採取後の検体の完全性を保証するように設定すること。
8.36 通常は、工程のモニター又は調整の目的で行う工程内試験において、規格外試験結果に係る調査を行う必要はない。
8.4 中間体・原薬のロット混合
8.40 本ガイドラインの目的により、混合は、均質な中間体・原薬を製造するために同一規格内の中
間体・原薬を混合する工程と定義する。単一ロットからの分画物(例えば、単一の結晶化ロットを複数に分けて遠心分離を行った場合の遠心分離物を集めたも
の)、又は、以降の工程のために複数のバッチの分画物を工程内で混ぜることは、製造工程の一部と考えられ、混合とは考えない。
8.41 規格外試験結果のロットを規格に適合させる目的で他のロットと混合しないこと。混合を行う各ロットについては、定められた工程により製造し、ロットごとに試験を行い、混合する前に規格に適合していることを確認すること。
8.42 許容される混合作業には、例えば以下の場合が含まれるが、それに限定されるものではない:
―ロットサイズを大きくするために、小ロットを混合する場合
―単一ロットを作るために、中間体・原薬のロットの端数品(即ち、比較的少量の半端品)を混合する場合
8.43 混合工程は、適切に管理し、記録すること。また、混合ロットは、必要に応じ、設定規格に適合しているか否かについて試験を行うこと。
8.44 混合工程に係るロット記録は、混合を行った各ロットを追跡できるように記録すること。
8.45 原薬の物理特性が重要な場合(例えば、固形の経口投与形態又は懸濁剤への使用を目的とする
原薬)には、配合ロットの均質性を示すために混合作業のバリデーションを実施すること。バリデーションには、混合工程によって影響を受ける重要な特性(例
えば、粒度分布、かさ密度、タップ密度)の試験を含めること。
8.46 混合が安定性に対して悪影響を与えるおそれがある場合には、最終混合ロットの安定性試験を行うこと。
8.47 混合ロットの使用期限又はリテスト日は、混合に用いたロット又は端数品のうち最も古いものの製造日に基づくこと。
8.5 汚染管理
8.50 適切な管理が行われている場合でも、残留物が、中間体・原薬の連続するロットに持ち越され
ることがある。例えば、微粉砕機の壁に付着している残留物、遠心機からの取り出し後に遠心機内に残った湿気を帯びた結晶の残留物、次の工程へ内容物を移動
させる際の処理槽からの液体又は結晶の取り出し残等が事例としてあげられる。ただし、そのようなキャリーオーバーが、結果的に設定した原薬の不純物プロ
ファイルに悪影響を与えるような分解物又は微生物汚染のキャリーオーバーとならないこと。
8.51 製造作業は、中間体・原薬以外の物質による汚染を防止する方法で実施すること。
8.52 精製後の原薬を取り扱う場合には、汚染を防止するための予防措置を講じること。
9 原薬・中間体の包装及び識別表示
9.1 一般事項
9.10 包装材料及び表示材料の受入れ、確認、区分保管、検体採取、試験・検査、出庫及び取扱いを記述した手順書を備えること。
9.11 包装材料及び表示材料は設定規格に適合すること。規格に適合しないものは不合格とし、作業への不適切な使用を防止すること。
9.12 包装材料及び表示材料の出庫ごとに、受入れ、試験・検査及び適否を示す記録を保管すること。
9.2 包装材料
9.20 容器は、中間体・原薬の輸送中及び定められた条件での保管中に発生するおそれのある当該中間体・原薬の変質又は汚染を適切に防止するものであること。
9.21 容器は清浄なものであり、中間体・原薬の特性により必要な場合には、その使用目的に適していることを保証するために消毒すること。また、容器は、規定した限界値を超えて中間体・原薬の品質を変化させるような反応性、付着性又は吸着性を有さないこと。
9.22 容器を再使用する場合には、文書化した手順に従って洗浄し、前回使用した全てのラベル類を除去するか、又はその表示内容を消すこと。
9.3 ラベルの発行及び管理
9.30 ラベルの保管区域への出入りは、許可された従業員に限定すること。
9.31 ラベルの発行、使用及び返却の数量を確認し、ラベルを貼付した容器数と発行したラベル数との間に不一致が生じた場合には、これを評価すること。この不一致については調査を行い、その調査は品質部門により承認を受けること。
9.32 ロット番号又はロットに関連するその他の印刷が入った余剰ラベルは全て破棄すること。返却ラベルは、混同を防止し、適切な確認を行い得る方法で保管すること。
9.33 旧版及び期限切れのラベルは破棄すること。
9.34 包装作業用のラベルの印刷に用いる印刷機は、全ての印刷の結果がロット製造指図・記録での規定に適合するように管理すること。
9.35 ロット用に発行した印刷ラベルは、製造指図書原本の規格に適合し、適切に表示していることを注意深く検査すること。この検査の結果は記録すること。
9.36 使用したラベルの代表となる印刷ラベルをロット製造指図・記録に添付すること。
9.4 包装作業及び表示作業
9.40 正しい包装材料及びラベルの使用を保証する手順書を備えること。
9.41 表示作業は混同を防止するように配慮すること。また、他の中間体・原薬の表示作業から物理的又は空間的に分けること。
9.42 中間体・原薬の容器に用いるラベルには、名称又は識別コード、製品のロット番号を、及び、保管条件が当該中間体・原薬の品質を保証するのに重要な情報である場合は当該保管条件を記載すること。
9.43 中間体・原薬を製造業者の管理外へ移動しようとする場合には、当該製造業者の名称及び住
所、内容量及び特殊な輸送条件並びに全ての法的要件をラベルに記載すること。使用期限のある中間体・原薬の場合には、使用期限をそのラベル及び試験成績書
に記載すること。リテスト日が定められた中間体・原薬の場合には、リテスト日をラベル又は試験成績書に記載すること。
9.44 包装・表示設備を使用直前に点検し、次回の包装作業に不必要な全ての原材料等が除去されていることを確認すること。この点検について、ロット製造指図・記録、設備日誌又はその他の記録システムに記録すること。
9.45 包装・表示済みの中間体・原薬を検査して、そのロットの容器及び包装が正しく表示されていることを保証すること。この検査は包装作業の一部として行うこと。この検査結果はロット製造指図・記録又は管理記録に記録すること。
9.46 製造業者の管理外へ輸送する中間体・原薬の容器は、封緘が破れた、又は、失われた場合、内容物が変っているおそれがあることを受取人に警告するような方法で封緘すること。
10 保管及び出荷
10.1 保管作業
10.10 全ての原材料等を適切な条件(例えば、必要な場合には管理された温度及び湿度)で保管できる設備を備えること。当該条件が原材料等の特性の維持のために重要な場合には、当該条件の記録を保存すること。
10.11 区分保管され、不合格判定を受け、返品され、又は回収された原材料等については、目的外又は未許可の使用を防止するための代替システムがない限り、今後の使い方を決定するまでの一時保管用の分離した保管区域を設けること。
10.2 出荷作業
10.20 原薬・中間体は品質部門による出荷承認後のみ第三者への流通用に出荷すること。なお、品質部門により許可を受け、適切な管理及び記録を備えている時には、区分保管中の原薬・中間体を、自社の管理下にある他の部門に移動させる場合がある。
10.21 原薬・中間体は、その品質に悪影響を及ぼさない方法で輸送すること。
10.22 原薬・中間体の特殊な輸送条件・保管条件はラベルに記載すること。
10.23 製造業者は、原薬・中間体の輸送業者が適切な輸送条件及び保管条件を承知し、従うことを保証すること。
10.24 出荷する中間体・原薬について、各ロットの回収の決定が速やかに行える体制を備えること。
11 試験室管理
11.1 一般的管理
11.10 独立した品質部門は、当該品質部門が必要に応じて自由に使用できる適切な試験設備を有すること。
11.11 検体採取、試験、原材料等の合否判定及び試験室データの記録・保管について記述した手順書を備えること。試験室の記録は、第6.6章に基づき、保管・管理を行うこと。
11.12 全ての規格、検体採取計画及び試験方法は、原材料、中間体、原薬、ラベル及び包装材料が
設定した品質及び純度の基準に適合することを保証するために、科学的であり、かつ、適切なものであること。規格及び試験方法は、承認申請の内容と一致する
こと。ただし、承認申請の内容以外に、さらに規格を追加する場合がある。全ての規格、検体採取計画及び試験方法は、それらの変更を含めて、適切な部署が起
案し、品質部門が照査し、承認すること。
11.13 原薬に関する規格は、承認された基準に従って設定し、製造工程と整合化していること。規
格には、不純物(例えば、有機不純物、無機不純物及び残留溶媒)の管理に係る項目を含めること。なお、微生物学的純度の規格が定められている場合には、生
菌数及び特定微生物の適切な管理値を設定し、適合させること。また、エンドトキシンに関する規格が定められている場合には、適切な管理値を設定し、適合さ
せること。
11.14 試験室管理は、手順に従って行い、実行した時点で記録を行うこと。手順からの逸脱は全て記録し、明らかにすること。
11.15 全ての規格外試験結果の値について、手順に従って調査し、記録すること。この手順には、
データの分析、重要な問題の有無の評価、是正措置の作業分担及び結論が含まれること。規格外試験結果の値が得られた後の検体の再採取や再試験は、文書によ
る手順にしたがって実施すること。
11.16 試薬及び標準品は、文書化された手順にしたがって、調製され、表示されること。使用期限の日付は、分析試薬及び標準溶媒からみて適切に設定されること。
11.17 一次標準品を原薬の製造用に適切に入手すること。各々の一次標準品の入手先を記録するこ
と。供給者の勧告に基づき、各々の一次標準品の保管及び使用記録を保存すること。公式に認定を受けた供給元から入手した一次標準品は、当該標準品が供給者
の勧告と一致する条件で保管される場合には、通常、試験を行わずに使用に供する。
11.18 一次標準品が公式に認定を受けた供給元から入手できない場合には、「自家製一次標準品」を設定すること。一次標準品の同一性及び純度を完全に確立するために適切な試験を実施すること。この試験の適切な記録を保存すること。
11.19 二次標準品については、適切に調製し、確認し、試験を行い、承認し、及び保管すること。
二次標準品のロットごとの適合性は、初回使用前に一次標準品と比較することにより判定すること。二次標準品はロットごとに、文書化した方法に従って、定期
的に再認定すること。
11.2 中間体・原薬の試験
11.20 中間体・原薬は、ロットごとに、適切な試験を行い、規格に適合していることを判定すること。
11.21 一定に管理された製造工程で製造された代表的なロットに存在する、同定済み及び未同定の
不純物を記述した不純物プロファイルを、通常、原薬ごとに設定すること。不純物プロファイルには、同定、幾つかの定性的な分析指標(例えば、保持時間)、
認められる各不純物の範囲及び同定されている不純物の分類(例えば、無機、有機、溶媒)が含まれる。不純物プロファイルは、通常、原薬の製造工程及び起源
によって決まる。不純物プロファイルは、通常、生薬又は動物組織由来の原薬には必要ではない。バイオテクノロジーを用いた場合については、ICHQ6Bガ
イドラインに記載されている。
11.22 不純物プロファイルは、原料、装置運転パラメータ又は製造工程の変更によって生ずる原薬の変化を検出するために、当局へ提出した不純物プロファイルと適切な間隔で比較するか、あるいは、過去のデータと比較すること。
11.23 微生物学的品質が特定されている場合には、中間体・原薬の各ロットについて適切な微生物学的試験を実施すること。
11.3 分析法のバリデーション―第12章参照
11.4 試験成績書
11.40 求めに応じて、中間体・原薬の各ロットに係る真正の試験成績書を発行すること。
11.41 中間体・原薬の名称に関する情報は、必要に応じて、グレード、ロット番号及び出荷判定の
日付を含めて、試験成績書に記載すること。使用期限を有する中間体・原薬の場合には、当該使用期限をラベル及び試験成績書に記載すること。リテスト日を有
する中間体・原薬の場合には、リテスト日をラベル又は試験成績書に記載すること。
11.42 試験成績書には、公定書又は顧客の要件に従って実施した各試験を、規格値及び得られた数値結果(試験結果が数値である場合)を含めて表示すること。
11.43 試験成績書には、品質部門の者が日付を記入し、署名するとともに、製造業者の名称、住所
及び電話番号を記載すること。分析を再包装業者又は再加工業者が行った場合には、試験成績書には、当該再包装業者又は再加工業者の名称、住所及び電話番号
並びに参考として製造業者の名称を記載すること。
11.44 再包装業者・再加工業者、代理店又は仲介業者が独自に試験成績書を発行する場合には、当
該試験成績書には、分析を行った試験室の名称、住所及び電話番号を記載すること。また、参考として、製造業者の名称及び住所を記載するとともに、元のロッ
トの試験成績書の複写を添付すること。
11.5 原薬の安定性モニタリング
11.50 文書化された実施中の安定性試験プログラム(安定性評価及び確認を含む。)は、原薬の安定性特性をモニタリングするように設計されていること。また、その結果は、適切な保管条件及びリテスト日又は使用期限を確認するために用いること。
11.51 安定性試験に使用する試験手順は、バリデーションが行われたものであり、安定性を評価できるものであること。
11.52 安定性用の検体は、販売用に用いる容器と同等な容器に保管すること。例えば、原薬をファイバードラム内の袋に入れて販売する場合には、安定性用検体は同じ材質の袋及び材質の組成が販売用のドラムと同等又は同一の小スケールのドラムに入れること。
11.53 通常、リテスト日又は使用期限を確認するために、最初の市販用3ロットを安定性のモニタ
リングプログラムに用いること。ただし、それまでの研究データにより原薬が少なくとも2年間安定であることが予測されている場合には、3ロットより少ない
ロット数を用いる場合がある。
11.54 その後、生産した原薬について、少なくとも年1ロット(その年に製造がない場合を除く)を安定性モニタリングプログラムに用い、また、安定性を確認するために少なくとも年1回試験を行うこと。
11.55 有効期間が短い原薬については、試験を更に頻繁に行うこと。例えば、有効期間が1年以下
の、バイオテクノロジー原薬、生物由来原薬及びその他の原薬については、安定性用検体を採取し、最初の3ヶ月間は毎月試験を行い、その後は3ヶ月間隔で試
験を行うこと。原薬の安定性が低下しないことを確認できるデータが存在する場合には、特定の試験間隔(例えば9ヶ月試験)の削除を考慮する場合がある。
11.56 必要な場合には、保存条件は、ICHの安定性に係るガイドラインの規定によること。
11.6 使用期限及びリテスト日
11.60 中間体を製造業者の管理外へ移動させようとする場合であり、当該中間体に使用期限又はリテスト日を適用する場合には、安定性を裏付ける情報(例えば公表データ、試験結果)が活用できるようにすること。
11.61 原薬の使用期限又はリテスト日は、安定性試験から得たデータの評価に基づいていること。一般的通例としては、使用期限ではなくリテスト日を使用する。
11.62 以下の場合には、原薬の予備的な使用期限又はリテスト日の設定をパイロット規模のロット
に基づき行う場合がある;(1)パイロット規模のロットが、販売用の実生産規模において使用する最終的な工程と同等な製造方法及び手順を用いている;か
つ、(2)パイロット規模のロットの品質が販売用の規模で生産するものを表していること。
11.63 リテストを行うために、代表的な検体を採取すること。
11.7 参考品・保存品
11.70 参考品・保存品の包装及び保管は、将来原薬のロットの品質を評価する可能性に備えるためのものであり、将来の安定性試験のためのものではない。
11.71 適切に確認を受けた原薬の各ロットの参考品・保存品は、製造業者が指定した当該ロットの
使用期限後1年間、又は当該ロットの出荷後3年間のうち、より長い期間で保管すること。リテスト日を有する原薬については、同様な参考品・保存品を、製造
業者から当該ロットの出荷が完了した後3年間保管すること。
11.72 参考品・保存品は、原薬の保管と同じ包装システムで保管するか又は販売用の包装システム
と同等又はより保護的なシステムで保管すること。なお、参考品・保存品は、公定書収載の全項目について少なくとも2回の分析を実施できる量、又は公定書が
ない場合には、規格の全項目について2回の分析を実施するのに十分な量を保管すること。
12 バリデーション
12.1 バリデーション方針
12.10 企業の全体的な方針、目的及びバリデーションへの取組方法について、製造工程、洗浄手順、分析法、工程内試験手順、コンピュータ化システム並びに各バリデーション段階の設計、照査、承認及び文書作成の責任者に関する事項を含め、文書化すること。
12.11 重要なパラメータ・特性は、通常、開発段階中に又は実績データにより確認し、再現性のある作業に必要な範囲を定義すること。これには以下の事項が含まれる:
―製品特性からみた原薬の特徴;
―原薬の重要な品質特性に影響を与えるおそれのある工程パラメータの確認;
―日常的な生産及び工程管理への使用が予定されている各重要工程パラメータの範囲の決定
12.12 バリデーションは、原薬の品質及び純度に関して重要であると判断された作業に適用すること。
12.2 バリデーションの文書化
12.20 バリデーション実施計画書は、特定の工程のバリデーションをどのように行うかについて明示した文書とすること。当該実施計画書は、品質部門及びその他の指定部門が照査し、承認すること。
12.21 バリデーション実施計画書には、実施するバリデーションの種類(例えば、回顧的、予測的、コンカレント)、工程の稼動回数、重要工程及び判定基準を規定すること。
12.22 バリデーション実施計画書に対応するバリデーション報告書では、得られた結果を要約し、認められた全ての逸脱にコメントを行い、適切な結論を導き、不具合の改善のために推奨する変更を含めて、作成すること。
12.23 バリデーション実施計画書からの逸脱は、適正な理由を付して記録すること。
12.3 適格性評価
12.30 プロセスバリデーションの作業を始める前に、重要な装置及び付帯設備の適格性評価を完了すること。適格性評価は、通常、以下の作業を個々に、又は組み合わせて実施する:
―設計時適格性評価(DQ):設備、装置又はシステムが目的とする用途に適切であることを確認し文書化すること。
―設備据付時適格性評価(IQ):据付け又は改良した装置又はシステムが承認を受けた設計及び製造業者の要求と整合することを確認し文書化すること。
―運転時適格性評価(OQ):据付け又は改良した装置又はシステムが予期した運転範囲で意図したように作動することを確認し文書化すること。
―性能適格性評価(PQ):設備及びそれに付随する補助装置及びシステムが、承認された製造方法及び規格に基づき、効果的かつ再現性よく機能できることを確認し文書化すること。
12.4 プロセスバリデーションの手法
12.40 プロセスバリデーション(PV)とは、設定パラメータ内で稼働する工程が、設定規格及び品質特性に適合した中間体・原薬を製造するために効果的かつ再現性よく機能できることに関する文書による確証である。
12.41 バリデーションには3つの手法がある。予測的バリデーションが好ましい手法であるが、例外的に、その他の手法を使用する場合がある。これらの手法及び適用を以下に示す。
12.42 予測的バリデーションは、通常、全ての原薬製造工程に関して、第12.12章で規定されたとおり、実施される。原薬製造工程について実施した予測的バリデーションは、当該原薬から生産した最終製剤の市販前に完了していること。
12.43 コンカレントバリデーション(実生産に合わせて同時的に行われるバリデーション)は、繰
返しの製造運転のデータが以下の理由により利用できない時に実施する場合がある;限られた原薬ロット数のみを製造する場合;原薬ロットを稀にしか製造しな
い場合;又は原薬ロットを、バリデーション済みの工程を改良して製造する場合。なお、コンカレントバリデーションの完了の前に、原薬ロットの詳細なモニタ
リング及び試験に基づいて、当該ロットを出荷し、市販用の最終製剤に使用する場合がある。
12.44 原料、装置、システム、設備又は製造工程での変更に起因する原薬の重要な品質に変動がないことが十分確立されている工程については、例外として回顧的バリデーションを実施する場合がある。このバリデーションは、以下の条件が整った場合に使用できる:
(1) 重要な品質特性及び重要な工程パラメータが識別されていること;
(2) 適切な工程内試験の判定基準及び管理が設定されていること;
(3) 作業者のミス以外の原因に起因する重要工程の不具合や製品の不良、及び、装置の適合性と関係なく起きる装置不具合がないこと;さらに
(4) 既存の原薬についての不純物プロファイルが確立していること
12.45 回顧的バリデーションのために選択されたロットは、規格に適合しなかった全てのロットを
含めて、調査期間中に実施した全てのロットを代表するロットであること。また、工程の恒常性を実証するのに十分なロット数とすること。工程に対して回顧的
にバリデーションを行うためのデータを得るために、参考品・保存品の試験を行う場合がある。
12.5 プロセスバリデーションの計画
12.50 バリデーションのための工程稼動回数は、工程の複雑性又は考慮すべき工程変更の規模によ
ること。予測的及びコンカレントバリデーションに関しては、3回の連続して成功した製造ロットを一つの指標として使用すべきであるが、工程(例えば、複雑
な原薬工程又は終了時間が長引いた原薬工程)の恒常性を証明するために、稼動回数の追加が認められる場合がある。回顧的バリデーションに関しては、工程の
恒常性を評価するために、一般的に10から30の連続するロットのデータを検討すべきであるが、正当な理由があれば、より少ないロット数で検討を行う場合
もある。
12.51 プロセスバリデーションを実施している期間中は、重要工程パラメータを管理し、モニター
すること。なお、例えばエネルギー消費量又は装置使用を最少化するために管理する変数のように、品質に関係しない工程パラメータについては、プロセスバリ
デーションに含める必要はない。
12.52 プロセスバリデーションでは、各原薬について不純物プロファイルが規定した限界値内であ
ることを確認すること。なお、当該不純物プロファイルは、実績データ、及び適用できる場合には工程開発中に定められたプロファイル又は重要な臨床試験及び
毒性試験に使用したロットに係るプロファイルに匹敵するかそれ以上良好であること。
12.6 検証したシステムの定期的照査
12.60 システム及び工程は、それらがなお妥当な状態で作動していることを確認するために定期的
に評価すること。当該システム及び工程に重要な変更がなく、また、品質照査によりシステム又は工程が恒常的に規格に適合する中間体等を製造していることが
確認されている場合には、通常は、再バリデーションの必要性はない。
12.7 洗浄のバリデーション
12.70 洗浄手順は、通常、バリデーションを行うこと。一般的に、洗浄のバリデーションは、汚染
又は偶発的な原材料等のキャリーオーバーが原薬の品質に最大のリスクをもたらす状況又は工程に対して行うこと。例えば、初期段階の製造では、残留物がそれ
以降の精製段階で除去される場合には、装置の洗浄についてバリデーションを実施する必要はない場合がある。
12.71 洗浄手順のバリデーションでは、実際の装置の使用パターンを反映させること。種々の原
薬・中間体を同じ装置で製造し、当該装置を同じ方法で洗浄する場合は、洗浄のバリデーションには代表的な中間体・原薬を選択する場合がある。その選択は、
溶解性、洗浄の困難さ並びに力価、毒性及び安定性に基づく残留物限界値の推定に基づいて行うこと。
12.72 洗浄のバリデーション実施計画書には、洗浄する装置、手順、原材料等、合格洗浄水準、モニタリング及び管理を行うパラメータ並びに分析方法を記載すること。また、実施計画書には、採取する検体の種類、採取方法及び表示方法を記載すること。
12.73 不溶性及び溶解性残留物の両方を検出するために、検体採取には、スワブ法、リンス法又は
代替方法(例えば、直接抽出)を適切に含めること。使用する検体採取方法は、洗浄後の装置表面上に残留する残留物の水準を定量的に測定できる方法にするこ
と。スワブ法は、製品接触表面に装置設計又は工程の制約のために容易に近づけない場合は実際的ではない。例えば、ホースの内部表面、移送パイプ、反応タン
クの開口部の小さい部分、毒性材料を取扱う反応タンク、微粉砕機やマイクロフルーダイザー等の小型で複雑な装置等があげられる。
12.74 残留物又は汚染物を検出できる感度を有するバリデーション済みの分析方法を使用するこ
と。各分析方法の検出限界は、残留物又は汚染物の設定合格水準を検出するのに十分な感度とすること。当該分析方法の達成可能な回収水準を設定すること。残
留物限界値は、実際的で、達成可能であり、立証可能であり、かつ、最も有毒な残留物に基づいたものとすること。限界値は、原薬又はその最も有毒な組成物に
関する既知の薬理学的、毒性学的又は生理学的活性の最小量に基づいて設定すること。
12.75 装置の洗浄作業・消毒作業の検討は、原薬中の生菌数又はエンドトキシンを低減する必要のある工程、又は、そのような汚染が問題となる他の工程(例えば、無菌製剤の生産に用いる非無菌原薬)について、微生物汚染及びエンドトキシン汚染を対象として行うこと。
12.76 洗浄手順は、当該洗浄手順が通常の製造時に有効であることを保証するために、バリデー
ション後適切な間隔でモニタリングを行うこと。装置の清浄性は、分析試験及び可能な場所では目視検査でモニタリングを行う場合がある。目視検査により、検
体採取及び分析では検出できない、小さな部分に集中する大量の汚染の検出が可能な場合がある。
12.8 分析法のバリデーション
12.80 採用する分析法が、薬局方又はその他認知された参考文献に収載されていない場合には、バリデーションを行うこと。バリデーションが実施されていない場合でも、使用する全ての試験方法の適合性を実際の使用条件で証明し、記録すること。
12.81 分析法は、分析法のバリデーションに関するICHガイドラインに含まれる特性を考慮して、バリデーションを行うこと。実施する分析のバリデーションの程度は分析の目的及び原薬工程の段階を反映するものとすること。
12.82 分析法のバリデーションを開始する前に、分析装置の適切な適格性評価を検討すること。
12.83 バリデーションを行った分析法に係る全ての修正について、完全な記録を保管すること。当該記録には、修正の理由及び修正された方法が確立した方法と同様に正確で信頼できる結果をもたらすものであることを証明する適切なデータを含めること。
13 変更管理
13.10 中間体・原薬の製造及び管理に影響を与えるおそれのある全ての変更を評価するために、正式な変更管理体制を確立すること。
13.11 原料、規格、分析法、設備、支援システム、装置(コンピュータハードウエアを含む)、工程、表示・包装材料及びコンピュータソフトウエアに係る変更の確認、記録、適切な照査及び承認に関して文書による手順を設けること。
13.12 GMPに関連する変更に係る全ての提案は、適切な部署が起案し、照査し、承認し、さらに品質部門が照査し、承認すること。
13.13 提案された変更により起こり得る中間体・原薬の品質への影響を評価すること。バリデー
ションを既に行った工程に係る変更を正当化するために必要な試験、バリデーション及び文書化の程度を決定するために、レベル分けの手順は助けになる。変更
の性質及び程度並びにこれらの変更が工程に与える影響により変更を分類する場合がある(例えば、小さな変更又は大きな変更)。なお、科学的判断に基づき、
バリデーションを行った工程の変更を正当化するのに適切な追加の試験及びバリデーションの決定を行うこと。
13.14 承認を受けた変更を実施する場合、その変更によって影響を受けるすべての文書が確実に改定されるよう対策を講じること。
13.15 変更実施後、変更の下で製造又は試験を行った最初の複数ロットについて評価を行うこと。
13.16 設定したリテスト日又は使用期限について重要な工程変更により起こり得る影響を評価すること。必要な場合には、修正した工程により製造した中間体・原薬の検体を加速安定性試験や安定性モニタリングプログラムに供する。
13.17 設定した製造手順及び工程管理手順からの変更が原薬の品質に影響を与えるおそれがある場合には、現在製剤を製造している製造業者にその旨を通知すること。
14 中間体、原薬等の不合格及び再使用
14.1 不合格
14.10 設定規格に適合しない中間体・原薬は、その旨を識別し、区分保管すること。当該中間体・原薬は以下に示すとおり再加工又は再処理する場合がある。不合格原材料等の最終処置は記録すること。
14.2 再加工
14.20 基準又は規格に適合しないものを含め中間体・原薬を工程に戻し、設定された製造工程の一
部である結晶化段階又はその他の適切な化学的又は物理的操作(例えば、蒸留、濾過、クロマトグラフィー、粉砕等)を繰返すことにより再加工することは、一
般的には、許容される。ただし、そのような再加工を大部分のロットで行う場合は、そのような再加工は標準的な製造工程の一部として含めること。
14.21 工程内管理試験により、当該工程が未完了であることが示された場合、その後の工程の継続は通常の工程の一部と考える。これは再加工とは考えない。
14.22 未反応物を工程に戻し、化学反応を繰返すことは、それが設定した工程の一部でなければ、
再加工と考える。そのような再加工は、中間体・原薬の品質が生成するおそれのある副生成物及び過剰反応物質により悪影響を受けないことを保証するために慎
重な評価を行うこと。
14.3 再処理
14.30 設定した基準又は規格に適合しないロットを再処理することを決定する前に、不適合の理由を調査すること。
14.31 再処理したロットについては、再処理製品が本来の工程で製造されるものと同等の品質を有
することを示すために、適切に評価し、試験し、安定性を保証する場合は安定性試験を行い、記録すること。コンカレントバリデーションは、しばしば再処理手
順に関する適切なバリデーション手法となる。これにより、実施計画書に再処理手順、実施方法及び予測結果を定義することが可能になる。再処理するロットが
1ロットのみの場合、再処理をまず行い、その後、報告書を作成し、当該ロットが問題ないことが判明した後出荷を行う場合がある。
14.32 再処理を行ったロットについて、当該ロットごとの不純物プロファイルを設定した工程で生産されたロットと比較する手順を設けること。通常の分析方法が再処理ロットの特性化に不十分な場合には、他の方法を使用すること。
14.4 中間体、原薬等及び溶媒の回収
14.40 反応物・中間体・原薬の回収(例えば、母液又は濾液からの回収)は、承認を受けた回収に係る手順が存在し、回収したものが目的とする用途に適切な規格に適合する場合には許容される。
14.41 溶媒を回収し、同じ工程又は別の工程で再使用する場合がある。ただし、この場合には、当
該溶媒を再使用する前の段階、又は、当該溶媒を他の承認された溶媒と混合する前の段階において、当該溶媒が該当する基準に適合することを保証するため、回
収手順を管理し、モニターすること。
14.42 溶媒及び試薬の新規のもの及び回収したものを混合する場合には、適切な試験により、当該溶媒又は試薬を使用する全ての製造工程について当該溶媒又は試薬の適合性が証明されていること。
14.43 回収溶媒、母液及びその他の回収物質の使用については、適切に記録すること。
14.5 返品
14.50 返品された中間体・原薬は、その旨を識別し、区分保管すること。
14.51 返品された中間体・原薬が、返品前あるいは返品中に保管又は輸送された条件又はその容器の状態により、その品質に疑いがもたれる場合、返品された中間体・原薬は適切に再加工、再処理又は破棄のいずれかの処置を行うこと。
14.52 返品された中間体・原薬の記録を保管すること。当該記録には、返品ごとに、以下の事項を含めること:
―荷受人の氏名及び住所
―中間体・原薬名、ロット番号及び返品量
―返品の理由
―返品された中間体・原薬の使用又は廃棄
15 苦情及び回収
15.10 全ての品質に関連する苦情は、口頭又は文書のいずれで受けた場合にも、手順書に従って、記録し、調査すること。
15.11 苦情記録書には、以下の事項を含むこと。:
―苦情申出者の名称及び住所;
―苦情を提出した人の氏名(及び該当する場合には、肩書き)並びに電話番号;
―苦情の内容(原薬の名称及びロット番号を含む);
―苦情を受けた日付;
―最初に取った措置(措置を取った日付及び担当者の氏名を含む);
―実施した全ての追跡調査;
―苦情申出者への対応(返答した日付を含む);及び
―中間体・原薬のロットに係る最終決定
15.12 苦情記録書は、傾向、製品に関連した頻度及び改善措置を追加的にかつ必要に応じて直ちに行う観点からの重要度を評価するために保管すること。
15.13 中間体・原薬の回収を検討すべき状況を明確に定義した手順書を設けること。
15.14 回収手順には、情報評価に関与する担当者、回収を開始する方法、回収について知らせるべき者及び回収品の処理方法を明示すること。
15.15 重篤又は生命を脅かすおそれのある状況の場合には、地方、国又は国際的な当局にその旨を連絡し、助言を求めること。
16 受託製造業者(試験機関を含む)
16.10 全ての受託製造業者(試験機関を含む)は本ガイドラインで規定したGMPに従うこと。交叉汚染の防止及びトレーサビリティの維持に特別の考慮を払うこと。
16.11 受託製造業者(試験機関を含む)は、契約現場で行われる定められた作業がGMPに適合していることを保証するために、委託者による評価を受けること。
16.12 契約の委託者及び受託者は、文書による、承認を受けた契約書又は正式の合意書を備えること。当該契約書又は合意文書には、品質に関わる処置を含めてGMPで規定されているそれぞれの責任分担を詳細に明記すること。
16.13 契約書では、GMP適合を確認するために、委託者が受託者の施設を監査する権利を認めていること。
16.14 下請契約が認められている場合、受託者は、委託者による下請け合意に関する事前の評価及び承認なしに、契約を結んで委託されたいかなる仕事も第三者に委譲しないこと。
16.15 製造記録及び試験記録は、その作業が行われた場所で保管し、すぐに利用できるようにしておくこと。
16.16 工程、設備、試験方法、規格又はその他契約上の要件の変更は、委託者がその変更について連絡を受け、かつ、承認しない限り、行わないこと。
17 代理店、仲介業者、貿易業者、流通業者、再包装業者及び再表示業者
17.1 適用範囲
17.10 第17章は、原薬・中間体の販売・取扱い、再包装、再表示、処理、流通又は保管を行う、オリジナルの製造業者以外の全ての関連業者に適用する。
17.11 全ての代理店、仲介業者、貿易業者、流通業者、再包装業者及び再表示業者は本ガイドラインで規定されたGMPに従うこと。
17.2 出荷された原薬・中間体のトレーサビリティ
17.20 代理店、仲介業者、貿易業者、流通業者、再包装業者及び再表示業者は、自らが販売した原薬・中間体を完全に追跡できるようにしておくこと。以下の事項を含む記録文書は利用できるように保管すること:
―製造業者の名称
―製造業者の住所
―購入注文書
―積荷証券(輸送関係書類)
―受領書類
―原薬・中間体の名称又は呼称
―製造業者のロット番号
―輸送及び配送記録
―製造業者のものを含む全ての真正の試験成績書
―リテスト日又は使用期限
17.3 品質マネージメント
17.30 代理店、仲介業者、貿易業者、流通業者、再包装業者又は再表示業者は、第2章で規定する品質マネージメントを行う有効な体制を確立し、文書化し、実施すること。
17.4 原薬・中間体の再包装、再表示及び保管
17.40 原薬・中間体の再包装、再表示及び保管は、混同及び原薬・中間体の特性又は純度の低下を避けるために、本ガイドラインで規定したように、適切なGMP管理下で実施すること。
17.41 再包装は、汚染及び交叉汚染を避けるために、適切な環境条件下で実施すること。
17.5 安定性
17.50 原薬・中間体を当該原薬・中間体の製造業者が使用したものと異なる形態の容器に再包装した場合には、指定された使用期限日又はリテスト日を正当化するための安定性試験を実施すること。
17.6 情報の伝達
17.60 代理店、仲介業者、流通業者、再包装業者又は再表示業者は、原薬・中間体の製造業者から受けた全ての品質又は規制上の情報を顧客に伝達すること、及び顧客からの該当情報を当該原薬・中間体の製造業者に伝達すること。
17.61 原薬・中間体を顧客に供給する代理店、仲介業者、貿易業者、流通業者、再包装業者又は再表示業者は、当該原薬・中間体の製造業者の名称及び供給したロット番号を記録すること。
17.62 代理店は、規制当局の求めに応じて、原薬・中間体の製造業者名を提示すること。当該製造
業者は、認可された代理店との法的関係次第で、規制当局に対し、直接対応する場合、又は、認可された代理店を通して対応する場合がある。(本項でいう「認
可された」とは、製造業者によって認可されたことを意味する。)
17.63 第11.4章にある試験成績書に関する規定に適合すること。
17.7 苦情及び回収の処理
17.70 代理店、仲介業者、貿易業者、流通業者、再包装業者及び再表示業者は、自らに向けられた全ての苦情及び回収に関して、第15章で規定されているような苦情記録書及び回収記録書を保管すること。
17.71 状況が許せば、代理店、仲介業者、貿易業者、流通業者、再包装業者又は再表示業者が苦情
を受けた場合には、その原薬・中間体を受け取った可能性のある他の顧客又は規制当局もしくはその両者に対して、更なる措置を講じるべきかどうかを決めるた
めに、当該原薬・中間体の製造業者と共に当該苦情を照査すること。苦情又は回収の原因についての調査は、適切な部署が実施し、記録すること。
17.72 苦情が製造業者に関係する場合、代理店、仲介業者、貿易業者、流通業者、再包装業者又は再表示業者が保管する記録には、原薬・中間体の製造業者から受けた当該苦情に係る全ての回答(日付及び提供された情報を含む)を含めること。
17.8 返品の処理
17.80 返品は、第14.52章で規定されているとおり処理すること。代理店、仲介業者、貿易業者、流通業者、再包装業者又は再表示業者は、返品された原薬・中間体に係る文書を保管すること。
18 細胞培養・発酵により生産する原薬のガイドライン
18.1 一般事項
18.10 第18章は、前章まででは適切に網羅していない天然生物体又は組換え生物体を使用し、細
胞培養又は発酵により生産する原薬・中間体に特異的な管理について記述している。ただし、独立の章としてあるものではなく、全般的には、本ガイドラインの
他の章に規定されるGMPの原則が適用される。低分子を製造するための「クラシカルな」工程における発酵の原則と、蛋白質又はポリペプチドを製造するため
に組換え及び非組換え生物体を用いる細胞培養・発酵の原則は、その管理の程度が異なっているものの、同じであることに留意されたい。実際として、本章では
これらの違いについて記述している。一般的に、蛋白又はポリペプチドを製造するために用いられるバイオテクノロジー工程における管理の程度は、クラシカル
な発酵工程の管理の程度より厳格である。
18.11 「バイオテクノロジー工程(バイテク)」とは、原薬製造のために、組換えDNA、ハイブ
リドーマ、その他の技術により産み出された又は変化させた細胞又は微生物の使用をいう。バイオテクノロジー工程により製造された原薬は、通常、例えば蛋白
質及びポリペプチドのような高分子物質であり、本章ではそれらに係るガイドラインを示す。なお、抗生物質、アミノ酸、ビタミン、炭水化物類のような、低分
子の原薬も、組換えDNA技術により製造される場合があるが、この類の原薬の管理レベルは、クラシカル発酵の場合に求められる管理レベルに類似している。
18.12 「クラシカル発酵」とは、天然に存在する、又はコンベンショナルな手法(例えば、放射線
照射、化学的に引き起こした変異)により変化させた微生物を使用する原薬製造工程をいう。「クラシカル発酵」により製造された原薬は、通常、抗生物質、ア
ミノ酸、ビタミン、炭水化物類のような低分子物質である。
18.13 細胞培養又は発酵からの原薬・中間体の製造には、細胞培養又は生物体からの物質の抽出及
び精製等の生物学的工程が含まれる。物理化学的修飾等の更なる工程段階が存在する場合があるが、これも製造工程の一部であることを留意されたい。使用する
原料(培地、緩衝剤成分)は微生物汚染を増大させるおそれがある。供給源、調製法及び原薬・中間体の目的用途によって、製造及び工程の適切な段階でのモニ
タリングにおいてバイオバーデン、ウイルス汚染やエンドトキシンの管理が必要である。
18.14 中間体・原薬の品質を確保するために、生産の全ての段階で適切な管理を確立すること。本
ガイドラインの適用は細胞培養・発酵の段階から始まるが、前段階、例えば細胞バンク作製は、適切な工程管理の下で実施すること。本ガイドラインは、細胞バ
ンクのバイアルを製造に使用するために取り出した時点からの細胞培養・発酵を対象とする。
18.15 汚染のリスクを最小限にするために適切な装置管理及び環境管理を採用すること。環境管理上の判定基準及びモニタリングの頻度は、製造の段階及び製造条件(開放、閉鎖又は準閉鎖システム)による。
18.16 一般的に工程管理には以下の事項を考慮すること:
―ワーキングセルバンクの保守(必要な場合);
―適切な接種及び培養の拡大;
―発酵・細胞培養の間の重要な作業パラメータの管理;
―必要な場合には、細胞増殖、生存率(ほとんどの細胞培養工程について)及び生産性のモニタリング;
―中間体・原薬を汚染(特に微生物汚染)及び品質低下から保護しながら、細胞、細胞残渣及び培地成分を除去するハーベスト及び精製手順
―バイオバーデン、及び必要な場合にはエンドトキシンのレベルについて、製造の適切な段階でモニターすること;
―ICHQ5Aガイドライン「ヒト又は動物細胞株を用いて製造されるバイオテクノロジー応用医薬品のウイルス安全性評価」に記載されたウイルス安全性に関する事項
18.17 必要な場合には、培地成分、宿主細胞の蛋白質、その他の工程に関する不純物、製品に関する不純物及び汚染物の除去を立証すること。
18.2 細胞バンクの保守及び記録の保管
18.20 細胞バンクの取扱いは許可を受けた担当者に限定すること。
18.21 細胞バンクは、生存率を維持し、汚染を防止するように設計した保管条件で維持管理すること。
18.22 細胞バンクからのバイアルの使用及び保管条件についての記録を保管すること。
18.23 必要な場合には、細胞バンクは使用適合性を判定するために定期的にモニターすること。
18.24 細胞バンクに係る詳細については、ICHQ5Dガイドライン「生物薬品(バイオテクノロジー応用医薬品/生物起源由来医薬品)製造用細胞基剤の由来、調製及び特性解析」を参照のこと。
18.3 細胞培養・発酵
18.30 細胞基材、培地、緩衝液及び気体の無菌的な添加が必要な場合、可能であれば、閉鎖系又は
封じ込めシステムを使用すること。最初の容器への接種やその後の移送又は添加(培地、緩衝液)を開放容器で行う場合には、汚染のリスクを最小限にするため
の管理及び手順を備えること。
18.31 微生物汚染により原薬の品質が影響を受けるおそれがある場合には、開放容器を使用する作業は、バイオセイフティ・キャビネット又はこれと同様に管理された環境のもとで行うこと。
18.32 作業者は適切に着衣を着用し、培養工程を取扱う上で、特別な注意を払うこと。
18.33 重要な運転パラメータ、例えば、温度、pH、撹拌速度、気体の添加、圧力等は、設定した
工程との一致を保証するためにモニターすること。また、細胞増殖、生存率(ほとんどの細胞培養工程について)、さらに、必要な場合には生産性もモニターす
ること。重要なパラメータは、工程ごとに変動するものであるが、また、クラシカル発酵については、ある種のパラメータ(例えば細胞生存率)はモニターする
必要はない。
18.34 細胞培養装置は、使用後に、清掃し、滅菌すること。また、発酵装置は、必要な場合には、清掃するとともに、衛生的な状態にするか、又は滅菌を行うこと。
18.35 培養培地は原薬の品質を保護するために適切な場合には使用前に滅菌すること。
18.36 汚染を検出し、取るべき措置の方針を決定するために適切な手順を備えること。当該手順に
は、製品に対する汚染の影響を判定するための手順及び装置から汚染を除去し次のロットに使用する条件に戻すための手順が含まれること。発酵工程の間に観察
された混入微生物について適切に識別を行い、必要ならばそれらの存在が製品の品質へ及ぼす影響を評価すること。当該評価の結果は生成物の処置の際に考慮す
ること。
18.37 汚染事実の記録は保管すること。
18.38 共用装置(多品種製造)では、交叉汚染のリスクを最小限にするために、製品の一連の期間製造(キャンペーン製造)の間に、適切に、清掃後の追加試験が要求されることがある。
18.4 ハーベスト、分離及び精製
18.40 細胞又は細胞組成物を除去する、又は、細胞破壊後の細胞組成物を採集するハーベスト工程は、汚染のリスクを最小限にするために、設計した装置及び区域で行うこと。
18.41 製造に用いた生物体、細胞残渣及び培地成分を除去又は不活化するハーベスト及び精製の手順は、分解、汚染及び品質の低下を最小限にしながら、中間体・原薬を一定した品質で得ることを保証するために適切なものとすること。
18.42 全ての装置は、使用後適切に清掃するとともに、適切な場合には消毒を行うこと。なお、中間体・原薬の品質が低下しない場合には、清掃なしで多数の連続ロットの製造に利用する場合がある。
18.43 開放システムを使用する場合、精製は製品の品質を保持するのに適切に管理した環境条件で実施すること。
18.44 装置を複数の製品に使用する場合、専用クロマトグラフィー用樹脂の使用、追加試験等、追加的な管理が適切な場合がある。
18.5 ウイルス除去・不活化
18.50 ウイルス除去・不活化段階に係る詳細については、ICHQ5Aガイドライン「ヒト又は動物細胞株を用いて製造されるバイオテクノロジー応用医薬品のウイルス安全性評価」を参照のこと。
18.51 ウイルス除去及びウイルス不活化段階は、工程において重要な処理段階であり、バリデーションを行ったパラメータの範囲内で実施すること。
18.52 ウイルス除去・不活化の前段階から後段階へのウイルス汚染のおそれを防止するために適切な予防措置を講じること。そのために、開放処理は、他の処理作業を行う区域と分離され、かつ、独立した空気処理ユニットを備えた区域で実施すること。
18.53 通常、異なる精製段階には、同じ装置は使用しない。同じ装置を使用する場合には、当該装
置は、使用の前に、適切に清掃し、消毒すること。前段階からのウイルスのキャリーオーバー(例えば、装置又は環境を通して)のおそれを防止するために適切
な予防措置を講じること。
19 臨床試験に使用する原薬
19.1 一般事項
19.10 開発段階における治験用新規原薬生産については、今まで述べた本ガイドラインの管理手法の全てが適切とはいえない。本章では、治験用原薬に特異的なガイドラインを示す。
19.11 臨床試験用に用いる原薬の製造過程で実施する管理は、当該原薬を配合する製剤の開発段階
と整合性を持たせること。工程についての知見が蓄積され、製剤の試験が前臨床段階から臨床段階に進むに従い、工程及び試験手順は、変更に備えて、柔軟性を
持たせること。開発が臨床試験を目的とする製剤用の製造段階に入った場合、製造業者は、原薬の品質を保証する適切な製造管理手順を用い、適正な設備で製造
していることを保証すること。
19.2 品質
19.20 臨床試験に使用する原薬の製造には、適切なGMPの考え方を適用し、また、各ロットの承認を行う体制を備えること。
19.21 臨床試験に使用する原薬の合否判定をするため、製造部門から独立した品質部門を設置すること。
19.22 通常品質部門において実施される試験の一部は、他の部門において実施する場合がある。
19.23 品質評価として、原料、包装材料、中間体及び原薬を試験する体制を有すること。
19.24 工程及び品質の問題について評価を行うこと。
19.25 臨床試験への使用を目的とする原薬の表示は適切に管理し、治験用であることを明記すること。
19.3 装置及び設備
19.30 臨床試験に使用する原薬を生産する小規模設備又は実験室の使用を含め、臨床開発の全過程を通じて、装置を校正し、清掃し、当該装置が使用目的に適合することを保証する手順を設けること。
19.31 設備使用に係る手順は、汚染及び交叉汚染のリスクを最小限にする方法で原材料等が取り扱われていることを保証するものであること。
19.4 原料の管理
19.40 臨床試験に使用する原薬製造用の原料は、試験により評価判定を行い、又は供給者の分析情報を受け、確認試験を行うこと。原料試験が危険と考えられる場合には、供給者の分析情報で十分である。
19.41 場合によっては、原料の適合性の判定は、分析試験だけでなく、むしろ使用前の小規模実験(即ち、使用試験)により行うことがある。
19.5 製造
19.50 臨床試験に使用する原薬の製造は、実験ノート、ロット記録又はその他の適切な方法で記録すること。これらの記録には、使用した原材料等、装置、処理方法及び科学的な観察記録を含めること。
19.51 期待収量は、実製造段階で設定する期待収量より変動が大きく、決定し難い。収量変動の原因調査は要求されない。
19.6 バリデーション
19.60 臨床試験に使用する原薬の製造に係るプロセスバリデーションは、単一の原薬ロットしか製
造されない場合又は原薬開発中の工程変更によりロットの再現が困難又は不正確である場合には、通常、不適切である。この開発段階における原薬の品質保証
は、管理、校正、及び必要な場合には装置の適格性評価の組み合わせにより行うものである。
19.61 販売用に製造するロットは、当該ロットがパイロットスケール又は小スケールであっても、第12章に従ってプロセスバリデーションを実施すること。
19.7 変更
19.70 開発中においては、知識が蓄積し、製造がスケールアップするに従って、種々の変更が予測される。製造手順、規格又は試験方法に係る全ての変更は適切に記録すること。
19.8 試験室の管理
19.80 臨床試験に使用する原薬のロットを評価するために実施される分析法に対しバリデーションが行われていない場合には、当該分析法は科学的に信頼できるものであること。
19.81 全てのロットの参考品を保管するシステムを有し、申請の承認、中止又は中断後の適切な期間、十分な量の参考品を保管すること。
19.82 第11.6章で規定した使用期限及びリテスト日は、臨床試験に使用する既存の原薬に適用される。新規の原薬については、通常、臨床試験の初期の段階では、第11.6章の規定は適用されない。
19.9 文書化
19.90 臨床試験に使用する原薬の開発及び生産中に得られた情報を文書化し、利用できることを保証する体制を持つこと。
19.91 臨床試験に使用する原薬の出荷判定に用いる分析法の開発及び実施については適切に記録すること。
19.92 製造・管理に係る記録及び文書を保管するためのシステムを有し、申請の承認、中止、又は中断後の適切な期間、当該記録及び文書が保管されることを保証すること。
20 用語集
一次標準品
高い純度の標準物質であることが、一連の広範囲な分析試験によって示された物質。一次標準品は、
(1)公式に認定された入手先から得る場合、(2)特別に合成される場合、(3)既存の高純度の製造品から得られる場合、又は、(4)既存の製造品をさら
に精製することによって得られる場合がある。
逸脱
承認された指示又は設定された基準からの乖離
汚染
製造、検体採取、包装、再包装、保管又は輸送において生じる、原料、中間体又は原薬の中又は表面への化学的又は微生物学的不純物もしくは異物の好ましくない混入。
規格
試験項目、分析手順に関する参照文献及び当該試験の数的限界値、範囲又はその他の基準となる適切な
判定基準のリスト。それにより、原材料等が目的の用途に許容されると判断するために適合すべき基準一式が設定される。「規格適合」とは、原材料等を定めら
れた分析手順に従って試験した時、定められた判定基準に適合することを意味する。
期待収量
事前の実験段階、パイロットスケール又は実生産のデータに基づき、製造の適切な段階において予測される生成物の量、又は当該量の理論収量に対する百分率。
区分保管
後の合格又は不合格判定を待つために、物理的又はその他の有効な方法で分離した物質の状態。
原材料等(原材料、中間体、原薬等)
原料(出発物質、試薬、溶媒)、助剤、中間体、原薬及び包装材料・表示材料を示すのに使用する一般的な用語。
(参考)
原材料等:原材料、中間体、原薬、助剤、ガスケット等。
原材料:原料、資材。
原料:原薬出発物質、試薬、溶媒。
資材:表示材料、包装材料。
原薬(医薬品有効成分)(API)
医薬品の生産に使用することを目的とする物質又は物質の混合物で、医薬品の製造に使用された時に医
薬品の有効成分となるもの。そのような物質は、疾患の診断、治療、緩和、手当又は予防において直接の効果又は薬理活性を示すこと、又は身体の構造及び機能
に影響を与えることを目的としている。
原薬出発物質
原薬の製造に使用され、かつ、それが原薬の構造中の重要な構成部分として組込まれる原料、中間体又
は原薬である。市販品の場合、委託又は販売契約の下で供給者から購入する場合又は自社で製造する場合がある。原薬出発物質は、通常、化学的性質及び構造を
明確にされているものである。
原料
中間体・原薬を製造する目的で使用する、出発物質、試薬及び溶媒を示すのに使用する一般的な用語。
交叉汚染
他の原材料等又は製品による原材料等又は製品の汚染。
校正
特定の計器又は装置が、適切な測定の範囲において、ある対照品又は追跡可能な標準品との比較によって、規定した限界値内の結果を示すことを実証すること。
工程管理
工程内管理の項参照
工程内管理(工程管理)
工程をモニターするため、適切な場合には工程を調整するため、又は、中間体・原薬が規格に適合することを保証するため、製造中に実施するチェック。
コンピュータ化システム
コンピュータ・システムで統合された工程又は作業。
コンピュータ・システム
特定の機能又は一連の機能を実行するために、設計し、組立てられたハードウエア及び関連するソフトウエアのグループ。
再加工
基準又は規格に適合しないものを含め、中間体・原薬を工程に戻し、設定された生産工程の一部である
結晶化段階もしくはその他の適切な化学的又は物理的操作段階(例えば蒸留、濾過、クロマト分離、粉砕等)を繰返すこと。工程内管理試験により反応が不完全
であることが示された場合、その後、当該工程を継続することは、通常の工程の一部と考え、再加工とは考えない。
再処理
基準又は規格に適合しない中間体・原薬について、許容できる品質を得るために、設定された生産工程とは異なる処理段階(例えば、異なる溶媒による再結晶)を行うこと。
重要な
原薬が規格に適合することを保証するために、予め定めた基準内で管理する必要がある工程段階、工程条件、試験要件又はその他の関連パラメータ又は項目であることを意味する。
収量:期待収量、理論収量
期待収量、理論収量の項参照
受託製造業者
オリジナルの製造業者に代わり生産のある部分を行う製造業者
使用期限
原薬の容器・ラベルに記載された日付であって、当該原薬を規定した条件で保管した場合に、当該原薬が規格を維持することが予測される保管期間の長さを示すもの。この使用期限を過ぎた原薬は使用すべきではない。
助剤
中間体・原薬の生産において、それ自体は化学的又は生物的反応に介入しない補助として使用される原材料であって、溶媒以外のもの(例えば、濾過助剤、活性炭等)。
署名
特定の措置又は照査をした者の記録。この記録には、イニシアル、完全な手書き署名、個人の捺印又は本物であることが証明され、保証された電子署名の場合がある。
製剤
市販を目的とした最終の直接包装にはいった投与剤形(参考:ICHQ1Aガイドライン)。
生産
原薬の原材料受入、製造、包装、再包装、表示、再表示、品質管理、出荷、保管・流通及びその他関連する管理
製造
原材料の受入から、一連の工程及び原薬の包装を通じて、原薬の調製に関与する全ての作業。
製造業者
生産に関わる全ての業者。
中間体
原薬の製造段階において製造される物質であって、当該物質が原薬になるまでに、さらなる分子変化又
は精製が行われるもの。中間体は分離される場合もあるし、分離されない場合もある。(注:本ガイドラインは、企業が、原薬製造の開始点として定義する時点
以降の中間体のみを取り扱う。)
適格性評価
装置又は付帯システムが適切に据え付けられ、正しく作動し、実際に期待される結果が得られることを証明し、記録する活動。適格性評価はバリデーションの一部であるが、個々の適格性評価のステップのみではプロセスバリデーションとはならない。
手順
中間体・原薬の生産に関連して直接的又は間接的に実施する作業、払うべき注意、適用すべき対策を文書で記述したもの。
二次標準品
一次標準品と比較することによって設定した品質及び純度を有することが示され、日常の試験室での分析に標準品として使用する物質。
バイオバーデン
原料、原薬出発物質、中間体又は原薬中に存在するおそれのある微生物のレベルとタイプ(例えば、特定微生物又は非特定微生物)。バイオバーデンは、一定のレベルを超えない、又は規定した特定微生物を検出しない限り、汚染と考えない。
バリデーション
特定の工程、方法又はシステムが、一貫して、予め設定した判定基準に適合する結果を与えるという高度の保証を提供する文書によるプログラム。
バリデーション実施計画書
バリデーションの実施方法、判定基準の規定を記述した計画書。例えば、生産工程に関する実施計画書は、使用する設備、重要工程のパラメータ・運転範囲、製品特性、検体採取方法、収集するべき試験データ、バリデーションの回数及び許容すべき試験結果を明確にするものである。
判定基準
試験結果を許容するための数的な限界値、範囲又はその他適切な措置
標準品:一次標準品、二次標準品
一次標準品、二次標準品の項参照
品質管理(QC)
規格に適合していることを確認又は試験すること。
品質部門
品質保証及び品質管理の両責任を果たす、製造から独立した組織部門。品質部門は、組織の規模及び構造によって、別々のQA部門及びQC部門の形態をとる場合もあり、また、単一組織又はグループの形態をとる場合もある。
品質保証(QA)
全ての原薬が目的用途に必要な品質を有し、その品質システムが維持されていることを保証する目的でつくられた組織化した機構の総体。
不純物
中間体・原薬の中に存在し、かつ、その混入が好ましくない全ての成分
不純物プロファイル
原薬の中に存在する同定された及び同定されていない不純物を記述したもの
包装材料
保管及び輸送において中間体・原薬を保護する目的の原材料。
母液
結晶化工程又は分離工程の後に残る残留液。母液には、未反応原料、中間体、一定量の原薬や不純物が含まれている。母液はさらに工程で使用することができる。
溶媒
中間体・原薬の生産において、溶液又は懸濁液調製用の媒体として使用される無機又は有機の液体。
リテスト日
未だ使用可能であることを保証するために、ある物質を再検査すべき日付。
理論収量
実際の製造でいかなるロス又は誤りもない場合に、使用した原材料等の量に基づき、製造の適切な段階で製造される量。
ロット
規定された限度内で均質と予測できる、一つの工程又は一連の工程で製造された原材料等の特定の量。連続製造の場合には、ロットは製造の規定された画分に相当する。ロットサイズは、特定の量又は特定の時間内に製造された量と定義される。バッチともいう。
ロット番号
ロットを識別する数字、文字又は記号の固有の組み合わせで、これにより製造及び流通の履歴が判定できるもの。バッチ番号ともいう。
ICHQ1Aガイドライン
「安定性試験ガイドラインについて」(平成6年4月21日付け薬新薬第30号厚生省薬務局新医薬品課長通知/改正:平成13年5月1日付け医薬審発第565号厚生労働省医薬局審査管理課長通知)
ICHQ5Aガイドライン
「「ヒト又は動物細胞株を用いて製造されるバイオテクノロジー応用医薬品のウイルス安全性評価」について」(平成12年2月22日付け医薬審第329号厚生省医薬安全局審査管理課長通知)
ICHQ5Dガイドライン
「「生物薬品(バイオテクノロジー応用医薬品/生物起源由来医薬品)製造用細胞基剤の由来、調製及び特性解析」について」(平成12年7月14日付け医薬審第873号厚生省医薬安全局審査管理課長通知)
ICHQ6Bガイドライン
「生物薬品(バイオテクノロジー応用医薬品/生物起源由来医薬品)の規格及び試験方法の設定について」(平成13年5月1日付け医薬審発第571号厚生労働省医薬局審査管理課長通知)