○コンピュータ使用医薬品等製造所  査察マニュアルについて 平成5年1月11日 薬監第3号      改正 平成6年3月31日薬発第333号     厚生省薬務局監視指導課長から各都道府県衛     生主管部(局)長宛  コンピュータ使用医薬品等製造所における医薬品又は 医薬品の製造原料の製造管理及び品質管理については、 医薬品の製造管理及び品質管理規則(平成6年厚生省令 第3号)により実施してきたところであるが、今般、コ ンプピュータ使用医薬品等製造所に対する監視指導の充実 及びより統一的な実施を図るために「コンピュータ使用 医薬品等製造所適正管理ガイドライン」(平成4年2月2 1日薬監第11号)を平成5年4月1日より実施するこ とに伴い、コンピュータ使用医薬品等製造所適正管理ガ イドラインの細則として、別添のとおり「コンピュータ 使用医薬品等製造所査察マニュアル」を定めたので、御 了知のうえ、貴管下関係製造業者に対する指導に遺憾な きを期せられたい。   (2)運用管理手順書の作成   (3)システムの変更  8 ハードウェアの操作  9 保守点検管理の実施  10  事故発生時の対応  11  セキュリティ管理の実施  12  自己点検の実施  13  文書及び記録の保存管理 W  査察報告書様式 T 基本的考え方 1  目  的   この査察マニーアルは、「コンピュータ使用医薬品等製造所適正管理ガイドライン」(平成4年2月21日薬監第  11号、以下「ガイドライン」という。)の全部又は一部が適用される医薬品等製造所について、監視指導項目、監  視指導方法を定め、ガイドラインに係る監視指導の統一的運用とその効率的な実施を図るためのものである。 2 査察方針 (1)医薬品等製造業者に、コンビ一一夕を使用する工程等の管理に関して、従来のGMP管理に加えてコンピュー   タシステムの適切な開発と運用が、医薬品等の品質を確保するために極めて重要であることを認識させたうえで、   医薬品及び原薬GMPの適切な運用を図るものとする。 (2)ガイドラインに係る監視指導は、GMP監視指導の際等に実施するものとする。    また、ガイドラインの適用されるシステムが導入されたとの情報を得た場合には、当該システムの使用開始後   できるだけ早い時期にガイドラインに係る監視指導を実施するものとする。 (3)ガイドラインの「第3 開発業務」の適用される事業所について、初回査察時に当該業務に係る査察を実施す   るものとし、2回目以降はシステムに変更がない限り、「第3 開発業務」に係る査察は、原則として省略して差   し支えないものとする。 (4)「第3 開発業務」以外の部分に係る査察は、原則としてGMP監視指導の際等に定期的に実施するものとす   る。 (5)他の都道府県にコンピュータシステムがまたがる場合には、当該製造業者における管理の状況を調査し、シス   テムが適切に使用されていることを関係文書等から確認すること。また、必要に応じて、都道府県間で十分連絡   を取り合い確認すること。 3 査察対象   本マニュアルは、医薬品GMPと、原薬GMPの適用される製造所又は作業所、同製造所又は作業所を有する製  造業者及びその他の関係部門のうち、ガイドラインの適用される事業所(ガイドラインの第2適用の範囲を参照の  こと。)を対象に実施するものとする。 4 査察方法 (1)査察は、原則として本マニュアルのU及びVに規定された手順に従って行うものとするが、システムの規模、   使用目的等から判断して適切な手順を査察実施者が、自ら定めて実施して差し支えない。 (2)査察は、主として、文書及び記録の査察と実地調査から構成されるが、まず、査察に先立ち、開発の目的、経   過、システムの全体構成等の概略を把握したうえで、項目別に査察を行うものとする。 5 査察結果の評価   ガイドラインの項目に基づき、当該製造所等で使用されるコンビ一一夕が医薬品等の品質を確保するために、適  切に開発及び運用されているか否かを薬事監視員が総合的に評価するものとする。 6 査察報告書及び台帳の作成(別紙) (1)本マニュアルに基づく監視指導を実施した薬事監視員は、GMP監視指導結果報告書に加えて、本マニュアル   に関する事項に関しては別紙報告書をまとめる。    都道府県薬務主管課は、当該報告書(別紙報告書を含む)を当該製造所に係る管理記録として適当な期間保存   するものとする。    なお、GMP監視指導結果報告書等については、各様式を満たす場合には、各都道府県独自の様式により作成   しても差し支えない。 (2)都道府県薬務主管課は、本マニュアルに関する事項について、医薬品GMP監視指導要領の様式2に基づく台   帳を作成し、当該製造所の実態が常に把握できるようにしておくものとする。    なお、GMP監視指導台帳等については、各都道府県独自の様式により作成しても差し支えない。 7 査察実施後の措置及び指導 (1)査察の結果、ガイドラインに適合しない部分がある場合には、改善について、その場で口頭により、また必要   に応じて文書により、医薬品製造業者に伝えるものとする。    なお、指導内容については、台帳に記録しておくこと。 (2)査察の結果がガイドラインに適合せず、かつ、それによりGMPに不適合な事項が生じている場合には、医薬   品GMP監視指導要領に従って措置すること。 U  全般的査察事項 1 査察対象(ガイドラインの適用の有無) ☆1 査察先で使用するコンピュータシステムは、ガイドラインの適用を受けるか。    (システムの開発時期、導入時期及び機能の概要を調べたうえで判定する。) [留意事項] @ ガイドラインの適用対象となるシステムであるかどうか確認する。   確認は、次の手順を例として行うとよい。  (a)当該システムが、ガイドラインの適用の範囲に規定されているシステムであるか。    ・適用の範囲については後述のAを参照する。  (b)平成5年4月1日以後に開発又は変更が行われているか。    開発時期を調査し、施行日以後の開発又は変更であれば開発業務及び運用管理業務を査察する。    ・施行日時点で開発済み又は開発中(開発計画書の作成以降をいう。)のシステムについては、運用管理段階    を査察する。 A ガイドラインにおいて、「適用の範囲」は次のとおり規定されている。 第2 適用の範囲   このガイドラインは、医薬品GMP等が適用される製造所のうち、次のいずれかに該当するシステム  を使用する製造所に適用する。ただし、使用目的が限定され、そのためのプログラムがハードウェア(コ ンピュータにより制御される機器及び設備を含む。以下同じ。)の提供業者によって汎用機能として固定 され、パラメーターを設定することによって機能が実現されるシステムを除くものとする。 (1)製造工程を制御又は管理するためのシステム及びその管理データを保存管理するためのシステム (2)原料及び製品(製造の中間工程で造られるものを含む。以下同じ。)の保管、出納等の生産管理をす   るためのシステム (3)製造指図書、試験検査実施計画書又は記録書類を作成するためのシステム (4)品質管理のためのシステム及びその管理データを保存管理するためのシステム B ガイドラインの「適用の範囲」に示す(1)〜(4)に該当するシステムの具体事例を示す。  (a)「(1)製造工程を制御又は管理するためのシステム及びその管理データを保存管理するためのシステム」と    は、以下のようなものをいう。    例えば、    ・製剤工場における造粒機・打錠機・コーティング機など、又は原薬工場における反応器・蒸留塔などにつ     いて、それを制御するシステムが挙げられる。  (b)「(2)原料及び製品(製造の中間工程で造られるものを含む。)の保管、出納等の生産管理をするためのシス    テム」とは、以下のようなものをいう。    例えば、    ・自動倉庫において、原料、製品、中間製品などの出し入れの制御を行うシステム    ・在庫品の管理などを行うシステム    ・原料及び製品(製造の中間工程で造られるものを含む。)の保管、出納に関する記録書類を作成するシステ     ム    ・無人搬送車を含む自動搬送システム等    が挙げられる。  (c)「(3)製造指図書、試験検査実施計画書又は記録書類を作成するためのシステム」とは、以下のようなもの    をいう。    例えば、    ・上位コンピュータから通信回線等により、製造指図の内容又は、試験検査実施計画の内容を受信して製造     指図書又は試験検査実施計画書を作成するシステム    ・製剤機械又は原薬製造装置からデータを受信して、製造に関する記録書類を作成するシステム    ・試験検査設備からデータを受信して、試験検査に関する記録書類を作成するシステム等    が挙げられる。  (d)「(4)品質管理のためのシステム及びその管理データを保存管理するためのシステム」とは、以下のような   ものをいう。   例えば、   ・製造管理部門又は品質管理部門において使用する試験検査設備(ガスクロマトグラフ、HPLC等)から    のデータを受信して製品、中間製品、原料及び資材の品質確認(規格値との検証)等を行うシステム   ・製造管理部門又は品質管理部門において使用する試験検査設備からのデータを受信してこれらのデータの    収集、保管を行うシステム等   が挙げられる。 C ガイドライン中「使用目的が限定され、そのためのプログラムがハードウェア(コンピュータにより制御さ  れる機器及び設備を含む。以下同じ。)の提供業者によって汎用機能として固定され、パラメータを設定するこ  とによって機能が実現されるシステム」を以下に示す。  (1)当初より、コンピュータが製造機器に組み込まれており、製造機器としての試験が行われ、製造機器とし    ての管理が別途行われているもの。(打錠機、滅菌機、凍結乾燥機等)  (2)市販のソフトウェアとして使用実績等から確認されていると考えられるもの(ワードプロセッサのプログ    ラム等) D ガイドラインの「適用の範囲」のただし書きの部分について、適用、非適用の具体例を以下に示す。   (例1) 単独で使用(使用目的限定)し、汎用性の    あるシステム                                    :非適用   (例2) 単独で使用(使用目的限定)し、自社開発    のプログラム又は汎用プログラムに修正を加えたプ    ログラムを使用するシステム                             :適用   (例3) 汎用プログラムを持ち、使用目的の限定さ    れた個々のシステムを上位のコンピュータと接続し    て利用                                       :適用   (上位のコンピュータの開発において固有の開発を伴う。)   ただし、例3の場合については、汎用プログラム自身の開発に関して個別に情報(開発業務に係る記録類)  を入手することが難しいので、汎用プログラム以外のプログラム(上位のコンピュータのプログラムと通信用  プログラム等)及びそれに付随するハードウェア(インターフェース)と上位のコンピュータが対象となる。 E コンピュータ開発をガイドラインで示す適用範囲の部分とそれ以外の部分を含めて総合的に設計している場  合は、当該システムのうち、ガイドラインで示す適用範囲の部分だけが適用となる。   ただし、当該適用部分だけを分離して管理できなければ全体に適用される。 F ガイドラインは、医薬品等GMPの適正な実施の確保を図ることを目的としているので、システムの大小に  は関係なく、本ガイドラインが適用されるものである。   したがって、「第2 適用範囲」に該当するシステムであれば、ガイドラインの適用を受ける。 G 医薬品等製造業者におけるコンピュータの所有権の有無と、ガイドラインの適用とは無関係であるので、リ  ースのコンピュータであっても、ガイドラインの適用範囲に該当する場合には、当該製造業者は、ガイドライ  ンの適用を受ける。(管理がリース会社によってなされている場合も同様) H 外国の親会社で開発あるいは変更されるコピュータシステムを日本の子会社が運用する場合でも、親会社  と子会社とは互いに別法人であり、この場合日本の子会社が外国の親会社にコンピュータシステムの開発業務  を委託した形となる。   したがってシステムの開発と変更に対しては、ガイドラインの「第3 開発業務」の「6 その他」が適用  される。   また、国内で使用されるシステムにかかわる文書については、合理的な理由がある場合を除き原則として日  本語で作成すること。 I 以下に個別システムについて適用範囲に該当するかどうかの判断事例を示す。  (a)市販のアプリケーションプログラム(例えば一太郎、ロータス1−2−3等)について   (考え方)    汎用性のある特定の機種で使用することを目的として市販されている、目的の限定されたプログラムで   あり、この場合にはガイドラインの「使用目的が限定され、そのためのプログラムがハードウェアの提供   業者によって汎用機能として固定され、パラメーターを設定することによって機能が実現されるシステム」   に該当すると考えて良い。したがってガイドラインの適用は受けない。 (b)プロセスコンピュータと称されるコンピュータで製造工程を制御する場合において、分散型制御システム   (DCS:Distributed Control system)を利用する場合について   (考え方)     DCSは、いくつかのパッケージ化されたプログラムを組み合わせて、目的とする機能を実現するシス    テムであり、組み合わせ方によって実現する機能も異なるので、使用目的が限定されておらず、また汎用    機能として固定されてもいない。したがって、ガイドラインの適用を受ける。 (C)脱イオン水、蒸留水などの各種製造用水の製造管理に使用されているコンピュータシステムについて   (考え方)     この様なシステムは、適用される。    ただし、使用目的が限定されており、フログラムもハードウェアの提供業者によって汎用機能として固定   され、温度、圧力、導電率等数種のパラメーターで制御しているのみの場合には適用されない。 (d)温度や時間の設定を使用者が行い、組み込まれた汎用プログラムで機器の制御が行われる市販の高圧蒸気   滅菌機のようなシステム   (考え方)    完全に汎用性のある市販品で、これにまったく手を加えないものは、ガイドラインの適用を受けない。 (e)次の機能を有するコンピュータを登載したPTP分包機の場合   ・PTPシート中の錠剤の抜けを光学的センサーの出力を受けて判断し、当該シートを後工程で排除する。   ・光学的センサーの出力を錠剤面積比として計算し、ある%以上の欠損錠を不良錠として判断する。   ・製造シート(良品、不良品)枚数、製造数量等の管理上のデータ処理をする。   ・なお、駆動部の制御はシーケンサーにて行う。   (考え方)     このPTP分包機が単体として使用されている場合であって、使用目的が限定され、そのためのプログ    ラムがハードウェアの提供業者にて汎用機能として固定され、単にパラメーターの設定のみで機能が実現    されるものである場合には適用外である。     しかしながら、これらの単体設備や機器等をさらに上位のコンピュータで接続し、システムとして制御    して使用している場合には、システム全体が、ガイドラインの適用を受けるのでPTP分包機も適用の対    象となる。 (f)製造工程チェックの一環として、その工程の中間製品の品質特性をオリジナルプログラムのパソコンと接   続している測定器によって測定している場合(測定データは随時データベースに保管する)  (考え方)    このシステムは、測定データが随時データベースに保管され、GMPに関する製造管理資料として活用   されること、及び工程の中間製品の種々の品質特性が自社開発のオリジナルプログラムによって、パソコ   ン処理されていることから適用対象である。 (g)資材の受入検査において、計測した数値を計測器から直接又は人によってマイコンに入力し、内蔵するプ   ログラムによって適否を判断するシステム   (考え方)     内蔵するプログラムがオリジナルであれば、汎用機能として固定されたシステムとは認めがたいので、    ガイドラインの適用を受ける。 (h)各種分析機器からのデータをコンピュータで受信し、データ処理制御を行い、さらに上位のホストコンピ   ュータで個々のシステムが統合され、これらのデータ及びキー入力データが個々の試験項目ごとに判定され、   試験成績書をプリントアウトする統合システム   (考え方)     各種分析機器をさらに上位のコンピュータに接続し、システムとして制御して使用しているので、シス    テム全体が、ガイドラインの適用を受けるので分析機器も適用となる。 ホスト コンピュータ プリンタ キーボード コンピュータ 分析機器 (i)分析機器のインテグレータで完全に汎用性があり、市販品にまったく手を加えていないもの   (考え方)     分析機器単独で使用される場合には、ガイドラインの適用を受けない。     しかしながら、これらの単体設備や機器等をさらに上位のコンピュータに接続し、システムとして制御    し使用している場合には、システム全体が、ガイドラインの適用を受けるので分析機器も適用となる。た    だし、開発業務の対象となる範囲は、インテグレータの通信インターフェース部分を含むコンピュータ部    分である。 コンピュータ インテグレータ 分析機器 適用 インテグレータ 分析機器 非適用 (j)データ処理機能しか持たないパソコンを単独で用いる場合   (考え方)    (その1) 汎用プログラムを用いる場合については、汎用プログラムでプログラムに修正を加えていな     ければガイドラインの適用を受けない。    (その2) 自社開発のプログラムを用いる場合については、自作開発品で汎用性もないのでガイドライ     ンの適用を受ける。 (k)ハードウーア提供業者が開発したコンピュータを内蔵する下記の製造機器や分析機器    高圧蒸気滅菌機   HPLC    打錠機       ガスクロ    流動層乾燥機    UV    充てん機      IR    凍結乾燥機    電子天秤    糖衣機      その他分析機器    その他製造機器   (考え方)     製造機器や分析機器が、それぞれ単体として使用されている場合には、当該機器は、使用目的が限定さ    れ、そのためのプログラムがハードウェア提供業者によって汎用機能として固定され、単にパラメータの    設定のみで機能が実現されるようなものであるから、適用除外となる。     しかしながら、これらの単体設備や機器等をさらに上位のコンピュータに接続し、システムとして制御    し使用している場合には、システム全体が、ガイドラインの適用を受けるので個々の機器も適用となる。 (1)市販の汎用性のあるプログラム(温湿度センサーとコンピュータを使用)を使用して、作業室の温湿度制   御と記録を行っている場合   (考え方)     それらの設備は、ガイドラインの適用を受けない。 (m)使用目的が限定され、そのためのプログラムは汎用機器としてハードドウェアの提供業者で開発されたもの   を、ユーザーの要求で汎用機能を特別に変更するために、フログラムの一部に追加したり、プログラムの修   正を外部メーカーに依頼した場合   (自社で変更した場合も含む)、一部追加、修正を加えたプログラム   (考え方)     ガイドラインが適用される。ただし、外部メーカーに修正を依頼した場合には、「第3 開発業務」の「6    その他」が適用される。 (n)使用目的が限定され、そのためのプログラムは汎用機能としてハードドウェアの提供業者で開発したものを、   ユーザーの責任においてプログラムの一部に修正を加えたもの   (考え方)     単にパラメーターの設定のみで機能が実現されるようなものの場合でも、一部修正を加えたプログラム    に関係するシステムに関しては、ガイドラインが適用される。     ただし、データ処理の手順等を記憶し、自動的に一連の処理を行う機能を有した市販のプログラムを使    用する場合には、「第2 適用の範囲」のただし書きの規定に該当すると考えられるのでガイドラインの適    用を受けない。 (o)生産管理コンピュータシステムにおける下記に示す個々のサブシステム    製造指図書発行システム    原料在庫管理     製品在庫管理    標準時間管理     製造経費管理   (考え方)     製造指図書発行システム、原料在庫管理に関するシステムはガイドラインの適用を受ける。製品在庫管    理に関するシステムについては、製造所を出荷した後の管理に関する部分は適用を受けない。標準時間管    理、製造経費管理に関するシステムはガイドラインの適用を受けない。     ただし、上記のような総合システムの場合は、当該システムのうち、ガイドラインで示す適用範囲の部    分だけが適用となる。     ただし、当該適用部分だけを分離して管理できなければ全体に適用される。 (p)冷水、工水、蒸気などの、医薬品の品質に直接影響を及ぼさない製造設備に使用されているコンピュータ   システム(例えば、冷暖房に使用する水などの供給設備)   (考え方)     ガイドラインが適用されない。 (q)人事システムで管理している氏名データベースを製造記録書作成システムで利用するなど、GMPと関係   のない他のシステムの情報をGMPで活用する場合   (考え方)     GMPと関係のない他のシステム(人事や経理等の業務のためのシステム)は対象外と考えてよい。     ただし、ガイドラインの適用を受けるシステムと接続されるのであるから、その情報を利用するシステ    ムを開発する際には、GMPと関係のない他のシステムからの情報利用について、開発段階においてシス    テムテスト及び運用テストを十分行う必要がある。 (r)ガイドラインの適用を受けている(開発業務を含めて)既存のコンピュータシステムについて、新たに端   末装置のみを増設する場合、当該既存システムの当初のシステム設計段階で想定されていた範囲の増設   (考え方)    「運用管理業務」のみを適用する。    ただし、当初のシステムの開発時に増設を想定した範囲のシステムテストや運用テストが実施されてい   ることが必要である。    なお、当初のシステム設計段階で考えられていた範囲を超えた場合の増設については、ガイドラインの   「第4 運用管理業務」の「1 総則」「(3)システムの変更」が適用になる。 (s)変更の計画段階で本質に影響を与えない変更であることが確認されている場合   (考え方)     ガイドラインでいうシステム変更には該当しない。 ☆2 査察対象となった事業所のうち、今回の査察対象施設となる設備は何か。 [留意事項] @ 査察対象となるシステムを特定し、当該システムの使用目的、機能、規模、ハードウェアの配置等全体像を  把握すること。  A 開発業務が本社等で一元的に管理されており、当該事業所においてすべての調査ができない場合には、当該   業務に係る文書類を本社等から入手し、保管管理を行っていることを確認するか、または、本社等で適切に保   管管理が行われていることを確認すること。(この場合には、特に本社等への査察の必要はない。)  B 運用管理に係る査察は、製造所ごとに行う必要がある。 2 文書及び記録の査察   開発業務及び運用管理業務が適切に行われるよう、ガイドラインに定められた文書等が整備されていることを調  べる。   本マニュアルにおいて「例えば」とあるのは、一例を示したものである。また、「原則として」と規定されている  場合には、合理的な理由があればガイドラインに示されている記載事項のすべてを含まなくてもよい。   文書及び記録に対する査察の基本要件は、次のとおり。 ☆3 必要な文書及び記録が備えつけられているか。 [留意事項] @ ガイドラインに係る文書及び記録を確認し、ガイドラインで要求されている文書及び記録が備えつけられて  いることを確認すること。 A 個別文書、記録の内容については、「V 個別事項」の査察において行うものとし、まず、全体の整備状況の  把握を行う。 B ガイドラインで定める開発マニュアル及び開発計画書の記載事項が、自社の文書類において全体として満た  されていれば差し支えない。ただし、どのような事項が開発計画書に記載されるかについて、あらかじめ開発  マニュアルに明記しておくこと。 ☆4 文書は、定期的に又は必要に応じて改訂され維持されているか。 [留意事項]   文書は、システムの使用経験、事故の経験及び、システムの使用開始後に得られた経験等から、より適切なも  のとなるよう、定期的に又は必要に応じて改訂され、維持される必要があり、これが適切に行われていることを  確認すること。 ☆5 文書の制定、改訂の際に責任者の承認を得ているか。  [留意事項]   文書の制定、改訂に際しては、それぞれの領域、段階ごとに選任された責任者の承認を得ている必要がある。 3 実地の調査 ☆6 実際の現場において、ガイドラインに定められた事項が実施されているか。 [留意事項]   現場における実地調査は、次の2つの調査に分かれる   @ ハードウェア設置場所における調査     実地にハードウェア設置場所において、システムの稼働状況、運用状況を調査すること。特にこの調査にお    いては、マニュアルの「第4 運用管理業務」の「2 ハードウェアの操作」から「5 セキュリティ管理の    実施」までの部分についての遵守状況を中心に調査すること。   A 文書及び記録の保管場所における調査     文書及び記録の保管場所において、文書及び記録の整備、ファイリング等の保管状況を調査し、適正に行わ    れていることを確認すること。     また、これらの保管期限が守られていることの確認を行うこと。     文書及び記録用のバックアップコピーを保管している場合は、これらが適正に保管されていることを確認す    ること。 V  個別事項 T 開発検討段階 (1)開発段階の責任体制の確立    開発業務を効率的かつ正確に行うために、業務分担が明確にされ、責任体制が確立されている必要がある。    査察のポイントは、次のとおり。 ☆7 製造業者は、各開発段階ごとに責任者及び担当者を定めているか。 [留意事項] @ 「開発段階」とは、システム設計段階、プログラム設計段階、システムテスト段階、設置 運用テスト段階  等の開発の順に区分された段階をいう。 A 「開発段階」以外に「開発領域」ごとに、責任者及び担当者を定めてもよい。ここでいう「開発領域」ごと  とは、原料秤量工程、造粒工程、打錠工程、コーティング工程、充てん・包装工程等の開発対象別に区分され  た領域をいう。 B 各開発段階ごとに定める「責任者」とは、当該企業に所属する者であってガイドラインに規定する業務を遂  行する能力のある者であれば、GMPで規定する責任者である必要は特にない。 C 同じ開発段階で、支障のない場合には、責任者と担当者を兼務することは可能である。(また、同一の者が複  数の開発段階の責任者又は担当者を兼務することも可能である。) ☆8 責任者の業務分担を定めているか。 [留意事項] @ 「責任者の業務の分担」とは、責任者がその業務を遂行できる規模であればよい。例えば、現行組織に応じ  て、造粒工程、打錠工程に分けて各々に責任者をおいてもよい。   ただし、複数の開発段階又は開発領域の兼務は可能である。その場合、開発の規模に応じた、責任の範囲を  明確にすることが重要である。 A 業務分担の方法は、次の3通りがあるが、原則は、(a)によるものとし、開発規模等から支障なく業務を遂行  できると考えられる場合には、(b)又は(C)でも差し支えない。   ただし、各システム開発の責任者とその責任分担は明確にしておく必要がある。   (a)各段階ごとに責任者を定める。   (b)開発全体で一人の責任者を定める。   (c)システムの大きさ、製造業者(又は製造所)の組織、規模等を考慮して、適切な複数の責任者を定める。 (2)開発マニュアルの作成    開発マニュアルは、開発要員が効率的に業務を遂行するために不可欠であり、標準化され、かつ内容がわかり   やすく記載されている必要がある。    査察のポイントは、次のとおり。 ☆9 開発に必要なマニュアルが、適正に作成されているか。 [留意事項] @ 開発マニュアルは、システムの開発ごとに作成してもよいが、開発手順の統一化等のために、各システム共  通のマニュアルとして作成されていることが望ましい。(内容は、ガイドラインの記載事項を原則として含むも  のとする。) A コンピュータに関する社内規定が既に制定されており、その内容がガイドラインの「第3 開発業務」にお  いて作成すべき文書の必要事項を満足すれば、当該社内規定を本ガイドラインで規定する文書として差し支え  ない。   ただし、ガイドラインのいずれの文書に該当するか説明できるようにしておく必要がある。 B 「原則として次の事項を記載するものとする」として掲げられている項目は、開発されるシステムの規模、  機能、性能、種類等や使用する製造業者の規模等によって、ガイドラインで規定しているすべての「事項」を  含まなくてもよい場合もあり、また、規定されていない事項の追加が必要な場合もある。 C 開発マニュアルは、各開発に当たっての基本原則についての内容に限定して製造業者(あるいは製造所)単  位で作成するものであり、個別のシステム開発に際しての固有の事項は開発計画書で対処するものである。   ただし、どのような事項が開発計画書に記載されるかについて、あらかじめ開発マニュアルに明記しておく  必要がある。 ☆10 ガイドラインに定められた事項が、開発マニュアルに記載されているか。 [留意事項] @ ガイドラインにおいて、開発マニュアルには、原則として次の事項を記載するものとされている。   ア)システム開発の手順   イ)各工程ごとに作成すべき文書及びその管理方法   ウ)各開発段階の業務完了の確認又は承認の手続き   エ)開発マニュアルの改訂又は廃止の手続き A ア)〜エ)に記載すべき事項のうち必要なものの具体例をそれぞれの項目ごとに次に掲げるので、これを参考  にマニュアルの内容を調査する。   ア)については、システム開発の手順をどのように構成し、それぞれどのような定義づけをしているかを調べ   ること。    (例えばシステム開発手順として、業務分析−システム設計−プログラム作成−システムテスト−運用テス   ト等が記載され、それぞれについて適切な定義付けがされているか。)    イ)については、各工程ごとに作成すべき文書類とそこに含まれるべき内容や書式等が記載されていることを   調べること。また、文書の管理部署及び文書の改訂又は廃止の手続きが記載されていることを調べること。    ウ)各開発段階の業務完了の確認又は承認の手続きが、記載されていることを調べること。    エ)については、開発マニュアルの改訂又は廃止の手続きが記載されていることを調べること。 (3)開発計画書の作成    開発計画書は、開発を予定しているシステムに係る個々の計画ごとに作成するものであり、当該システムの全   体構想が明確になっていなければならない。    査察のポイントは、次のとおり。 ☆11 開発計画書が、適正に作成されているか。 [留意事項] @ 開発計画書は、開発当初に作成されるもので、開発予定のシステムの概要が明確になるように記載されてい  なければならない。 A 開発段階を他社に委託した場合には、委託先の提出資料(仕様書等)の一部又は全部が開発計画書に含まれ  る内容をすべてを満たしていれば、それをもって一部又は全部を開発計画書としてよい。   ただし、この場合には、メーカーの提出資料のそれぞれの内容について、ガイドラインのいずれの文書に該  当するか説明できるようにしておく必要がある。 ☆12 ガイドラインに定められた事項が、開発計画書に記載されているか。 [留意事項] @ ガイドラインにおいては、開発計画書には、原則として次の事項を記載するものとされている。   ア)開発の目的   イ)開発スケジュール   ウ)要員計画   エ)ハードウェアの選定基準   オ)ハードウェアを設置するための設備整備計画 A ア)〜オ)に記載すべき事項の具体例をそれぞれの項目ごとに次に掲げるので、これを参考に開発計画書の内  容を調査する。   ア)についは、システムの開発により何を達成するのかその目的等について記載されていることを調べるこ  と。  例えば、  ・「開発の目的」の記載事例としては、「打錠工程の夜間無人化」、「原料秤量作業の誤操作防止」等が挙げられ     る。     イ)については、少なくともガイドラインの開発段階ごとの開始予定日、終了予定日、ハードウェアの導入時    期及び本稼働予定時期等が、明記されていること。     ウ)については、責任者及び担当者の役割、権限、資格又は経験及び人数等が、開発スケジュールと対比して    記載されていること等について調べる。     エ)については、当該システム構成上、留意すべきハードウェア上の選定理由が記載されていることを調べる。    基本的には、ハードウェアの選定基準は、開発の計画に合わせたコンピュータシステムのハードウェア、ソ    フトウェアの要求事項を記載することが必要であるが、個別事例として、以下の例を示す。    ・温度や湿度の高い製造現場に設置するコンピュータは、その設置環境に耐えられるものを選定しなければな     らない。」等の事項が、記載されていることを調べる。     また、当該システムとして、将来の増設計画が予定されるのであれば「記憶装置や入出力インターフェイス    等の増設が可能なコンピュータであること」もハードウェアの選定基準となる可能性がある。     オ)については、空調、電源設備等、ハードウェアを設置する場所の関連設備の整備計画が記載されているこ    とを調べること。 2 システム設計段階 (1)システム設計書の作成    システム設計書は、開発マニュアルに基づいてシステムの構成や機能及び業務処理の手続き等、システム設計   に係る事項を規定したものである。従って記載内容の適切性、正確性を十分確認する必要がある。    査察のポイントは次のとおり。 ☆13 システム設計書は、ガイドラインに定められた事項が記載され適正に作成されているが。 [留意事項] @ 開発マニュアル及びシステム設計書を比較検討し、システム設計書の内容が、開発マニュアルの内容に沿っ  て作成されているか調べる。 A ガイドラインにおいて、システム設計書には、原則として次の事項を記載するものとされている。   ア)ハードウェア構成   イ)システムの機能の概要   ウ)入出力情報の項目の一覧   エ)ファイル構成の概要   オ)障害対策機能の概要   カ)機密保護機能の概要   キ)責任者及び担当者の職名又は氏名 B ア)〜キ)に記載すべき事項の具体例をそれぞれの項目ごとに次に掲げるので、これを参考にシステム設計書  の内容を調査する。   ア)の「ハードウェア構成」とは、コンピュータとそれにより制御される機器及び設備の構成であり、これら  が記載されていることを調べる。   イ)「システム機能の概要」とは、例えば、製造指図書の発行方法と確認の方法、作業開始の方法、稼働状    態の監視方法、作業終了の方法、製造記録作成の方法と確認の方法等当該システムにおける物の流れと情報の    流れが明確に記載されているものであり、これらの事項が適切に記載されていることを調べる。     ウ)の「入出力情報の項目の一覧」とは、システムへ入力される情報、システムから出力される情報、システ    ム内で授受される情報等の一覧とその形態(例えば帳票形式、画面形式等)であり、これらが記載されている    ことを調べる。     エ)については、ファイルの形式、レコードの項目一覧等のファイル構成の概要が記載されていることを調べ    る。     オ)については、障害対策機能の概要として、例えば、次のような事項が記載されていることを調べる。     ・ランプ表示やエラーメッセージ等による障害の検出機能     ・ファイルのバックアップ、回復機能     ・再開手順     カ)については、システムへの不正アクセス防止のため、資格確認機能(識別コード、パスワード等)、保護    されるべきプログラム及びデータへのアクセス制御機能等の機密保護機能の概要が記載されていることを調べ    ることである。     キ)については、システム設計書に実際の作業の責任者及び担当者の職名又は氏名が明記されていることを調    べることである。   C システム設計書は、システムの機能が容易に理解できるように記載されているか調べる。(システムのイメー    ジをわかりやすく図表や絵を用いて処理内容等について記述することが望ましい。) (2)システム設計書の確認    査察のポイントは次のとおり。 ☆14 システム設計書が開発マニュアルに基づいて、作成されていることが、責任者により確認されている   か。 3 プログラム設計段階 (1)プログラム仕様書の作成    プログラム仕様書は、プログラムを作成するための基になるものであり、プログラミングに必要な次の事項が   記載されていることが必要である。   査察のポイントは次のとおり。 ☆15 プログラム仕様書は、ガイドラインに定められた事項が記載され適正に作成されているか。 [留意事項] @ ガイドラインにおいて、プログラム仕様書の記載事項は、原則として次の事項を記載するものとされている。   ア)入出力情報の詳細   イ)データ処理の詳細   ウ)責任者及び担当者の職名又は氏名 A ア)〜ウ)に記載すべき事項の具体例をそれぞれの項目ごとに次に掲げるので、これを参考にプログラム仕様      書の内容を調査する。     ア)については、システム設計書の一覧に基づいて、プログラム可能な程度まで入出力の情報が詳細に記載さ    れていることを調べる。     イ)については、計算、移送、エラーチェック等の当該プログラムに係るデータ処理の内容が、プログラム可    能な程度まで詳細に記載されていることを調べる。     ・例えば、原材料の在庫管理において、在庫引当て後の在庫量の計算式、在庫ファイルの更新方法、画面入      力項目のエラーチェック方法等を記載したものがデータ処理の詳細である。     ウ)責任者及び担当者の職名又は氏名が記載されていることを調べる。 (2)プログラム仕様書及びプログラムの確認    システム開発において機能の一貫性を確保するため、フログラム仕様書はシステム設計書に基づいて作成され   る必要があり、矛盾があってはならない。また、プログラム仕様書に基づいてプログラミングされていることを   調べる。    査察のポイントは次のとおり。 ☆16 責任者は、プログラム仕様書が、システム設計書に従って作成されていることを確認しているか。 ☆17 プログラム仕様書は、当該プログラムの内容が容易に理解できるように記載されているか。 [留意事項]  プログラム仕様書は、プログラマーが理解できる程度に記載されていることが必要である。 ☆18 プログラムがプログラム仕様書どおりにプログラミングされていることを確認しているか。 [留意事項]   プログラムの内容が、プログラム仕様書に定められた入出力情報を利用し、定められたデータ処理を行うよう  になっていることを確認すること。   例えば、責任者に対してプログラムの内容を説明させることによって、プログラムがプログラム仕様書どおり  にプログラムされていることを確認すること。(机上デバッグの実施) (3)プログラムテストの実施    プログラムの機能や性能等の確認のためにプログラムテスト計画書に基づいたプログラムテストを実施しなけ   ればならない。    「プログラムテスト」とは、プログラム仕様書どおりにプログラムが作成されていることを、機能別に小さく   分割されたプログラムを作動させて確認することである。    例えば、熱電温度変換プログラムのプログラムテストでは、熱起電力相当のデータを与えたとき、熱電対の特   性を補正して正しい温度が表示されることを確認する。与えるデータを変えて所定のレンジ(例えば、0〜10   0℃)において、正しい温度に変換されることを確認する等のテストデータの種類、テストデータの与え方、結   果の確認の方法(画面上、帳票上、ファイルの内容等)を記載したプログラムテスト計画書が作成されているこ   とを調べる。    査察のポイントは次のとおり。   ☆19 プログラムをテストするに先立ってテスト方法とテスト結果の判定方法を記載したプログラムテスト    計画書が適正に作成されているか。   ☆20 プログラムテストは、プログラムテスト計画書に基づいて、プログラムテストを実施し、その結果を    記録しているか。  [留意事項]    プログラムテストの記録を点検し、プログラムテスト計画書に基づいてテストされたことを調査する。計画書   と記録内容が異なる場合には、その理由を調査すること。   ☆21 責任者は、プログラムテストの結果の適否を判定し、承認しているか。 4 システムテスト段階   「システムテスト」とは、プログラムテストで確認された機能別のプログラムが、システム的に結合された結果、  設計どおりの機能を示すことを確認するために、プログラムをコンピュータに読み取らせ、かつ、実際の生産は行  わない状態で行うテストである。   システムテスト時には、稼働時のハードウェア構成及びソフトウェア構成で実施することが望ましいが、システ  ムの開発メーカーや自社の開発部署で実施されることも多く、都合により一部の機器(端末機、設定盤等)又はソ  フトウェア(ホストコンピュータとの通信プログラム等)が欠ける場合があり得る。その場合には、コンピュータ  により制御される機器又は設備に代えて、これと同等の情報を有するシミーレーションデータや操作条件等、擬似  データを入力し、設計した仕様を満足する動作を示すことを確認する方法が採られる。   また、「第3 4 (1)」でシステムテストの定義がなされているが、システムテストの対象となるシステムと、「第  1 目的」で定義されている「システム」との違いは、以下のとおりである。「第1 目的」でいうシステムは、「コ  ンピュータ及びこれにより制御されている機器及び設備」と定義されている。即ち、コンピュータのハードウェア、  プログラム及び制御対象の機器及び設備より構成され、いわゆる完成されたシステム構成をいう。   しかし、「第3 4 (1)」で定義するシステムテストにおける「システム」は、いわゆる開発途上のシステムであ  るので、実際の製造条件と完全に同一の状況で実施できないことがある。そのため、システムテストは制御対象の  機器及び設備に代えて、これと同等の情報を有するシミーレーションデータや操作条件等、擬似データを利用し実  施されることもあるので「第1 目的」で定義される「システム」と「システムテスト」の対象となるものとは、  必ずしも同一ではない。 (1)システムテスト実施計画書の作成    生産稼働時と同等の環境下で、初期の設計仕様を満足する動作を示すかどうか確認するためにシステムテスト   実施計画書に基づいたシステムテストを実施しなければならない。    査察のポイントは次のとおり。   ☆22 システムテスト実施計画書は、ガイドラインに定められた事項が記載され適正に作成されているか。  〔留意事項〕 @ システムテストは、システム設計書に記載されている事項がすべて実現されることを確認するものであるか  ら、システムテスト実施計画書は、システム設計書と対比してテスト項目、テスト方法、スケジュール及び業  務分担などが明記されていることが望ましい。 A ガイドラインにおいて、システムテスト実施計画書の記載事項は、原則として次の事項を記載するものとさ  れている。   ア)システムテストの実施環境   イ)システムテストの項目及び使用するテストデータ   ウ)システムテストの方法及び結果の確認方法   エ)システムテストのスケジュール   オ)システムテストを実施する場合の業務分担 B システムテストに供するハードウェアの接続状況(コンピュータ本体、オペレーターズコンソール、入出力  装置等)及びソフトウェア構成(オペレーティングシステムを含むプログラム名等)が記載されている必要が  ある。 C ア)〜イ)に記載すべき事項の具体例をそれぞれの項目ごとに次に掲げるので、これを参考にシステムテスト  実施計画書の内容を調査する。  ア) 「システムテストの実施環境」とは、テスト時のハードウェアの接続状況及びプログラム構成をいう。   ・ハードウェアの接続状況とは、コンピュータを中心として、端末機やプリンタ等の接続を図示したもので、    システム設計書に準拠して作成されていること。システムテストでテストが実施されていないハードウェ    アがあれば、その理由を調べること。                    システムテストの実施環境(例)                     (ハードウェアの接続状況) 設定盤 上位コンピュータ 制御対象 I/O装置 コンピュータ プリンタ 端末機 ・プログラム構成とは、システムテスト時に実際にコンピュータに読み込ませるすべてのプログラム名を記  載したものである。システムテストでテストされないプログラムがあれば、その理由を調べること。例え  ば、上位のコンピュータがシステムテスト時に用意できないため、通信に関係したプログラムのテストが  実施できない等である。                 システムテストの実施環境(例)                     (プログラム構成) オペレーティングシステム オペレーティングシステム名      (OS) 使用プログラム プログラムA プログラムB プログラムC プログラムD イ)〜オ)については、次の例を参考にすること。   これは、製造指図書の内容を、責任者の端末機のキーボードから入力し、原料名、充てん量、温度等が製  造担当者のディスプレイに正しく表示されることを確認するためのテストである。                  システムテスト実施計画書(例)                       (プログラム)    1 項目           製造指図書のディスプレイ    2 システムテスト実施環境  (前出のとおり)    3 テストデータ       原料名ABC、充てん量・・kg                   温度・・℃    4 方法           端末機のキーボードから入力する    5 確認方法         ディスプレイに画面表示し、キーボード入力と一致することを確認する。                   (想定されるテスト結果との比較等)    6 スケジュール       7月上旬    7 業務分担         ・・・課職員(職名等)   注)警報発信の動作を確認するために、例えばセンサーからの実入力を用いないで、電圧/電流発生器から入    力を用いてもよい。 (2)システムテストの実施    システムテスト実施計画書に基づいて、システムテストが実施され、その結果が評価されて、適切に保管管理   されていることを調べる。なお、システムテストは、テスト結果の再現性を確認するために、合理的根拠に基づ   き必要な回数だけ、繰り返し試行することが望ましい。   査察のポイントは次のとおり。   ☆23 担当者は、システムテスト実施計画書に基づいて、システムテストを実施し、その結果(システムテ    ストの実施時に発生したトラブルの内容及びその措置結果を含む。)を記録しているか。 〔留意事項〕 @ システムテストの記録を点検し、システムテスト実施計画書に基づいてテストされていることを調査する。  計画書と記録内容が異なる場合には、その理由を調査すること。 A システムテストの結果は、今後の対応を図っていく上で重要となるのでシステムテスト実施時に発生したト  ラブルの内容及び結果が詳しく記録されていることを調査すること。 B システムテストには、教育訓練も含めて、実稼働への移行を円滑に進めるため、当該システムの使用者側が  参加していることを調べる。 C システムテストの責任者の職名又は氏名が記載されていることを調べる。 ☆24 責任者は、システムテストの結果の適否を判定し、承認しているか。 〔留意事項〕 @ システムテスト結果の判定方法は、原則としてシステム実施計画書で定めた結果の確認方法に基づいて判定  すること。   ガイドラインにおいては、システムテストの結果の適否の判定事項は原則として、次のとおりとされている。   ア)機能(システム設計書に規定されたとおりに機能するか等)   イ)性能(システム設計書で期待された応答性を確保しているか等)   ウ)信頼性(リカバリ機能は正常に作動するか等)   エ)操作性(端末機の操作性は適切か等) A ア)〜エ)に記載すべき事項の具体例をそれぞれの項目ごとに次に掲げるので、これを参考に判定する。    ア)「機能」は、例えば、製造指図書のディスプレイ上の表示が正しいか、製造記録の作表印字に間違いがな     いかを調べること等をいう。    イ)「性能」は、例えば、ディスプレーを用いた端末機において、入力後、ディスプレーに表示が現れるまで     の時間が応答性の一つである。    ウ)「信頼性」は、例えば、コンピュータの記憶内容が何らかの原因で消去されてしまったと仮定し、記憶の     回復とシステム立上げに要する時間が信頼性の一つである。また、バックアップシステムへの移行が確実で     あることの確認も信頼性を評価する一つである。    エ)「操作性」は、例えば、操作盤の押しボタンの配列が、誤操作を防止するように工夫されていること等を     いう。 5 設置・運用テスト段階 (1)設置計画書の作成    設置計画書は、開発計画書で設計されたハードウェアを設置するための設備整備計画内容を確認できるもので   ある必要がある。    計画書の内容としては、装置及びコンピュータのハードウェアが適切に据え付けられ、良好な環境下で稼働で   きるようにするための要件等が記載されている必要があり、ハードウェア提供業者が推奨する環境条件(温度、   湿度、振動、その他)、及び据え付け条件(電源、接地、その他)を参考にして作成されている必要がある。  査察のポイントは、次のとおり。 ☆25 設置計画書は、ガイドラインに定められた事項が記載され適正に作成されているか。 〔留意事項〕  ガイドラインにおいて、原則として次の事項を記載するものとされている。   ア)設置場所   イ)設置のスケジュール   ウ)ハードウェアの提供業者が推奨する温度、湿度、振動等の環境条件   エ)電源、接地等の据え付け条件   オ)責任者及び担当者の職名又は氏名    ウ)は、ハードウェアの提供業者が推奨する条件が設置場所等の使用実態を考慮していない場合に、製造業者が、   ハードウェアの提供業者と協議のうえ、合理的データに基づき新たな条件を設定している際には、協議内容等と   共当該設定に条件を記載すること。(開発計画書に定められた設備整備計画書の内容と整合していること。) (2)ハードウェアの設置 ☆26 担当者は、設置計画書に基づいて、ハードウェアを設置し、適切に設置されていることを確認し、そ   の結果を記録しているか。 〔留意事項〕   委託先他社の作成する「据付完了書」を設置の記録とすることは差し支えない。ただしア)〜オ)の内容をすべ  て満たしていることが必要である。   また、「設置計画書」と「据付完了書」の関係は、次のようなものである。すなわちガイドラインの「第35  (1)(ア)〜(オ)」は、設置計画書の内容を規定しているものであり、「据付完了書」の内容は、ガイドラインの「第  3 5 (2)」の設置の記録に相当するものであるので据付完了書は、設置計画書とはならない。 ☆27 責任者は、ハードウェアの設置の適否を判定し、承認しているか。 (3)運用テスト実施計画書の作成   システムに関する運用テストは、試験的に生産又は管理を行い、設計仕様どおりの生産又は管理が問題なくで  きることを確認するためのテストをいう。   運用テスト実施計画書は、動作の確認方法が適切で、かつ具体的に記述されていなければならない。   査察のポイントは、次のとおり。 ☆28 運用テスト実施計画書は、ガイドラインに定められた事項が記載され適正に作成されているか。 〔留意事項〕  査察のポイントは、次のとおり。 @ 運用テストは、開発検討段階、システム設計段階、プログラム設計段階で考慮された機能及び性能通り作動  することを確認するためのテストで、医薬品製造装置を実際に稼働して行うテストである。 A 運用テストは、例えば、医薬品製造装置が正しく制御されているかどうか、温度は正しいか、検査機構は正  常か、原料の流れは正常か、良品のカウント数は正しいか等チェックポイントをあらかじめ定めて、かつ、運  用テスト実施計画書に記載したうえで、テストを実施することが望ましい。 B コンピュータシステムでネットワークを構築する場合には、ネットワークを考慮した計画を立てることが望  ましい。 C ガイドラインにおいては、原則として、次の事項を記載するものとされている。   ア)システムの稼働時における機能及び性能の確認方法   イ)運用テスト実施結果の解析と評価の方法  C ア)及びイ)の方法の例示を以下に示す。   ・ハードウェアの仕様の確認方法と結果の解析方法及び評価の方法    例えば、   センサーの動作確認、計測値の正確さの確認等が含まれる。   ・ソフトウェアの仕様の確認方法と結果の解析方法及び評価の方法    例えば、   データの流れの確認、制御性の確認、シーケンス動作の確認等が含まれる。 (4)運用テストの実施    「運用テスト」とは、システムが稼働時の環境下において設計した仕様どおりに生産及び管理を行うことがで   きることを確認するためのテストである。また、本テストは、通常システムを設置する製造所内で実施されるが、   この場合、コンピュータのハードウェア、プログラム及び制御対象の機器、設備はシステム設計書に規定された   条件で実施される。   ☆29 運用テスト実施計画書に基づいて、運用テストが実施され、その結果が評価され、承認されて、適切     に管理されているか。 〔留意事項〕 @ 運用テストは、テスト結果の再現性を確認するために、合理的根拠に基づき必要な回数だけ繰り返し試行さ  れていることを調べる。 A 運用テストの前提条件として、機器のキャリブレーションを行っておくことが必要である。 B システムテストと運用テストとはテストの目的が異なるため、分離して行うのが一般的である。しかし、シ  ステムの規模、種類及び機能、性能に対する既知の情報量、さらにシステムの新規性(既存類似システムでの  経験)等を考慮して、同時に行うことは可能であるが、ガイドラインの要求事項をすべて満たしていることが  必要である。 C プログラムの確認、プログラムテスト、システムテスト及び運用テストは、分離して行うこと。ただし、こ  れらの確認やテストは個々のシステムの特徴により、必ずしも明確に区分することができない場合もあるので、  そのようなシステムについては、確認及びテストがガイドラインに沿って行われており、ガイドラインの要求  事項をすべて満たしていることを説明できるようにしておくこと。 D 「ハードウェアの操作」において規定されている作業者の教育は、本テスト時に行うこと。  ☆30 責任者により、運用テストの結果の適否を判定し、承認しているか。 6 その他 (1)開発業務に係る文書の保存管理に関しては、開発段階の管理の主体が自社でない場合には、以下の二つの場合   がある。    ・自社で保存管理する場合:自社でガイドラインで定めた関係書類等(本ガイドラインで定めた内容を包含する     委託先他社様式の関係書類を含む)を、適切に保管管理する必要がある。    ・委託先他社で保存管理される場合:委託先他社によって適切に保管管理等取り扱われていることを確認し、そ     の記録を自社で保管管理する必要がある。  (2)開発業務の全部又は、一部を他社に委託した場合には、「4 システムテスト段階」及び「5 据え付け評価、    確認段階」の実施及び結果の評価については、自社が主体として実施し、その記録を保管管理しておく必要が    ある。    査察のポイントは次のとおり。 ☆31 委託先他社から入手した関係書類は、適切に保管管理されているか。 〔留意事項〕 @ 「第3 開発業務」のうち、1〜3については、委託先に全面委託することが可能である。また、4及び5  については、自社が主体として行うことになっている。   自社が、委託する業務の内容を理解するとともに、自社が導入するシステムの機能及び性能等について熟知  していることが望ましい。 A 「第3 開発業務」のうち、1〜3を他社に委託する場合には、委託先他社がガイドラインに準拠して開発  業務を実施していることを製造所側が確認することが望ましいので、この様な確認が行われているかどうか、  その記録があるかどうかを調査すること。 B この様な委託を行った場合、製造所側にはそれぞれの開発段階に責任者を置く必要はないが、Aの確認を行  う責任者を置くことが望ましい。 ☆32 システム開発を委託し、開発に係る関係書類の保管管理を委託先他社が行う場合、委託先他社によっ   て、関係書類が適切に保管管理等取り扱われていることの確認を行ったことを示す記録があるか。 〔留意事項〕   「第3 開発業務」の全部又は一部を他社に委託した場合でかつ、委託先他社で保管管理してもらう場合には、  委託先他社から委託事項に関して、ガイドラインで定めた関係書類(本ガイドラインで定めた内容を包含する委  託先他社様式の関係書類を含む)を委託先で適切に保管管理されていることを確認する必要があるので、委託先  他社での状況を調査し、適正に保管管理されていることを確認する必要がある。 ☆33 「4 システムテスト段階」及び「5 設置・運用テスト段階」については、自社が主体として実施   し、その結果の評価、確認を行ったことを示す記録があるか。  〔留意事項〕  @ 「自社が主体で実施する」とは、各テスト段階の責任者及び担当者を選任し、テストの計画を定め、責任者   及び確認者が、自ら又はこれらの者の立ち会いの下にテストを行い、その結果の評価、確認を行うことである。  A テスト計画の立案作成は、委託先他社と十分協議のうえ、作成することが望ましい。計画の立案作成は、委   託先他社に行わせても差し支えないが、計画が適正であることを確認すること。  B 「第3 開発業務」の全部又は、一部を他社に委託した場合には、委託先他社の責任者と、委託元である自   社の責任者というように、それぞれ一名の責任者を任命し、結果の評価、確認を行うこと。 7 運用管理総則 (1)運用管理段階の責任体制の確立    運用管理業務を適正に行うために、業務分担が明確にされ、責任体制が確立されている必要がある。   査察のポイントは、次のとおり。  ☆34 製造業者は、各運用段階ごとに責任者及び担当者を定めているか。 〔留意事項〕 @ 「各運用段階ごと」とは、具体的には、ガイドラインでいう運用段階「2 ハードウェアの操作」から「6   自己点検の実施」までの各段階を一つの段階と考えてよい。 A 複数の運用段階の兼務は可能であるが、その場合、システムの規模に応じた責任の範囲を決定し、責任者が、  その業務を遂行できる範囲で業務分担されていなければならない。例えば、現行組織に準じて、点検担当、セ  キュリティ担当等に分けて各々に責任者を置いてもよい。 B 定められた責任者は、役職、知識経験及び権限からみて妥当であること。責任者が役職者である必要はない  が、実務上の権限が与えられている必要がある。  ☆35 責任者は、担当者の業務分担を定めているか。 (2)運用管理手順書の作成   運用管理手順書は、システムを適切に運用管理し、稼働させるために作成するもので、製造所の使用の実態を  考慮して、作成されている必要がある。   査察のポイントは、次のとおり。  ☆36 運用管理手順書はガイドラインに定められた事項が記載され適正に作成されているか。 〔留意事項〕   運用管理手順書は、運用の業務の分担ごと又はシステムごとに分割して作成されていても差し支えない。 @ ガイドラインにおいて、原則として次の事項を記載するものとされている。  (ア)ハードウェアの操作に関する事項  (イ)保守点検管理に関する事項  (ウ)事故発生時の対応措置に関する事項  (エ)セキュリティ管理に関する事項 A (ア)〜(エ)に記載すべき事項の具体例をそれぞれの項目ごとに次に掲げるので、これを参考に手順書の内容を調  査すること。なお、運用管理手順書は、担当者が当該業務を手順書に従って運用管理の行える程度に記載され  ていること。 B ハードウェアの操作に関する事項は、次のとおりである。  (a)ハードウェアの標準操作手順  (b)担当者に対する操作法の教育訓練に関する事項として、導入時、システムの変更時、担当者の交代時等に   行うことが定められていること。 C 保守点検管理に関する事項は、次のとおり定期点検事項と日常点検事項に分けられる。   点検の頻度、項目については、システム毎に科学的に設定し、定めた事項を確実に行うことが重要であるが、  以下に具体例を示すので、これを参考に設定すること。  定期点検事項   (a)プログラムが適正に使用されていることの確認     ・例えばプログラムが記録されているFDのバージョンが定められたものであることの確認方法が定めら      れているか等。   (b)システムが設計された仕様どおりの機能及び性能を満たして作動していることの確認     例えば、     ・過去の使用の記録を定期的にまとめ、その内容を確認する方法が定められているか。     ・テストデータを入力し、アウトプットされたデータによりシステムが仕様を満足していることを確認で      きる場合には、当該方法をもって定期点検を行ったものとして差し支えない。      ただし、この方法が文書化されていること。   (C)必要に応じた測定機器の校正頻度及び校正方法     ・製品の品質に重要な影響をもつ計測機器について、校正頻度及び方法が定められていること。また、外      部に委託する場合には契約書に同様の事項が記載されていることが必要である。   (d)点検項目、点検頻度及び担当者に関する事項   日常点検事項   (a)作業室の環境条件の維持に関する事項     例えば、     ・ハードウェア提供業者の推奨する環境条件等が記載されているか等   (b)作業前及び作業後の点検の実施     ・作業前の点検項目として、     例えば、      機器の構成、接続状況、電源が入っていることの確認、キーボード、FD装置の作動、プリンターの作     動状況、インクリボンの印字状況、記録紙の確認、コンピュータの内蔵ファンの稼働状況等を確認するこ     と等が挙げられる。     ・起動時初期画面の表示内容については、システムエラーが出ていないことを確認する等あらかじめ点検      項目を設定しておき、それらの項目を目視で確認する方法なども考えられる。     ・いずれの点検項目にしても、その機器が正常に作動することを確認できるような項目を選定すること。     ・作業後の点検項目として、例えば、FDの収納、電源スイッチのoff、整理整頓等が挙げられる。   (c)入力データの点検(点検方法及び入力時の確認に関する事項)     ・入力データとは、手動操作等によりキーボード等から入力する数値等をいう。     ・入力データの点検とは、入力操作における誤操作がなかったことを日常的に確認することであり、これ     は入力データリスト作成機能の有無にかかわらず確認できなければならない。     その方法として、     a)入力時にディスプレイ画面で確認する     b)出力データに入力データが含まれている場合はそれにより確認する。     等が考えられる。     ただし、自己診断機能等によって誤ったデータが入力されるおそれのない部分のデータについては、点    検は不要であるので手順書に記載する必要はない。     オペレーターの誤入力をチェックできるように、製品の品質に影響を与える入力データは記録照合でき    るようにしておくことが望ましい。  (d)点検項目、点検頻度及び担当者に関する事項  専門的知識を有するものにより行われるべき点検事項   個々のシステムに応じて当該点検事項を決定すること。 D 保守点検業者と保守点検契約(定期点検管理)を結ぶ場合、契約書にガイドラインにある点検事項を満たした  定期点検の方法が記載されておれば、当該契約書をもって保守点検に係る運用管理手順書として差し支えない。   また、この定期点検の結果の記録は、3(2)にしたがって責任者によって確認される体制が手順書に記載さ  れていなければならない。 E 事故発生時の対応措置に関する事項   開発段階において、システムテストや運用テストを行い、また、運用段階において、保守点検管理を実施す  ること等により、事故の発生を未然に防止することが重要であるが、それにもかかわらず、予測できない何ら  かの原因により事故が発生することがある。そのために次のような事故発生時の対応が規定されていることが  必要である。   なお、製造管理基準書等にコンピュータ使用生産機械を含め、システムの事故発生時の処置が含まれて記載  されていれば、改めてシステムとしての事故発生時の措置を重複して運用管理手順書に記載する必要はない。   ただし、運用管理手順書には、当該措置が製造管理基準書のどの部分に記載してあるか明示しておくこと。   事故発生時の対応措置に関する事項は次のとおりである。   a)警報の発信条件やシステム停止の条件とそれらの条件を設定した理由に関する事項   b)警報発信時や、システムの停止時における対応手続き。     例えば、エラーメッセージの内容と応答処理の方法を含む。   c)事故発生時の対応のための組織(責任者への報告事項、報告時期に関する事項、連絡体制を含む。)    ・組織図    ・責任者への報告事項(品質管理責任者への報告も含む。)   d)システム回復措置(修理)のための手続き及び方法     システム修理又は、システムの機能を回復させるための手順を定めたり、その手続き並びに方法等に関    して記載してあること。   e)原因追求のための組織(原因解析時の専門家の協力体制等を含む)   f)再発防止のための措置     例えば、装置の改良、プログラムの変更や、手順の変更等をいう。   g)事故又は障害の発生時における製品等に対する影響の調査を行い、適切な措置をとれるような体制に関    する事項(影響の範囲及び程度を調査し、その結果が正確に記録され、措置について責任者が承認するこ    とになっていることが必要である。)   h)システム停止後の再開手順・方決及び再開時の確認手順・方法   @)手動バックアップシステムを併用する場合の手順    ・ガイドラインでいう手動バックアップシステムとは、コンピュータシステムにより制御されている機器     や装置を使って製造及び品質管理が行われている場合、コンピュータシステムに何らかの異常が生じた     時にコンピュータシステムによる制御を止めて、手動により機器や装置の運転を行って製造及び品質管     理を続行するシステムをいう。    ・「手動バックアップが適正に作動することの確認事項(相関性の確認を含む)」とは、手動運転したとき     の製品の品質が全自動システム運転時の製品の品質と違いないことを確認することだけでなく、自動運     転時と手動運転時の工程の管理項目と管理値の比較、工程の途中での中間製品の品質特性の測定値につ     いての相違の有無等も確認することが必要である。    ・ガイドラインでは、当該手順として次の事項を含むものとしている。    @)手動制御で稼働できる機器の範囲の規定    A)手動制御に移行する場合の基準及び手続き    B)手動バックアップシステムが適正に作動することの確認結果     (コンピュータ制御による作業と手動制御による作業が同質の製品を製造できる事を実証していること      の確認項目及び確認方法)    C)手動バックアップシステムの作動訓練に関する事項 F セキュリティ管理に関する事項  (a)ハードウェア設置場所への立ち入り制限規定(入室規定を含む)    ・ガイドラインでいう立ち入り制限は、GMPでいう立ち入り制限とは異なり、コンピュータへの不正ア     クセスを防止するための規定であり、立ち入り制限の目的が異なる。したがって、GMPで規定されて     いる当該作業区域への立ち入り制限(入退室制限規定等)をもって代えることはできない。  (b)データの入力、修正、削除等のできる者の指定に関する事項     ガイドラインでいう担当者の指定は、コンピュータの不正アクセスを防止するための規定であるので、     GMPにおける当該作業区域への立ち入り制限とは趣旨が異なるので、別途担当者を指定する必要があ     る。  (c)コンピュータシステム使用者の担当範囲に関する事項  (d)パスワード及び識別コード等の登録、変更及び抹消手続きと承認基準に関する事項  (e)パスワード又は識別コード等の発行に関する事項  (f)パスワード又は識別コードの変更に関する事項    ・パスワード取得者の異動などで資格を失った場合、パスワード又は識別コードを抹消しているか。    ・定期的にパスワードの変更を行っているか     パスワード又は識別コード等を設定できないシステムの場合には、制御盤に鍵をかける等の対応をもっ     て変えることでよい。  (g)バックアップコピーの必要なプログラム及びデータの範囲    ・バックアップコピーは、製造記録だけでなく、ガイドラインの第5において規定されている文書及び記     録であり、プログラム及びそれに伴うデータも対象となる。ただし、書面により保存した場合にはこの     限りでない。    ・バックアップコピーは必要な条件を満たすものであれば、フロッピーディスクでも、テープでも差し支     えない。    ・バックアップコピーの更新頻度の記載が必要である。    ・バックアップコピーの保管場所の記載が必要である。     ・バックアップコピーの保管期間及び期間満了後の措置の記載が必要である。 (3)システムの変更    コンピュータのハードウェア及びプログラムの変更は、小規模な変更であってもシステム全体に影響を及ぼす   ことがあるので、システム等の変更時には、システム開発時と同様の管理をする必要がある。   査察のポイントは、次のとおり。 ☆37 システム変更基準書を適正に作成しているか。 ☆38 ガイドラインに定められた事項が、システム変更基準書に記載されているか。 〔留意事項〕 @ ガイドラインにおいて、原則として次の事項を記載するものとされている。   ア)変更の申請と承認の手続き   イ)変更後のシステムの検証に関する事項   ウ)運用管理に関する手順書の変更に関する事項   エ)変更内容の関係者への周知方法   オ)責任者及び関係者の職名又は氏名 A ア)〜オ)に記載すべき事項の具体例をそれぞれの項目ごとに次に掲げるので、これを参考にシステム変更基  準書の内容を調査する。    ア)については、システム変更に際しての申請や承認手続きが定められていること。(手順は開発時の手順   に準じたものか調べること。)    イ)については、システム変更後のシステムの適切性を確認する方法が定められていること。(原則として、   設置・運用テストに準じたテストであることを調べること。)    ウ)については、システムの変更に伴って手順書等の変更も必要となるので、その手順書等の変更に関する   手順等が定められていること。    エ)については、システムが変更されたこと及びその変更内容について関係者に十分周知したうえで、操作   させる必要があるので、関係者への変更内容の周知徹底方法が定められていること。    (手順書等の変更がすべての手順書等に対して実施されたことの確認方法についても定められていること。)    オ)については、責任者及び担当者の職名又は氏名が記載されていること。 ☆39 システム稼働後のプログラム変更を伴うシステムの変更について「第3 開発業務」の「2 システ   ム設計段階」から「5 設置・運用テスト段階」までの規定を遵守しているか。 〔留意事項〕 @ システム稼働後のプログラム変更を伴うシステムの変更については、原則として、新規にプログラムを作成  するのと同様にガイドライン「第3 開発業務」の「2 システム設計段階」から「5 設置・運用テスト段  階」までの規定を遵守して変更していることを確認すること。 A 本質に影響を与えない軽微なプログラムの変更の場合であると判断しても、プログラムの内容は複雑であり、   例えば、ディスプレイ表示位置の変更であっても本質に影響を与える場合があり得る。     したがって、プログラム変更を伴うシステムの変更については、その変更内容を慎重に検討することが必要   である。  B 変更の計画段階で本質に影響を与えない変更であることが確認されている場合には、ガイドラインでいうシ    ステム変更には該当しない。     ただし、該当しない場合にあっても変更の内容に関する記録を作成し、保管することが望ましい。 8 ハードウェアの操作   ハードウェアの操作を正確に行うために、運用管理手順書に基づいて操作する必要がある。   査察のポイントは、次のとおり。   ☆40 運用管理手順書に定められた標準操作手順に基づき、担当者により、操作されているが。   ☆41 責任者は、運用管理手順書に基づき、担当者に対して教育を行っているが。  〔留意事項〕   教育に関する記録等により、担当者に対して担当業務を行うのに必要な操作方法等に関する教育が行われてい   ることを調べること。 9 保守点検管理の実施  システムが所期の機能及び性能を維持するために、運用管理手順書に基づいて保守点検を行う必要がある。  査察のポイントは、次のとおり。   ☆42 担当者は、運用管理手順書に基づき、保守点検を実施しその結果を記録しているか。 〔留意事項〕 @ 保守点検の記録などを確認し、運用管理手順書に定められたとおり、保守点検が実施されていることを調べ  ること。   また、保守点検時にシステムの異常を発見した際には、原因追求とともに機能維持に必要な措置を講じてい  ることを確認すること。 A 実地の査察において、可能な場合には、日常点検事項の一部又は全部について実際に点検を行わせて見るこ  とが望ましい。 B 保守点検業者との定期的保守点検に関わる契約書に基づく点検報告に、ガイドライン「第4の1(2)イ  (ア)」に示す定期点検の結果が記載されておれば、当該報告書を定期点検記録に代えて差し支えない。 C 保守点検の結果が、製造記録に記入される場合、作動状況のみならず、日常点検項目がすべて書面上に記載  されていれば保守点検の記録としてよい。 D ☆36の運用管理手順書の留意事項Cを参照すること。   ☆43 責任者は、保守点検の記録により保守点検管理が適切に行われていることを確認しているか。 〔留意事項〕  保守点検の記録が、責任者により確認されていることを調べる。 10 事故発生時の対応  運用管理手順書において、事故発生時の対応措置を定めているが、査察時に事故の発生を知り得た場合には、運 用管理手順書に基づいた適切な対応措置が取られていることを確認する必要がある。 査察のポイントは、次のとおり。 ☆44 責任者は、システムに事故が発生した場合に、担当者に運用管理手順書に基づき、速やかに適切な対  応措置をとらせるとともに、その原因究明を行わせ、必要な再発防止措置をとらせているか。 〔留意事項〕 @ 事故の内容を検討することは、システムの欠点を知るための重要な情報源となるものであり、事故の記録を  残し、事故原因を解析することは重要である。発生頻度が極端に高い場合には、特に確認を十分行うこと。   その確認方法として、   (a)運用管理基準書に基づいた適切な対応が講じられているか。   (b)事故の原因追求が適切に講じられているか。   (c)事故の原因追求の結果により適切な再発防止措置が講じられているか。  等が挙げられる。 A 事故記録を調査し、☆36の運用管理手順書の留意事項Eが遵守されているか確認すること。 ☆45 責任者は、事故発生後に運転を再開する場合には、運用管理手順書に基づき、復帰稼働が適切に行わ   れていることを確認しているか。 〔留意事項〕  事故発生後に運転を再開する場合には、正常運転時の製品と復帰後の製品の同等性を検証し、同等性が保証で きる状態で生産が行われることを運用管理手順書に基づき、検証したうえで運転を再開することが重要である。 ☆46 責任者は、担当者にシステムの事故について、記録させているか。 〔留意事項〕  ガイドラインにおいて、事故の記録として次の事項を記載するものとされている。   ア)事故の内容及び結果   イ)事故原因究明の経過に関する記録及び再発防止措置の内容   ウ)責任者の確認結果 ☆47 責任者は、運用管理手順書により手動バックアップシステム作動訓練を実施しているか。  〔留意事項〕   手動バックアップシステム作動訓練を運用管理手順書に基づき、実施していることを記録類から確認すること。 11 セキュリティ管理の実施   コンピュータを適切に運用管理していくためには、ハードウェア設置場所への立入制限、システムを操作する担 当者の特定、パスワード及び識別コードを定めることにより、不正アクセスを防止しシステムの適切な維持管理を 図る必要がある。  査察のポイントは、次のとおり。  ☆48 責任者は、運用管理手順書に基づきハードウェア設置場所への立入制限を行っていることを確認して    いるか。 〔留意事項〕 @ 実地にハードウェア設置場所を査察し、立入制限が遵守されていることを確認すること。 A ☆36の運用管理手順書の留意事項F(a)を参照すること。   ☆49 責任者は、運用管理手順書に基づき、データの入力、修正、削除を行うことのできる担当者を指定し、     不正アクセスの防止措置を講じているか。 〔留意事項〕 @ 実地に端末装置の設置場所、コントロール室等において、不正アクセス防止措置が講じられていることを確  認すること。 A ☆36の運用管理手順書の留意事項F(1))を参照すること。   ☆50 責任者は、運用管理手順書に基づき、パスワード及び識別コードを定めているか。  〔留意事項〕    ☆36の運用管理手順書の留意事項F(d)〜(f)を参照すること。 12 自己点検の実施   システムがガイドラインに基づいて運用管理されていることを自己の責任により点検する必要がある。(適切な点  検事項及び頻度が定められていることを確認すること)  査察のポイントは、次のとおり。  ☆51 製造業者は、責任者にシステムがこのガイドラインに基づき、運用管理されていることを定期的に確    認させているか。 〔留意事項〕 @ 自己点検記録を確認し、システムがこのガイドラインに基づき運用管理されていることを確認すること。 A 自己点検の実施頻度が、適切であることを確認すること。 B 自己点検により発見された問題が改善されていることを確認すること。  ☆52 責任者は、自己点検の結果を記録しているか。 13 文書(このガイドラインに定める計画書、手順書等をいう。以下同じ)及び記録の保存管理   文書は、ガイドラインに基づき作業等の内容を定め、正確な作業を実施するために必要となるものであり、また  記録は、各種文書類に基づいて行われた作業の結果を残すことを目的としているので、正確な文書や記録が作成さ れていることが重要である。  査察のポイントは、次のとおり。   ☆53 文書及び記録の保存方法は適切か。 〔留意事項〕 @ 書面又は磁気等の記録媒体により残されていることを確認すること。   ただし、磁気等の記録媒体による場合には、文書及び記録のバックアップコピーを作成し、保存しているこ  と。責任者が、文書及び記録の作成時又は、変更時に適切な方法により確認又は記録を行っていることを確認  すること。 A 「第5 文書及び記録の保存管理において、ガイドライン「第5(1)イ(イ)」でいう「文書及び記録の作成時  又は変更時」の作成時とは、ガイドラインに基づき文書及び記録を新規に作成した際に責任者により確認又は  承認を受けた時点をいう。   また、変更時とは、文書及び記録を変更した際に責任者により確認又は、承認を受けた時点をいう。 B 「(ア)文書及び記録のバックアップコピーを作成し……」とは、ガイドラインの第5に規定されている文書及  び記録が、磁気等の記録媒体に記録されている場合、当該媒体中の記録内容を別の記録媒体等に複写したもの  をいう。   例えば、稼働中のコンピュータの記録媒体に記録されたデータ、プログラム類をテープに取り保存しておく  場合をいう。   ☆54 文書及び記録の保存場所は適切か。 〔留意事項〕 @ 文書及び開発段階の記録は、製造所ごとに保存されていることを調べる。   ただし、すべての文書を主たる施設において、統括して保存し、かつ、各製造所が、それぞれ当該製造所に  係る写しを保存する場合には、この限りでない。   運用管理の記録は、製造所ごとに保存するものである。   ☆55 保存期間は、適切か。 〔留意事項〕  文書及び開発段階の記録の保存期間は、当該システムの運用が廃止された日から3年間(当該記録に係る医薬品 に関して有効期間の記載が義務づけられている場合には、その有効期間に1年を加算した期間)とする。  運用管理の記録は、記録の日から3年間(当該記録に係る医薬品に関して有効期間の記載が義務づけられている 場合には、その有効期間に1年を加算した期間)保存するものとする。 査察報告書 T 対象製品又は対象システム名 U  監視指導事項 1)開発段階 2)システム設計段階 3)プログラム設計段階 4)システムテスト段階 5)設置・運用テスト段階 6)運用管理総則 7)ハードウェアの操作 8)保守点検管理 9)事故発生時の対応 10)セキュリティ管理の実施 11)自己点検の実施 12)文書及び記録の保存管理 13)その他