○治験薬の製造管理及び品質管理基準及び治験薬の製造施設の構造設備基準(治験薬GMP)について
(平成九年三月三一日)
(各都道府県知事あて厚生省薬務局長通知)
医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(平成九年三月二七日厚生省令第二八号。以下「GCP省
令」という。)第一七条において、「治験依頼者は、治験薬の品質の確保のために必要な構造設備を備え、かつ、適切な製造管理及び品質管理の方法が採られて
いる製造所において製造された治験薬を実施医療機関に交付しなければならない。」とされたところである。これを受けて、治験薬を製造する際に遵守すべき、
適切な製造管理及び品質管理の方法の基準及び必要な構造設備の基準を、別添の「治験薬の製造管理及び品質管理基準」及び「治験薬の製造施設の構造設備基
準」(治験薬GMP)として定めたので、通知する。
ついては、左記事項に御留意のうえ、貴管下関係業者に対し、周知徹底方、御配慮願いたい。
記
一 適用範囲
本基準は、GCP省令第一七条第一項の規定により、治験依頼者が実施すべき事項を定めたものであり、平成九年三月二七日厚生省令第二九号により改正された後の薬事法施行規則第一八条の四の二に定められた医薬品に係る治験に用いる治験薬に適用されること。
二 適用時期
治験薬の製造管理及び品質管理基準は、平成九年四月一日以降に届け出られた計画に係る治験に使用す
る治験薬であって、同日以降製造されるものについて適用するものとする。ただし、GCP省令の施行前に治験の計画書であって同省令第七条第一項(第二号か
ら第四号まで及び第九号から第一三号までを除く。)の規定に適合するものが作成されていた場合における当該治験に用いる治験薬については適用されないもの
とする。
また、治験薬の製造施設の構造設備基準(以下「構造設備基準」という。)は、平成一〇年四月一日以降に届け出られた計画に係る治験に使用する治験薬を、同日以降製造する製造施設について適用するものとする。
なお、本通知後、構造設備基準の適用時期以前に行われる治験薬の製造についても、構造設備基準の遵守事項のうち実施可能なものから順次実施するよう指導されたいこと。
〔別添1〕
治験薬の製造管理及び品質管理基準
第一章 総則
(定義)
第一条 この基準で「被験薬」とは、医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(平成九年三月二七日厚生省令第二八号)第二条第五項に定める被験薬をいう。
2 この基準で「治験薬」とは、医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令第二条第七項に定める治験薬をいう。
3 この基準で「治験薬の品目」とは、一つの承認申請のために行われる治験に使用される治験薬の品目をいう。
4 この基準で「資材」とは、治験薬の容器、被包並びに容器及び被包に貼付するラベルをいう。
5 この基準で「ロット」とは、一の製造期間内に一連の製造工程により均質性を有するように製造され
た治験薬(製造の中間工程で造られたものであって、以後の製造工程を経ることによって治験薬となるものを含む。第三条第一項第三号、第六条第二号ニ及び第
八条第一号イにおいて同じ。)及び原料の一群をいう。
6 この基準で「管理単位」とは、同一性が確認された資材の一群をいう。
7 この基準で「バリデーション」とは、治験薬を製造する施設(以下「治験薬製造施設」という。)の製造設備並びに手順、工程その他の治験薬の製造管理及び品質管理の方法(以下「製造手順等」という。)が期待される結果を与えることを検証し、これを文書とすることをいう。
(治験薬品質管理者、治験薬製造管理責任者及び治験薬品質管理責任者)
第二条 治験依頼者は、治験薬の品目ごとに、当該治験薬の製造及び品質を管理させるために薬剤師、又
は旧制大学、旧専門学校、大学若しくは学校教育法に基づく専門学校において薬学、医学、歯学、獣医学、理学若しくは工学に関する専門の課程を修了し、治験
若しくは治験薬の製造管理及び品質管理について十分な教育訓練を受け、知識経験を有する者(以下「治験薬品質管理者」という。)を置かなければならない。
2 治験依頼者は、治験薬製造施設ごとに、治験薬品質管理者の管理の下に、製造管理に係る部門の責任者として治験薬製造管理責任者を、品質管理に係る部門の責任者として治験薬品質管理責任者を置かなければならない。
3 品質管理に係る部門は、製造管理に係る部門から独立していなければならない。
4 治験薬製造管理責任者は、治験薬品質管理責任者を兼ねてはならない。
(治験薬品質管理者の業務)
第三条 治験薬品質管理者は、次の各号に掲げる業務を行わなければならない。
一 治験薬製造管理責任者及び治験薬品質管理責任者(治験薬が二以上の治験薬製造施設にわたり製造される場合は、すべての治験薬製造施設の治験薬製造管理責任者及び治験薬品質管理責任者)の業務を監督すること。
二 治験薬の製造工程の全部又は一部を他の者(以下「治験薬受託製造者」という。)に委託する場合は、当該受託製造者の治験薬製造施設の製造管理及び品質管理が適切に行われていることを確認すること。
三 製造管理及び品質管理の結果を適正に評価して治験薬の製造施設からの出荷の可否を決定すること。
四 第一一条第一項第二号、第一四条第一項第二号、第一五条第二項第二号及び第一六条第六項第二号の規定により報告を受けた文書により、バリデーション、自己点検及び教育訓練並びに第一六条第六項第一号の確認が適切に行われていることを確認すること。
五 第一二条及び第一三条に規定する業務
2 治験依頼者は、治験薬品質管理者が業務を遂行するに当たって支障を生ずることがないようにしなければならない。
(治験薬製品標準書)
第四条 治験依頼者は、治験薬の品目ごとに、成分、分量、規格及び試験方法、製造手順、治験の概要その他必要な事項について記載した治験薬製品標準書を作成しなければならない。
第二章 治験薬の製造管理
(治験薬製造管理基準書及び治験薬製造衛生管理基準書)
第五条 治験依頼者は、治験薬製造施設ごとに、原料等の保管、製造工程の管理その他必要な事項につい
て記載した治験薬製造管理基準書を作成するとともに、製造作業を行う場所ごとに、構造設備(試験検査に関するものを除く。以下同じ。)の衛生管理、作業員
の衛生管理その他必要な事項について記載した治験薬製造衛生管理基準書を作成しなければならない。
(治験薬製造管理責任者の業務)
第六条 治験薬品質管理者は、治験薬製造管理責任者に、治験薬製品標準書、治験薬製造管理基準書又は治験薬製造衛生管理基準書に基づき、次の各号に掲げる製造管理に係る業務を適切に行わせなければならない。
一 製造工程における指示事項、注意事項その他必要な事項を記載した治験薬製造指図書を作成すること。
二 次に掲げる業務を自ら行い、又は業務の内容に応じてあらかじめ指定した者に行わせること。
イ 治験薬製造指図書に基づき治験薬を製造すること。
ロ 治験薬の製造に関する記録をロットごと(ロットを構成しない治験薬については製造番号ごと。以下同じ。)に作成すること。
ハ 治験薬の表示及び包装についてロットごとにそれが適正である旨を確認し、その記録を作成すること。
ニ 原料及び治験薬についてはロットごとに、資材については管理単位ごとに適正に保管し、及び出納を行い、並びにその記録を作成すること。
ホ 構造設備の清浄を確認し、その記録を作成すること。
ヘ 作業員の衛生管理を行い、その記録を作成すること。
ト 構造設備を定期的に点検整備(計器の校正を含む。)し、その記録を作成すること。
チ その他必要な業務
三 製造、保管及び出納並びに製造衛生管理に関する記録により製造管理が適切に行われていることを確認し、その結果を治験薬品質管理者に対して文書により報告すること。
四 製造、保管及び出納並びに製造衛生管理に関する記録を、被験薬に係る医薬品についての製造若しく
は輸入の承認を受ける日(医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令第二四条第三項の規定により通知したときは、通知した日後三年を経過した日)又は治験
の中止若しくは終了の後三年を経過した日のうちいずれか遅い日までの期間保存すること。
第三章 治験薬の品質管理
(治験薬品質管理基準書)
第七条 治験依頼者は、治験薬製造施設ごとに、検体の採取方法、試験検査結果の判定方法その他必要な事項を記載した治験薬品質管理基準書を作成しなければならない。
(治験薬品質管理責任者の業務)
第八条 治験薬品質管理者は、治験薬品質管理責任者に、治験薬製品標準書又は治験薬品質管理基準書に基づき、次の各号に掲げる品質管理に係る業務を計画的かつ適切に行わせなければならない。
一 次に掲げる業務を自ら行い、又は業務の内容に応じてあらかじめ指定した者に行わせること。
イ 原料及び治験薬についてはロットごとに、資材については管理単位ごとに試験検査を行うのに必要な検体を採取し、その記録を作成すること。
ロ 採取した検体について、ロットごと又は管理単位ごとに試験検査を行い、その記録を作成すること。
ハ 治験薬について、ロットごとに所定の試験に必要な量の二倍以上の量を参考品として、被験薬に係る
医薬品についての製造若しくは輸入の承認を受ける日(医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令第二四条第三項の規定により通知したときは、通知した日後
三年を経過した日)又は治験の中止若しくは終了の後三年を経過した日のうちいずれか遅い日までの期間保存すること。ただし、ロットを構成しない治験薬及び
治験薬の性質上その保存が著しく困難であるものについては、この限りでない。
ニ 試験検査に関する設備及び器具を定期的に点検整備(計器の校正を含む。)し、その記録を作成すること。
ホ その他必要な業務
二 試験検査結果の判定を行い、その結果を治験薬品質管理者及び治験薬製造管理責任者に対して文書により報告すること。
三 試験検査結果に関する記録を作成し、被験薬に係る医薬品についての製造若しくは輸入の承認を受け
る日(医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令第二四条第三項の規定により通知したときは、通知した日後三年を経過した日)又は治験の中止若しくは終了
の後三年を経過した日のうちいずれか遅い日までの期間保存すること。
四 試験検査を他の試験検査設備又は試験検査機関(以下「外部試験検査機関等」という。)を利用して実施する場合には、次の記録を作成すること。
イ 当該試験検査機関等の名称
ロ 当該試験検査機関等を利用する試験検査の範囲
ハ 当該試験検査機関等を利用する期間
ニ 当該試験検査機関等の選定の理由
(外部試験検査機関等の利用)
第九条 治験依頼者は、外部試験検査機関等を利用する場合には、治験薬品質管理責任者が、外部試験検査機関等で試験検査が適切に実施されることを確認できるように、当該外部試験検査機関等との間で、次に掲げる事項を取り決めておかなければならない。
一 外部試験検査機関等を利用する試験検査の範囲
二 外部試験検査機関等を利用する試験検査に関する技術的条件
三 外部試験検査機関等で適正に試験検査が実施されていることの治験依頼者による適切な確認
四 検体の運搬及び受渡し時における信頼性確保の方法
五 その他、外部試験検査機関等での試験検査の信頼性を確保するために必要な事項
2 治験依頼者は、あらかじめ指定した者に、次の各号に掲げる業務を行わせなければならない。
一 前項第三号に規定する確認を行うこと。
二 前号の確認の結果を治験薬品質管理責任者に対して文書により報告すること。
三 第一号の確認の結果の記録を作成し、被験薬に係る医薬品についての製造若しくは輸入の承認を受け
る日(医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令第二四条第三項の規定により通知したときは、通知した日後三年を経過した日)又は治験の中止若しくは終了
の後三年を経過した日のうちいずれか遅い日までの期間保存すること。
第四章 その他の製造管理及び品質管理に関する業務
(バリデーション等の手順に関する文書)
第一〇条 治験依頼者は、次条から第一五条までに規定する業務を適切に行うため、バリデーション、苦情処理、回収処理、自己点検及び教育訓練の手順に関する文書(以下「手順に関する文書」という。)を作成しなければならない。
(バリデーション)
第一一条 治験依頼者は、あらかじめ指定した者に、手順に関する文書に基づき、次の各号に掲げる業務を行わせなければならない。
一 製造管理及び品質管理を適切に行うために必要と認められる、治験薬開発段階の目的に応じたバリデーションを行うこと。
二 バリデーションの結果を当該治験薬の治験薬品質管理者に対して文書により報告すること。
三 バリデーションにより作成された文書を、被験薬に係る医薬品についての製造若しくは輸入の承認を
受ける日(医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令第二四条第三項の規定により通知したときは、通知した日後三年を経過した日)又は治験の中止若しくは
終了の後三年を経過した日のうちいずれか遅い日までの期間保存すること。
2 治験依頼者は、前項第一号のバリデーションの結果に基づき、製造管理又は品質管理に関し改善が必
要な場合には、所要の措置を講じるとともに、当該措置の記録を作成し、被験薬に係る医薬品についての製造若しくは輸入の承認を受ける日(医薬品の臨床試験
の実施の基準に関する省令第二四条第三項の規定により通知したときは、通知した日後三年を経過した日)又は治験の中止若しくは終了の後三年を経過した日の
うちいずれか遅い日までの期間保存すること。
(苦情処理)
第一二条 治験依頼者は、治験薬の品質等に関して苦情があったときは、その苦情に係る事項が当該治験薬製造施設に起因するものでないことが明らかな場合を除き、治験薬品質管理者に、手順に関する文書に基づき、次の各号に掲げる業務を行わせなければならない。
一 苦情に係る事項の原因を究明し、製造管理又は品質管理に関し改善が必要な場合には、所要の措置を講じること。
二 苦情の内容、原因究明の結果及び改善措置を記載した苦情処理記録を作成し、被験薬に係る医薬品に
ついての製造若しくは輸入の承認を受ける日(医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令第二四条第三項の規定により通知したときは、通知した日後三年を経
過した日)又は治験の中止若しくは終了の後三年を経過した日のうちいずれか遅い日までの期間保存すること。
(回収処理)
第一三条 治験依頼者は、治験薬の品質等に関する理由により回収を行うときは、その回収に至った理由が当該治験薬製造施設に起因するものでないことが明らかな場合を除き、治験薬品質管理者に、手順に関する文書に基づき、次の各号に掲げる業務を行わせなければならない。
一 回収に至った原因を究明し、製造管理又は品質管理に関し改善が必要な場合には、所要の措置を講じること。
二 回収した治験薬を区分して一定期間保管した後、適切に処理すること。
三 回収の内容、原因究明の結果及び改善措置を記載した回収処理記録を作成し、被験薬に係る医薬品に
ついての製造若しくは輸入の承認を受ける日(医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令第二四条第三項の規定により通知したときは、通知した日後三年を経
過した日)又は治験の中止若しくは終了の後三年を経過した日のうちいずれか遅い日までの期間保存すること。
(自己点検)
第一四条 治験依頼者は、あらかじめ指定した者に、手順に関する文書に基づき、次の各号に掲げる業務を行わせなければならない。
一 当該製造施設における治験薬の製造管理及び品質管理について適切な自己点検を行うこと。
二 自己点検の結果を治験薬品質管理者に対して文書により報告すること。
三 自己点検の結果の記録を作成し、自己点検を実施した日から五年間保存すること。
2 治験依頼者は、前項第一号の自己点検の結果に基づき、製造管理又は品質管理に関し改善が必要な場合には、所要の措置を講じるとともに、当該措置の記録を作成し、措置を講じた日から五年間保存すること。
(教育訓練)
第一五条 製造に従事する作業員は、治験薬の製造に関する教育訓練を受けた者、又は治験薬の製造に関する十分な経験を有する者でなければならない。
2 治験依頼者は、あらかじめ指定した者に、手順に関する文書に基づき、次の各号に掲げる業務を行わせなければならない。
一 作業員に対して、製造管理及び品質管理に関する教育訓練を計画的に実施すること。
二 教育訓練の実施状況を治験薬品質管理者に対して文書により報告すること。
三 教育訓練の実施の記録を作成し、教育訓練を実施した日から五年間保存すること。
第五章 委託製造
(委託製造)
第一六条 治験薬の製造工程の全部又は一部を治験薬受託製造者の治験薬製造施設で行わせる治験依頼者は、当該治験薬受託製造者と、当該製造工程における製造管理及び品質管理の適切な実施を確保するため、次に掲げる事項を取り決めなければならない。
一 当該委託の範囲
二 当該委託製造に関する技術的条件
三 治験薬受託製造者の治験薬製造施設において当該委託製造が適切に行われていることの治験依頼者による適切な確認
四 治験依頼者が当該委託製造に関し行い得る治験薬受託製造者に対する指示
五 治験依頼者が当該委託製造の製造管理又は品質管理に関し改善の必要を認め、所要の措置を講じるよう前号の指示を行った場合における当該措置が講じられたことの確認
六 運搬及び受け渡し時における品質管理の方法
七 その他当該委託製造の製造管理及び品質管理の適切な実施を確保するために必要な事項
2 治験薬受託製造者には、この基準の第二条から第一五条までを適用する。ただし、「治験依頼者」を「治験薬受託製造者」と読みかえる。
3 治験依頼者及び治験薬受託製造者は、第一項の取決め事項を治験薬製品標準書、治験薬製造管理基準
書、治験薬製造衛生管理基準書、治験薬品質管理基準書又は手順に関する文書に記載しなければならない。ただし、この場合において、これらの文書について
は、第四条、第五条、第七条及び第一〇条の規定にかかわらず、治験依頼者又は治験薬受託製造者が自ら行う製造工程に係る事項のみを記載することをもって足
りるものとする。
4 治験依頼者が行う第一項第四号に規定する指示は、文書により行わなければならない。
5 治験薬受託製造者は、治験薬受託製造者の治験薬品質管理者が当該委託製造に係る製造管理及び品質管理の結果を適正に評価して出荷した旨を治験依頼者に対して文書により報告しなければならない。
6 治験依頼者は、あらかじめ指定した者に、次の各号に掲げる業務を行わせなければならない。
一 第一項第三号及び第五号に規定する確認を行うこと。
二 前号の確認の結果を治験依頼者の治験薬品質管理者に対して文書により報告すること。
三 第一号の確認の結果の記録を作成し、被験薬に係る医薬品についての製造若しくは輸入の承認を受け
る日(医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令第二四条第三項の規定により通知したときは、通知した日後三年を経過した日)又は治験の中止若しくは終了
の後三年を経過した日のうちいずれか遅い日までの期間保存すること。
〔別添2〕
治験薬の製造施設の構造設備基準
(治験原薬以外の治験薬の製造施設の構造設備)
第一条 治験薬の製造の用に供されることが目的とされる原薬(以下「治験原薬」という。)以外の治験薬の製造施設の構造設備の基準は次のとおりとする。
一 当該製造施設の治験薬(製造の中間工程で造られたものであって、以降の製造工程を経ることによって治験薬となるもの(以下「中間製品」という。)を含む。以下同じ。)を製造するのに必要な設備及び器具を備えていること。
二 円滑かつ適切な作業を行うのに支障のないよう配置されており、かつ、清掃及び保守が容易なものであること。
三 作業所は、次に定めるところに適合するものであること。
イ 採光、照明及び換気が適切であり、かつ清潔であること。
ロ 常時居住する場所及び不潔な場所から明確に区別されていること。
ハ 作業を行うのに支障のない面積を有すること。
ニ 防じん、防虫及び防そのための設備を有すること。
ホ 廃水及び廃棄物の処理に要する設備又は器具を備えていること。
ヘ 作業員の消毒のための設備を有すること。
ト 製造品目により有毒ガスを発生する場合には、その処理に要する設備を有すること。
チ 作業所のうち作業室は、製造する治験薬の種類、剤型及び製造工程に応じ、じんあい又は微生物による汚染を防止するのに必要な構造及び設備を有すること。
リ 飛散しやすく、微量で過敏症反応を示す治験薬又は交叉汚染することにより他の治験薬に重大な影響を及ぼすおそれのある治験薬をその他の治験薬と同時に製造する場合には、それぞれの作業室を分離し、かつ、空気処理システムを別系統にすること。
ヌ 手洗設備、便所及び更衣室を有すること。
ル 作業所のうち、原料の秤量作業、治験薬の調整作業、充てん作業又は閉そく作業を行う作業室は、次に定めるところに適合するものであること。
(1) 作業室内に備える作業台は、作業を円滑かつ適切に行うのに支障のないものであること。
(2) 当該作業室の作業員以外の者の通路とならないように造られていること。ただし、当該作業室の作業員以外の者による治験薬への汚染のおそれがない場合は、この限りでない。
(3) 屋外に直接面する出入口(非常口を除く。)がないこと。
(4) 出入口及び窓は、閉鎖することができるものであること。
(5) 室内の排水設備は、作業室の汚染を防止するために必要な構造であること。
四 原料、資材及び治験薬を区分して、衛生的かつ安全に貯蔵するために必要な設備を有すること。
五 治験薬の種類に応じ、その製造に必要な質及び量の水(設備及び器具並びに容器の洗浄水を含む。以
下同じ。)を供給する設備を有すること。ただし、治験薬の製造工程に供する蒸留水等を購入して用いる場合等であって、適切な製造を行うのに支障がないと認
められるときは、この限りでない。
六 原料、資材及び治験薬の試験検査に必要な設備及び器具を備えていること。ただし、他の試験検査設備又は試験検査機関を利用して自己の責任において当該試験検査を行う場合であって、適切な試験検査を行うのに支障がないと認められるときは、この限りでない。
(治験原薬の製造施設の構造設備)
第二条 治験原薬の製造施設の構造設備の基準は、次のとおりとする。
一 当該製造施設の治験原薬(製造の中間工程で造られたものであって、以降の製造工程を経ることによって治験原薬となるものを含む。以下同じ。)を製造するのに必要な設備及び器具を備えていること。
二 円滑かつ適切な作業を行うのに支障のないよう配置されており、かつ、清掃及び保守が容易なものであること。
三 手洗設備、便所及び更衣室を有すること。
四 作業所は、次に定めるところに適合するものであること。ただし、ニ及びヘについては、最終の精製を行う前の製造工程を行う作業所であって、当該製造工程の製造設備が密閉構造である場合には、この限りでない。
イ 採光、照明及び換気が適切であり、かつ、清潔であること。
ロ 常時居住する場所及び不潔な場所から明確に区別されていること。
ハ 作業を行うのに支障のない面積を有すること。
ニ 防じん、防虫及び防そのための設備を有すること。
ホ 廃水及び廃棄物の処理に要する設備又は器具を備えていること。
ヘ 作業員の消毒のための設備を有すること。
ト 製造品目により有毒ガスを発生する場合には、その処理に要する設備を有すること。
チ 中間工程において、微量で過敏症反応を示す物質又は交叉汚染することにより他の治験原薬に重大な影響を及ぼすおそれのある物質が生成される治験原薬の製造設備は、当該物質による他の治験原薬の汚染を防止する機能を有すること。
五 最終の精製以後の製造工程を行う作業所は、前号イからチまでに掲げるもののほか、次に定めるところに適合するものであること。
イ 作業所のうち作業室は、製造する治験原薬の種類、物性及び製造工程に応じ、じんあい又は微生物による汚染を防止するのに必要な構造及び設備を有すること。ただし、製造設備等の有する機能によりこれと同等の効果を得られる場合は、この限りでない。
ロ 飛散しやすく、微量で過敏症反応を示す治験原薬又は交叉汚染することにより他の治験原薬に重大な影響を及ぼすおそれのある治験原薬をその他の治験原薬と同時に製造する場合には、それぞれの作業室を分離し、かつ、空気処理システムを別系統にすること。
ハ 作業所のうち、最終の精製を経た治験原薬の中間製品を容器へ充てん及び閉そくするまでの作業を行う作業室は、次に定めるところに適合するものであること。
(1) 作業室内に備える作業台は、作業を円滑かつ適切に行うのに支障のないものであること。
(2) 当該作業室の作業員以外の者の通路とならないように造られていること。ただし、当該作業室の作業員以外の者による治験原薬への汚染のおそれがない場合は、この限りでない。
(3) 屋外に直接面する出入口(非常口を除く。)がないこと。ただし、屋外からの汚染を防止するのに必要な構造及び設備を有している場合は、この限りでない。
(4) 出入口及び窓は、閉鎖することができるものであること。
(5) 室内の排水設備は、作業室の汚染を防止するために必要な構造であること。
六 原料、資材及び治験原薬を区分して、衛生的かつ安全に貯蔵するために必要な設備を有すること。
七 治験原薬の種類に応じ、その製造に必要な質及び量の水を供給する設備を有すること。ただし、治験原薬の製造工程に供する蒸留水等を購入して用いる場合等であって、適切な製造を行うのに支障がないと認められるときは、この限りでない。
八 原料、資材及び治験原薬の試験検査に必要な設備及び器具を備えていること。ただし、他の試験検査設備又は試験検査機関を利用して自己の責任において当該試験検査を行う場合であって、適切な試験検査を行うのに支障がないと認められるときは、この限りでない。
(治験無菌製剤の製造施設の構造設備)
第三条 治験無菌製剤(治験注射剤(ロットを構成しない治験血液製剤を除く。)、治験点眼剤、治験眼軟膏剤、治験生物学的製剤及び治験に使用する注射用水)の製造施設の構造設備の基準は、第一条に定めるもののほか、次のとおりとする。
一 作業所は、次に定めるところに適合するものであること。
イ 作業所のうち作業室又は作業管理区域(作業室及び廊下等から構成されていて、全体が同程度に清浄
の維持ができるように管理される区域をいう。以下同じ。)は、製造する治験無菌製剤の種類、剤型及び製造工程に応じ、適切な温度、湿度及び清浄を維持でき
る構造及び設備を有すること。
ロ 原料の秤量作業又は容器の洗浄作業を行う作業室は、防じんのため、密閉構造であること。
ハ 洗浄後の容器の乾燥作業又は滅菌作業を行う作業室は専用であること。ただし、洗浄後の容器が汚染されるおそれがない場合は、この限りでない。
ニ 薬剤の調整作業、充填作業又は閉そく作業を行う作業室又は作業管理区域は、次に定めるところに適合するものであること。
(1) 他の治験薬(治験無菌製剤及び治験無菌原薬(無菌である治験原薬(中間製品を除く。)をいう。以下同じ。)を除く。)の作業所と区別されていること。ただし、治験無菌製剤が汚染されるおそれがない場合は、この限りでない。
(2) 天井、壁及び床の表面は、消毒液等による噴霧洗浄に耐えるものであること。
(3) 設備及び器具は、滅菌又は消毒が可能なものであること。
(4) 調整作業を行う作業室及び充てん作業又は閉そく作業を行う作業室は、それぞれ専用であるこ
と。ただし、調整及び充てん作業又は調整、充てん及び閉そく作業が閉鎖式設備によって一貫して行われる場合には、それぞれの作業が同一作業室で行われても
差し支えない。また、治験注射剤以外の治験無菌製剤にあっては、充てん作業又は閉そく作業が閉鎖式設備によって行われる場合には、それぞれの作業が調整作
業と同一作業室で行われても差し支えない。
(5) 治験注射剤とその他の治験無菌製剤を同一作業室で製造する場合には、治験注射剤の製造設備は、専用かつ閉鎖式であること。
ホ ニの作業を行う作業員の専用の更衣室を有すること。ただし、治験生物学的製剤を製造する作業所においては、この限りでない。
二 作業所には、次に掲げる設備を有すること。
イ 洗浄後の容器の乾燥、滅菌及び保管に必要な設備
ロ 薬剤の調整に必要な設備。この設備のうち開放式のろ過装置はおおいを、閉鎖式のろ過装置は補充される空気の浄化装置をそれぞれ備えたものであること。
ハ 薬剤の充てん設備
ニ 容器の閉そく設備
ホ 剤型が液体である治験注射剤の場合には、原液の容器に補充される空気の浄化装置
ヘ 治験注射剤の容器に補充される空気の浄化装置
三 治験無菌製剤の種類に応じ、その製造に必要な滅菌装置を備えていること。
四 治験無菌製剤の種類に応じ、その製造に必要な質及び量の蒸留水等を製造する設備を屋内に備えてい
ること。ただし、密閉構造の設備である場合には、屋内に備えることは要しない。また、治験薬の製造工程に供する蒸留水等を購入して用いる場合等であって、
適切な製造を行うのに支障がないと認められるときは、この限りでない。
五 製造に必要な蒸留水等を供給するパイプ等の設備は、異物又は微生物による蒸留水等の汚染を防止するために必要な構造であること。
六 次に掲げる試験検査の設備及び器具を備えていること。ただし、他の試験検査設備又は試験検査機関を利用して自己の責任において当該試験検査を行う場合であって、適切な試験検査を行うのに支障がないと認められるときは、この限りでない。
イ 密封状態検査を行う必要がある場合には、密封状態検査の設備及び器具
ロ 異物検査の設備及び器具
ハ 原料、資材及び治験薬の理化学試験の設備及び器具
ニ 無菌試験の設備及び器具
ホ 発熱性物質試験を行う必要がある場合には、発熱性物質試験の設備及び器具
ヘ 生物学的試験を行う必要がある場合には、生物学的試験の設備及び器具
(治験無菌原薬の製造施設の構造設備)
第四条 治験無菌原薬の製造施設の構造設備の基準は、第二条に定めるもののほか、次のとおりとする。
一 作業所は、次に定めるところに適合するものであること。
イ 作業所のうち作業室又は作業管理区域は、製造する治験無菌原薬の種類、物性及び製造工程に応じ、適切な温度、湿度及び清浄を維持できる構造及び設備を有すること。
ロ 容器(滅菌のために行う調整作業以後の作業において用いるものに限る。以下この条において同じ。)の洗浄作業を行う作業室は、防じんのため、密閉構造であること。
ハ 洗浄後の容器の乾燥作業又は滅菌作業を行う作業室は専用であること。ただし、洗浄後の容器が汚染されるおそれがない場合は、この限りでない。
ニ 滅菌のために行う調整作業以後の作業(表示及び包装作業を除く。)の作業室は、次に定めるところに適合するものであること。
(1) 他の治験薬及び治験原薬(治験無菌製剤及び治験無菌原薬を除く。)の作業所と区別されていること。ただし、治験無菌原薬が汚染されるおそれがない場合は、この限りでない。
(2) 天井、壁及び床の表面は、消毒液等による噴霧洗浄に耐えるものであること。
(3) 設備及び器具は、滅菌又は消毒が可能なものであること。
ホ ニの作業を行う作業員の専用の更衣室を有すること。
二 作業所には、次に掲げる設備又は器具を有すること。
イ 洗浄後の容器の乾燥、滅菌及び保管に必要な設備
ロ 滅菌のために行う調整に必要な設備
ハ 治験無菌原薬の充てん設備又は器具
ニ 容器の閉そく設備又は器具
三 治験無菌原薬の種類に応じ、その製造に必要な滅菌装置を備えていること。
四 治験無菌原薬の種類に応じ、その製造に必要な質及び量の蒸留水等を製造する設備を屋内に備えてい
ること。ただし、密閉構造の設備である場合には、屋内に備えることは要しない。また、治験無菌原薬の製造工程に供する蒸留水等を購入して用いる場合等で
あって、適切な製造を行うのに支障がないと認められるときは、この限りでない。
五 製造に必要な蒸留水等を供給するパイプ等の設備は、異物又は微生物による蒸留水等の汚染を防止するために必要な構造であること。
六 次に掲げる試験検査の設備及び器具を備えていること。ただし、他の試験検査設備又は試験検査機関を利用して自己の責任において当該試験検査を行う場合であって、適切な試験検査を行うのに支障がないと認められるときは、この限りでない。
イ 密封状態検査を行う必要がある場合には、密封状態検査の設備及び器具
ロ 異物検査の設備及び器具
ハ 原料、資材及び治験無菌原薬の理化学試験の設備及び器具
ニ 無菌試験の設備及び器具
ホ 発熱性物質試験を行う必要がある場合には、発熱性物質試験の設備及び器具
ヘ 生物学的試験を行う必要がある場合には、生物学的試験の設備及び器具
(治験生物学的製剤の製造施設の構造設備)
第五条 治験生物学的製剤の製造施設の構造設備の基準は、第一条及び第三条に定めるもののほか、次のとおりとする。
一 治験生物学的製剤の作業所には、次に掲げる設備を有すること。ただし、治験生物学的製剤の種類、製造方法等により、当該製剤の製造に必要がないと認められる設備を除く。
イ 微生物の貯蔵設備
ロ 製造又は試験に使用する動物で微生物接種後のものを管理する設備
ハ 製造又は試験に使用する動物を処理する設備
ニ 微生物を培地等に移植する設備
ホ 微生物を培養する設備
ヘ 培養した微生物の採取、不括化、殺菌等を行う設備
ト 原液の希釈用液を調整する設備
チ 原液の希釈、分注及び容器の閉そくを行う設備
リ 製造又は試験に使用した器具機械等について消毒を行う設備
二 前号に掲げる設備は、他から明確に区別された室に備えられており、かつ、当該設備が同号イ、ロ、
ニ、ホ又はリに掲げるもので痘そう病原体、急性白髄炎病原体、有芽胞病原菌又は結核菌を取り扱うためのものであるときは、その設備を有する室は、治験生物
学的製剤の種類ごとに専用であって、他から確実に隔離されたものであること。
三 第一号ロからニまで及びヘからチまでに掲げる設備を有する室の天井、壁及び床の表面は、洗浄及び消毒を行うことができる構造のものであること。
四 第一号ニ及びヘからチまでに掲げる設備を有する室並びに原料、資材及び治験生物学的製剤の試験検査に必要な設備のうち無菌試験を行う設備を有する室は、次に定めるところに適合するものであること。
イ 無菌室であること。ただし、当該作業室内に無菌箱を備えている場合であって、治験生物学的製剤の種類、製造方法等により当該無菌箱内で無菌的操作を行うことができるときは、この限りでない。
ロ イの無菌室には、専用の前室を附置し、通常当該前室を通じてのみ作業室内に出入りできるような構造のものとし、かつ、その前室の出入口は、屋外に直接面していないこと。
五 第一号に掲げるもののほか、次に掲げる設備を有すること。
イ 製造又は試験に使用する動物の飼育及び管理に必要な設備
ロ 培地及びその希釈用液を調整する設備
ハ 製造又は試験に使用する器具機械、容器等についてあらかじめ洗浄及び滅菌を行う設備
ニ 動物の死体その他の汚物の焼却及び汚水の浄化を行う設備
ホ 作業員の専用の更衣室及び浴場
六 貯蔵設備は、恒温装置、自記温度計その他必要な計器を備えたものであること。
(ロットを構成しない治験血液製剤の製造施設の構造設備)
第六条 ロットを構成しない治験血液製剤の製造施設の構造設備の基準は、第一条に定めるもののほか、次のとおりとする。
一 作業所は、次に定めるところに適合するものであること。
イ 作業所のうち、血液成分の分離及び混合、薬液の注入及び排出並びに容器の閉そく作業を行う作業室は、治験血液製剤以外の治験薬の作業室と区別されていること。
ロ 作業室のうち、イの作業を開放式操作によって行う作業室は、次に定めるところに適合するものであること。
(1) 作業室は専用であること。
(2) 天井及び壁の表面は、消毒液等による噴霧洗浄に耐えるものであること。
(3) 作業室は無菌室であること。ただし、当該作業室内に無菌箱を備えているときは、この限りでない。
二 作業室には、次に掲げる設備を有すること。
イ 第一号イの作業を行うための設備。ただし、治験血液製剤の種類、製造方法等により、当該製剤の製造に必要がないと認められるときは、この限りでない。
ロ 無菌室で作業を行う作業員の専用の更衣設備
三 治験血液製剤の種類に応じ、その製造に必要な滅菌装置を備えていること。
四 次に掲げる試験検査の設備及び器具を備えていること。ただし、他の試験検査設備又は試験検査機関を利用して自己の責任において当該試験検査を行う場合であって、適切な試験検査を行うのに支障がないと認められるときは、この限りでない。
イ 異物検査の設備及び器具
ロ 原料、資材及び治験血液製剤の理化学試験の設備及び器具
ハ 無菌試験の設備及び器具
ニ 発熱性物質試験を行う必要がある場合は、発熱性物質試験の設備及び器具